行動力、上げたくない?新たな仕事にすぐに取りかかれる、思考スキルとは

「やらなきゃいけない、けれど一歩を踏み出せない……」と、自分のフットワークの重さに悩んでいる人は少なくないでしょう。行動力を左右しているものとは一体何なのか、そして、即行動を習慣にするにはどうしたらいいのでしょうか?悩める人の背中を押すべく、『0秒で動け「わかってはいるけど動けない」人のための』(SBクリエイティブ)の著者、伊藤羊一さんにお話を伺いました。

行動力のある若手社員の様子

ついつい何でも先送りにしてしまう、本当の要因とは?

業務に追われて多忙な様子

「やらなくてはいけない作業をついつい後回しにしてしまう」「転職しようかな……とずっと思っているけれど、具体的には動けていない」というように、行動に移せずに先送りしてしまう経験は誰しもあるかと思います。

武蔵野大学アントレプレナーシップ学部長やスタートアップスタジオMusashino Valley代表、そしてLINEヤフーアカデミア学長など、数多くのビジネスパーソンや学生たちの声を聞いている伊藤さんに、「行動を起こせない理由」について、お話を聞いてみました。

「わかってはいるけれど動き出せない。それは、世の中の多くの人が抱える悩みだと思います。行動に移せない要因の1つとして、『モチベーションが湧かないから一歩を踏み出せない』と思い込んでいることが挙げられます。でも実際、モチベーションは行動しながら湧いてくるものなんです。モチベーションが先ではなく、行動が先に来なければなりません」(伊藤さん、以下同)

小さくても前向きな行動が、変化へとつながる

とは言え、「まず行動すること」のハードルが高いと思う人もいそうですが。

「行動の一歩を大きく考え過ぎているから、ハードルが高く感じるのです。ちょっとした筋トレとか、散歩とかでもいいので、まずは日々、習慣にしてみましょう。『筋トレ?』と思うかもしれませんが、小さくても前向きな行動を続けることが、それよりも大きな行動へ連動する可能性があるのです。

例えば、英語が話せるようになりたいと考えた時に、いきなり英会話スクールへ通うのは、ハードルが高いかもしれない。だからまずは、YouTubeで毎日5分、英会話の動画を見ることから始めるのです。最初は流しっぱなしにするでも構いません。毎日続ければ、変化が現れてくるはずです」

「裏の目標」と向き合って、動けない要因を探る

他にも、行動を起こすことを妨げているものがあると、伊藤さんは語ります。

「アドラー心理学などでよく言われるのが、人間には『表の目標』と『裏の目標』があるということ。例えば転職活動なら、『新しいことにチャレンジしよう』と表では言うもの。でも裏では、『慣れ親しんだ環境から抜け出したくない』と無意識に思っているのです。知らぬ間に、現状維持したい思いが前向きな自分の足を引っ張って、動き出せない状態になっていることもあるのです」

誰しも、相反する思いを抱えている。そういったマイナスな深層心理を取り除くには、どうしたらいいのでしょうか。

「まずは、自分と向き合うことが大切です。無意識下で自分が何を考えているのか、モヤモヤしているものを言語化してみる。裏の自分と向き合うのはつらいプロセスかもしれませんが、とりあえずの一歩としては、必要な行程だと思います」

行動力へとつながる、思考のヒントとは?

ヒントを提示するイメージ

伊藤さんは自著の中で、「納得」や「腹落ち」という言葉を繰り返し使っています。続いては、行動を起こすために必要なそれらの感覚について、詳しく聞いてみました。

「納得や腹落ちは、自分が、自分の気持ちにきちんと寄り添えているからこそ感じることができます。逆に、『こんなことをしたらどう思われるだろう?』と他者の評価軸で判断していては、感じにくいことかもしれません。行動へ移すことを妨げるものの1つが、他者の評価軸だと、私は考えています。

仕事の成果は他者が評価するものだけれど、キャリアを決めるのは自分。動機は自分自身から生まれるものだと考えるのがおすすめです

仮の結論を出し、トライ&エラーでアップデートしていく

では、納得や腹落ちを生むためには、どうすればいいのでしょうか。

いきなり最終結論を出そうとするのではなく、まず仮の結論を出して動いてしまうのがおすすめ。頭の中で考えているだけでは何も見えてこないし、実際にそれができるのか、本当にしたいのかもわかりません。これって、やろうとしていることの解像度が低い状態なんですね。解像度を高める唯一の方法は、まずはやってみることです。

例えば、もし本当に転職すべきか迷っている段階なら、まずは「興味のある会社で働く」という仮の結論を出し、カジュアル面談などで話を聞いてみる。そうすると、やっぱり転職したいんだとか、思っていた仕事と違うかもとか、いろんなことがわかってきます。そうやって『確からしさ』を求めることによって、納得や腹落ちのある結論につながるのです」

頭の中で考えた100%の正解など、現実には存在しません。まずは動いて、トライ&エラーで進んでいく。エラーがあって当然というより、むしろエラーをすべきと言ってもいいかもしれません。完璧主義で、考え抜いてからでないと一歩を踏み出せない人は、そのスタンスを変えた方がいいと思います。常にβ版をアップデートしていく感覚で、物事を進めていくようにしましょう」

結論を先に出して、根拠を3つ考えてみればいい

とはいえ、仮の結論を出してみるには、それなりの根拠が必要な気もします。仮の結論を出す方法について、詳しく伺いました。

「本来は、根拠があってその上で結論を導き出すものですが、それにはロジカルシンキングが必要です。でも、いきなり身につくものではないですし、学びに行くのも大変ですから、『結論から出してしまう』のがおすすめです。結論を出した上で、その根拠になりそうなことを3つほど挙げてみる。仮の結論は『たたき台』なのですから、それでもいいのです。

例えば、『外国語を学ぶべき』という結論を先に設定し、『外国語は重要だから』『外国語を話せる人材は重宝されるから』『今後グローバル化がますます進むだろうから』といった具合に、3つの根拠を挙げるということですね。

何か意見を出した時に、『どうして?』と聞かれて『理由はありません』と答えたら、相手は聞く耳を持ってくれないでしょう。でも『理由は3つあります』と言ったら『聞きましょう』となりやすい。その理由が完璧でなくとも、そこで議論が生まれて、より良い意見に磨かれていくんです」

行動力を支える環境や習慣づくりとは?

自分軸を築いて上司と対話する様子

そうやって、仮の結論をたたき台にして議論を進めていくのは、チームでの仕事にも役立つそうです。

たたき台を基に対話の量を増やすことは、良いアイデアや相乗効果を生みやすいと思います。役職や年齢、性別や価値観、能力、バックグラウンドが多様な人同士が対話すればするほど、質の高いアウトプットができるはずです。それはいわば、ダイバーシティが生きている組織だということ。

もはや、現代は自分1人で正解を出せる時代ではない。だからこそ、さまざまな人が言いたいことを言い合える、心理的安全性の高い組織をつくることが重要なんです」

毎日を振り返る習慣を身につけ、自分軸を築く

心理的安全性が確保された場所なら、自分の意見を言いやすくなります。とはいえ、そもそも意見がなければ何も言うことができません。自分の意見を見つけやすくするためには、どうしたらいいのでしょうか。

「繰り返しになりますが、他人軸で考えずに、自分軸をしっかりと築くことです。具体的なやり方としておすすめしたいのは、自分自身を日々振り返ること。まずは、今日1日をどう過ごしたかを意識することから始めましょう。例えば、どんなことで喜び、どんなことで落ち込んだのかを掘り下げていく。それによって自分が大切にしているもの、自分の価値観が見えてくるはずです。

自分と向き合うのが怖いという人もいるでしょうが、自分軸を知らないのは、羅針盤がないまま船を航海させているようなもの。人生の舵を安定してとっていくためには、避けては通れないことなんです」

出来事や自分を客観的に見ることを忘れない

自分軸が築かれれば、自信が湧いて、行動にもつながっていきそうですね。もし仕事でミスをするようなことがあっても、振り返って何が悪かったのか、次はどうすればいいのか、この経験をどう捉えるかを考えられたら、明日からまた頑張ろうと思えそうです。

「実際、ビジネスパーソンのミスなんて、大したものではないことがほとんど。もちろん、自分事として考えるのは大切ですが、一度手放して、他人事として考えるといろんなことが見えてきます。

いったん客観的に見て他人事として捉えることで、『こういう時はこうした方がいい』といった、経験がアーカイブされていくと、トラブル対応がうまくなることだってあるかもしれません。主観、客観、主観の順番で振り返れば、苦いミスだって教訓にできると思います

行動力をさらに上げるために、意識したいことは?

積極的に打ち合わせに参加する様子

最後に、「いざ行動を起こそう!」と思った時に、はじめの一歩を踏み出すコツについて、ご紹介いただきました。

「1つは、常にアイドリング状態にしておくこと。先ほど、筋トレや散歩が他の行動につながるとお話ししましたが、まさにそれがアイドリングしている状態です。いきなり走り出したら車のエンジンに負荷がかかってしまう。それと同じで、スムーズに行動へと移せる準備をしておきましょう。

転職活動であれば、いきなり履歴書を送って面接をするのではなく、日々いろんな企業情報をチェックしたり、気になる分野の市場の動きを見たり。そういうことをちょっとずつやっておけば、その延長線上で転職活動ができるはずです」

無駄な批評は聞かず、とにかく数を打って質を高める

著書の中で、伊藤さんは「フィードバックを気にしない」と書かれていましたが、それも大切なことなのでしょうか。

「他者評価に振り回されないために、人の意見にあまり耳を傾け過ぎないようにしています。コンテンツに対するフィードバックは受けるけれど、自分自身に対するフィードバックは受けない。行動が『常にたたき台』であることを認識していれば、議論は必要だけれど、評価という意味でのフィードバックは必要ないのではないでしょうか」

確かに、たたき台をとにかくたくさん出してみることも、大切なことと言えそうです。

最初から質の良いものなど生まれません。量が質を生むのだと心得ておいてください。効率が悪いと思う人もいるかもしれませんが、たった1回で100%のものはアウトプットできません。だからむしろ数を打つ方が、効率が良いんです」

自分を良く見せようと思わず、無知を開示する

自分の意見があっても、他者の目が気になってなかなか声を上げにくいと考える人も多いと思います。その気持ちはどうやって跳ねのけたらいいのでしょうか。

「自分だけでなく、周りの人たちも等しく無知、と思うことです。虚勢を張っても仕方ない。人間の思考には、実力はあらかじめ決まっていて成長には限界があると考える『フィックスド・マインドセット』と、いつまでも成長が可能だと考える『グロース・マインドセット』の2パターンがあるそうです。

虚勢を張る人は、たいてい前者。これ以上、成長できないと思っているから、なるべく良いところを見せようとするんです。常に他者から学ぼうとする姿勢を見せて、できない自分を開示すれば、周りの人は好意を持って接してくれる。周囲からの自分への期待値をあえて下げておくと、楽だし、協力者が増えていくと思いますよ」

まとめ

行動に移したい、けれどもなかなか踏み出せない。そんな悩みを抱えたままでは、仕事だけでなく、人生も下を向いてしまうかもしれません。まずは筋トレや散歩など小さな一歩を行動に移してみる。それくらいなら、きっと誰でも始められそうです。大きな目標のための小さな一歩を、まずは踏み出してみてください。

話を聞いた人:伊藤羊一 さん
アントレプレナーシップを抱き、世界をより良いものにするために活動する次世代リーダーを育成するスペシャリスト。2021年に武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)を開設し学部長に就任。2023年6月にスタートアップスタジオ「Musashino Valley」をオープン。「次のステップ」に踏み出そうとする全ての人を支援する。また、LINEヤフーアカデミア学長として次世代リーダー開発を行う。代表作『1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』(SBクリエイティブ)は60万部超のベストセラーに。

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