職場で孤立したらどうすべき? 考えられる原因と対処法を解説

ビジネスではコミュニケーションが必要不可欠です。そのため、職場で孤立してしまうと、業務に支障が出てしまうかもしれません。そこで、職場で孤立してしまう原因やその対処法を解説します。

職場で孤立したらどうすべき? 考えられる原因と対処法を解説

「自分は職場で孤立している……」と感じると、仕事に行きたくなくなったり、業務に支障が出てしまったりと、さまざまな問題が生じます。では、そういった場合、どのように改善を図ればよいのでしょうか。今回は、職場で孤立してしまう原因やその対処法について、公認心理士の川島達史さんに伺った話を基に解説します。

職場で孤立してしまう原因は?

職場で孤立してしまう原因は?

職場で孤立してしまう原因には、どういったものが挙げられるのでしょうか。それぞれ具体的に見ていきましょう。

会話が苦手である

職場で孤立してしまう原因の一つには、会話が苦手であること、もしくは苦手意識があることが挙げられます。

人の話を聞いたり、話題を提供したりするのは、心理学用語で「ソーシャルスキル」といいます。このソーシャルスキル不足により、会話が苦手でコミュニケーションがうまく取れていない場合、良好な人間関係を築くことが難しい場合があります。

その結果、周囲に溶け込めず、孤立してしまう原因となってしまうのです。

相手に批判的な態度を取っている

人間には、自分が好きだと相手も好きになってくれる「好意の返報性」と、その逆の「嫌悪の返報性」という性質があります。

例えば、イライラした言動が多かったり、周りに噛みついてばかりいたりすると、周りが「自分は嫌われている」と感じてしまうのです。

その結果、周囲が関わってくれなくなり、孤立してしまいます。

助け合いの精神がない

ビジネスではチームで稼働することがよくあります。このような場合、助け合いの精神がなく、非協力的な態度ばかりとっている人は孤立しやすくなります。

例えば、チームメンバーが納期を忘れ、進行に遅れが出てしまったケースを想像してみてください。もし「なんで納期忘れたの?」と、納期を忘れたメンバーを責めるだけで終わってしまったらどうでしょうか。

遅れに対する改善案や助け船を出さなかったら、相手はあなたのことを「責めるだけで何もしてくれない人」と認識するでしょう。

そうなると、孤立するきっかけになるだけではなく、自分が困った際に助けてもらえなくなってしまうかもしれません。

「感謝」不足

日ごろから、お互いに感謝を伝え合っているとその関係性も充実し、職場全体の志向性も高まることが期待できます。

例えば、「ありがとう」「助かった」をこまめに伝えていると、言われた側は居心地がいいと感じる上、話しやすいという印象を受けます。

その結果、自然と人が集まってくるようになるのです。逆に言えば、感謝が不足していると、孤立しやすくなる傾向にあるといえるでしょう。

周りの「ソーシャルスキル」が不足している

自分は意識して話しかけたり、コミュニケーションを図ろうとしたりしていても、周囲の人のソーシャルスキルが不足していると、結果的に孤立してしまう場合もあります。

例としては、あいさつをしても返事がない職場や、日常的に声をかけ合わない職場などです。このような職場では、ピリピリしたムードになりやすいでしょう。

周りのソーシャルスキルが不足しているのにもかかわらず、「自分に問題があるのでは」と思い悩んでしまうケースもあるかもしれません。

職場で孤立するとどんなデメリットがある?

職場で孤立するとどんなデメリットがある?

職場で孤立する主なデメリットとしては、心理面と業務面の両方で悪循環に陥りやすいことが挙げられます。

孤立すると、自分の考えていることや悩みなどが、共有・相談しにくくなってしまいがちです。その結果、コミュニケーション不足が原因でミスを連発したり、仕事の質に影響が出たりしてしまうことが考えられます。

加えて、失敗が増えることで「自分はできないんだ……」と余計に悩みを抱えこんでしまうという悪循環に陥ってしまうこともあるでしょう。

【無料診断】そのモヤモヤの原因は?キャリアのヒントが見つかる「モヤモヤ解消診断」

職場で孤立してしまった際の対処法

職場で孤立してしまった際の対処法

職場で孤立してしまった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。具体的に解説します。

あいさつを大事にする

職場で孤立してしまった際の対処法は、まず、あいさつをすることです。

あいさつは、たとえ会話が苦手でも取り組める方法です。人は、明るくあいさつする人に対して悪い印象を持ちにくく、声をかけやすくなる上、会話や雑談のきっかけにもつながります。

あいさつをする際は、はつらつと「おはようございます」「おつかれさまでした」と言ってみましょう。このとき、できるだけ口角を上げて明るく言ってみてください。

前述の返報性により、同じようにはつらつとした返事をもらえるかもしれません。

雑談をする

ビジネスでは、感情を交えたコミュニケーションをすることがポイントです。業務についてのやり取りは大事ですが、「仕事だから」と機械的なコミュニケーションをするのは避けたいところです。

仕事の隙間時間や休憩時間などに「今日天気がよくて気分いいね」「着ているジャケットはどこで買ったの?」などの些細なことでもかまいません。何気ない雑談で感情を通わせることがおすすめです。

感情の交流を行えるとお互いに共感が生まれ、心と心がつながりやすくなり、孤立しづらくなります。

積み重ねを大事にする

ここまでに挙げたような「あいさつをする」「雑談をする」といったことを、日々積み重ねることが重要になります。孤立した状態からいきなり解決を図るのは、なかなか難しいと思ったほうがよいでしょう。

そのため、話しやすそうな人から声をかけ、1日1日、少しずつあいさつや雑談を積み重ねていくのがいいかもしれません。

日数としては、数日単位ではなく、数カ月単位で取り組むことが大切です。無理にいそがず、時間をかけて改善していきましょう。

思い切って打ち明ける

「自分は孤立している……」と思い悩んでいても、周りには孤立していると思われていない、もしくは気づかれていないケースもあります。そのため、思い切って打ち明けてみることが効果的な場合もあるのです。

打ち明ける相手としては、信頼できる上司や同僚、もしくは人事部などがいいでしょう。

職場で孤立することはメリットもある?

職場で孤立することはメリットもある?

職場での孤立は、見方を変えればメリットもあります。

ただし、ここまで挙げたように孤立することで生じるデメリットも多くあります。自分にとって、ちょうどいいバランスを見つけるのが理想的です。それでは、孤立の主なメリットを見ていきましょう。

業務に集中しやすくなる

一人でいるということは、話しかけられにくいということでもあります。業務が立て込んでいるとき、納期が迫っているときなど、作業に集中したい際には孤独がプラスに働く可能性があります。

アイデアを出しやすくなる

集団でアイデアを考えるよりも、一人のほうが出したアイデアの量が多かったという研究(※1)もあります。

周りの意見に左右されずに考えたり、自分の専門分野を煮詰めたりすることで得られるアイデアもあるので、それらが必要な場合は孤立する状況のほうが向いているともいえるでしょう。

※1:Brian Mullen・Craig Johnson・Eduardo Salas「Productivity Loss in Brainstorming Groups: A Meta-Analytic Integration」(1991)

職場での孤立がどうしても辛くなったら

職場での孤立がどうしても辛くなったら

今までに挙げた対処法を試してみても状況が改善せず、孤立感が解消しない場合もあると思います。

そのようなときは、経営者層に相談してサポートしてもらうという方法もあります。ただし、この方法は会社の規模や置かれている立場などによって実行できる、できないがあるでしょう。

いよいよ何をやっても状況が良くならないとなったら、今の職場に見切りをつけて転職も視野にいれてみてもいいでしょう。

職場で孤立したら無理のない範囲で対処しよう

職場で孤立してしまったとき、悩まない人は少ないでしょう。確かに孤立にもメリットはありますが、コミュニケーションが不可欠なビジネスでは、できれば孤立するのは避けたいものです。

孤立はデメリットも大きいため、対処法で挙げたあいさつや雑談を、無理のない範囲で行ってみましょう。また、孤立したときの精神的ダメージを少しでも軽くすべく、職場だけに依存せず、日ごろから複数のコミュニティに所属しておくのもおすすめです。

監修:ダイレクトコミュニケーション 代表取締役 川島達史
目白大学大学院心理学研究科を修了し、現在ではコミュニケーション講座の講師として、心理学や人間関係に関するワークを行う。専門は成人のソーシャルスキルが孤独感・対人不安に与える影響。普段は「コミュニケーション講座」の主催や、YouTubeチャンネル「ダイコミュ大学 による情報発信を行っている。

【関連記事】
自意識過剰を改善する方法は? そもそもの原因や接し方のコツも解説
自己肯定感を高めることはできる? 低い人の特徴と今すぐ実践できる方法を紹介
人間関係リセット症候群とは? 原因や解決方法を公認心理師が解説

page top