ビジネスパーソンなら知っておきたい! 「アメリカ大統領選挙」の仕組みと日本への影響

4年に一度のオリンピックと同じく、ビッグイベントとなっている「アメリカ大統領選挙」。

ビジネスパーソンなら知っておきたい! 「アメリカ大統領選挙」の仕組みと日本への影響

4年に一度のオリンピックと同じく、ビッグイベントとなっている「アメリカ大統領選挙」。

11月の本選に向けて、世間の関心が日々高まっています。結果によっては日本を含め、世界中の政治・経済に大きな影響を及ぼすといわれていますが、「実はいまいち大統領選挙の仕組みが分からない……」という方も多いのではないでしょうか。

そこで今回、本選挙の党代表であるトランプ氏とクリントン氏の紹介を交えつつ「アメリカ大統領選挙」の仕組みを解説します。

アメリカの大統領の仕組みとは?


アメリカの大統領になるには民主党か共和党、どちらかの党から候補者に指名され、党代表になる必要があります。その党の代表候補を決めるための選挙は「予備選挙」と呼ばれ、大統領選挙のある年の2月から6月にかけて行われます。それぞれの党の候補者が1人ずつ選出されると、次に候補者が大統領の座をかけて一対一の選挙を行います。これを「本選挙」といい、7月から11月にかけて行われます。

◎ 予備選挙:各政党内で候補者を決定するための選挙
◎ 本選挙:各政党の候補者による一対一の選挙

 

党の代表候補を決める「予備選挙」「党員集会」の仕組み


ではまず、予備選挙について説明しましょう。

予備選挙では有権者が直接候補者に投票するのではなく、予備選挙の投票権を持つ「代議員」と呼ばれる人の投票によって候補者を決めます。この形式を「間接選挙」といいます。代議員にはあらかじめ自分が投票する大統領候補を公表している「一般代議員」と自由に投票ができる「特別代議員」がおり、有権者は自分が選びたい候補者を支持している「代議員」に投票します。

つまり、Aという候補者を選びたい場合には、「私はAを支持しています」と公表している代議員に投票すればよいのです。

この代議員の選出方法には、予備選挙以外に「党員集会」というものもあります。

党員集会では共和党、民主党それぞれの党員(有権者)が集会を行い、党員同士の議論をふまえ投票などで代議員を選出します。さらに投票区ごとの党員集会で選ばれた代議員は、郡レベルの党員集会に参加し、連邦下院選挙区レベルの党員集会に参加する代議員を選出します。そこで選ばれた代議員は州レベルの党員集会に参加する代議員を選出し、最後に選ばれた代議員が全国党大会に参加する代議員を選出します。

こうして選出された代議員の支持を一番得た候補者が党の代表になります。基本的に代議員は比例配分で選出されますが、共和党の場合は最も得票数の多かった候補者が代議員を総取りする州もあります。

このように、フェーズを細かく分けて代議員を選出するため、州の代議員が確定するまでには数カ月もの時間を要します。

この予備選挙と党員集会をすべての州で実施し、最終的に最も多くの代議員の支持を獲得した候補者が、7月に実施される党大会で公認候補に選出されるのです。

上記のプロセスを通し党から公認を受けることができれば、それぞれの党公認の大統領候補として、本選挙に立候補することができます。

大統領を決定する「本選挙」


次に、本選挙について説明しましょう。

本選挙も予備選挙と同様に「間接選挙方式」で行われています。有権者は11月に行われる一般投票で、あらかじめ特定の大統領候補への投票を約束している「選挙人」に投票をする形で行われます。

各州の投票の結果、一部例外を除いて1票でも多く得票した候補者が、その州のすべての選挙人の枠を総取りできる仕組みになっています。そして過半数の選挙人を獲得した候補者が事実上次期大統領となるのです。

なぜ事実上なのかというと、11月の一般投票で選出された選挙人は12月に行われる「選挙人集会」に参加し、自分が誓約している候補者に投票します。選挙人は、必ずしも誓約している候補者に投票しなければならないという規則はありませんが、過去に誓約している候補者以外に投票した例はほとんどないため、11月の一般投票で当選した候補者が12月の「選挙人集会」で落選することは、まずないと考えられるからです。

いずれの候補者も過半数に達しなかった場合は、指名上位の候補者の中から連邦議会議員の投票によって大統領が選出されます。

このように、アメリカの大統領選挙は予備選挙を含めるとかなりの長期戦になっています。これほどまでに大掛かりな選挙を勝ち抜いているからこそ、「世界のリーダー」とうたわれるほどの影響力を持てるのかもしれませんね。

2016年の大統領選挙の動向をチェック!


ではここで、現在注目されている両代表の簡単な紹介と、対日政策に対する発言を紹介します。

共和党:トランプ氏


アメリカ合衆国の実業家で、総資産額41億ドルの大富豪としても知られています。1980年代、好景気を背景にした不動産ブームに乗り、ホテルやカジノの経営で大成功を収めました。過激な言動が多く、連日メディアでその発言が取り上げられていますが、その強い姿勢が求心力を高め、民衆の支持を集めています。

【対日政策】
トランプ氏はTPP(環太平洋パートナーシップ協定)について「アメリカが不平等な競争にさらされることに加え、雇用が奪われ経済が混乱する」と述べ、強く反対しています。また、FTA(自由貿易協定)についても反発を示し「中国やメキシコからの輸入品に35~45%の関税をかける」としています。

そのため、トランプ氏が大統領になった場合、中国やメキシコに生産拠点を持つ企業への打撃が考えられます。加えて、日米安保に関しても「米国にとって片務的な負担である」と反感を示しており、日本に対するさらなる費用負担が懸念されています。

民主党:クリントン氏


オバマ政権で2009年から13年まで国務長官を務めました。それ以前はニューヨーク州選出の上院議員で2回当選しています。夫のビル・クリントン氏は元大統領であり、クリントン氏自身の大統領選への出馬は2回目。前回出馬した際、民主党の予備選挙で現職のオバマ大統領に敗退しました。本選挙でトランプ氏に勝利した場合、米国初の女性大統領となります。

【対日政策】
TPPや為替政策については概ねトランプ氏と同様の主張をしていますが、その他の政策で日本に対するメリットをうかがわせる方針が見受けられます。そのうちの一つが「対中政策」です。

国務長官時代と同様に「アジア重視」の外交路線を採用する場合、中国をけん制する意味で日本を優遇する可能性が高まるとされています。また、日米安保に関しても「日米同盟」を重視するとされており、アジア戦略において「日本との関係性を優先する姿勢」を見せています。

このように、対日政策に関するマイナスの影響は概ね共通ですが、クリントン氏が大統領に選ばれたケースのほうが、日本に対するプラスの影響が大きいと予想されています。

まとめ


日本の選挙と比べ、選挙に費やす期間、プロセスなどが大きく異なる「アメリカ大統領選」。選挙における選出方法や情勢をすべて把握するのは難しいですが、アメリカ政治の動向は日本にも大きな影響を与えます。ビジネスパーソンである以上、「アメリカ大統領選挙」の仕組みを理解し、注目しておきたいですね。

ライター:西本龍太郎

※この記事は2016/08/04にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています

page top