もう時間や場所に縛られない! 働き方を自由にする、ビジネスパーソン専用シェアオフィス「ワークスタイリング」に行ってみた

「働き方改革」により、社員が働き方を選べる制度を導入する企業が増えてきました。しかし一方で、「仕事をするためにカフェへ来たけれど、いまいち生産性がアップしている気がしない…」なんて、制度を上手に活用できないと感じている方もいるかもしれませんね。

もう時間や場所に縛られない! 働き方を自由にする、ビジネスパーソン専用シェアオフィス「ワークスタイリング」に行ってみた

「働き方改革」により、社員が働き方を選べる制度を導入する企業が増えてきました。しかし一方で、「仕事をするためにカフェへ来たけれど、いまいち生産性がアップしている気がしない…」なんて、制度を上手に活用できないと感じている方もいるかもしれませんね。

そんな課題に、オフィスという「場所」から変革を起こそうとしているのが、三井不動産株式会社が発足した「ワークスタイリング」です。

ワークスタイリングとは、企業に勤めるビジネスパーソンが、自分の働き方に合わせてワークスペースの選択を可能にするプロジェクト。一般的なコワーキングスペースとは異なり、企業単位で利用登録することが特徴です。登録した企業の社員は、いつでも好きなときにワークスタイリングが運営するシェアオフィスを利用できます。2017年4月、都内を中心に10拠点をオープン。現在は全国30拠点にまで拡大しています。

今回は三井不動産株式会社ワークスタイリンググループ統括の川路武さんに、2018年4月にオープンしたばかりの「ワークスタイリング東京ミッドタウン」を案内していただきました。後半ではプロジェクト発足のきっかけや、ビジネスパーソンが自由な働き方をデザインするためのオフィスの役割を伺っています。

オープンスペースも個人スペースも。多様な目的に対応!


ワークスタイリングのサービスは2種類。全国30拠点のシェアオフィスを10分単位で利用できる「ワークスタイリング SHARE」と、目的や人数、期間を柔軟に設定して個室を24時間利用できる「ワークスタイリングFLEX」を展開しています。

4月にオープンしたのが「ワークスタイリング東京ミッドタウン」。六本木駅直結、東京ミッドタウンの中にあるこの拠点は、「ワークスタイリングSHARE」と「ワークスタイリングFLEX」両方のサービスに対応しています。

まず入り口で目に飛び込んでくるのはかわいいイラストとロゴ。オフィスと聞いてイメージするものとは異なり、おしゃれな雰囲気。

受付で会員用スマートフォンアプリに表示されるQRコードをかざします。

隣のバーカウンターにはコーヒーなどのドリンクが置いてあり、利用者は自由に飲むことができます。さらに、スマートフォンの充電器や加湿器などの備品貸出も充実。

左下の黒い布はほかの利用者から荷物を目隠しするためのカバー

ポストイットなどの文房具をはじめ、離席の際にパソコンや書類の上にかけて、ほかの利用者の目に留まらないようにするためのカバーも用意されています。

オフィスはアイボリーを基調に、明るく広々とした雰囲気。気持ちの休まるグリーンもあり、リラックスして仕事に臨めそう。ゆったりと話せるソファー席、ミーティング向きのテーブル席など机のタイプはさまざまで、目的によって使い分けが可能。

六本木の景色を見渡しながら仕事ができる窓際の個人席。

集中したい人には、周囲の目線や音を気にせず取り組める個室も。

会議室の壁は、なんと一面ホワイトボード! 打ち合わせやブレストに活躍することはもちろん、普段は書き出さないこともササッと書けます。頭の中で考えていることを逐一言葉で共有すれば、複数人で仕事を進める際のすれ違いを最小限に抑えられるようになるのだとか。

セミナーなどに利用できる大きな会議室もあります。

多くの方が利用するシェアオフィスって、話し声や足音が気になって集中しにくいんじゃ……なんて心配も不要。会議室や個人ブースには“サウンドマスキング”という技術を使って、隣の会話が聞こえにくいような配慮がなされているそうです。

「少し疲れたな、ちょっと休んでから取り組みたいな」そんなときに嬉しい仮眠室。

集中力を高めるのに役立つと言われている、けん玉やルービックキューブが置いてあります。実際に、仕事の合間にけん玉に挑戦する人も多いそう!

ほかにも、鍵付きのロッカーや破棄書類用の溶解ボックス、プリンター複合機などが揃っており、個人の利用から会議など大人数での利用など、多くの利用場面に対応できる環境が整っています。

街で気づいた時代の流れ。ビジネスパーソンの新しい働き方を場の側面からサポート


ビジネスパーソンが仕事に取り組むために充実した設備が揃いつつも、今までの「オフィス」とは一線を画すワークスタイリング。ここからはその設立のきっかけや、これからの働き方とオフィスの役割について、川路さんに伺います。

お話を伺った川路さん。集中力アップに役立つけん玉をその場で披露してくださいました

――企業に勤めるビジネスパーソンのためのシェアオフィスは、新しい取り組みだと感じます。なぜ、ワークスタイリングのプロジェクトをスタートされたのでしょうか。

5年ほど前から、“ノマドワーカー”といわれるフリーランスやエンジニアの方が中心となって、自由な働き方が広がってきたと言われています。それでも当時、会社員は「会社に出社して仕事をするもの」という風潮は根強く残っていました。

ところがここ2~3年で、東京駅前やビジネス街のカフェで見かける人たちの印象が変わったように感じたんです。“デニムにMac”という人だけだったのが、“スーツでWindows”の人々が急増したように感じました。

――会社のオフィスで仕事をしていたビジネスパーソンが「働き方改革」の流れを受けて、街のカフェで仕事をするようになったんですね。

街中の光景の変化に、時代が新しい働き方を求めているのではないかと感じました。

その頃弊社内でも、「新しいことにチャレンジをしよう」と気風が高まっていて、いろいろなアイデアを出すうちに、自然とテーマが「働き方」のほうへと集結しました。僕たち自身が「たまには場所を変えて仕事をしたほうがはかどる」という共通認識を持っていたことも大きいと思います。

今まで「場づくり」を手がけてきた弊社が行うべきことは何か。そこで、ビジネスパーソンが企業と対話しながら自由な働き方をデザインできる場所を提供するため、ワークスタイリングのプロジェクトが始まりました。

――新しい働き方を考える上で、“場所”から変えていくことはなぜ重要なのでしょうか。

まずは自由に働ける環境をつくり出さないと、なかなか働き方って変わっていかないのではないか……そんな仮説に基づいています。

もちろん、制度を整えることは必要です。ただ、制度があっても環境が整っていなければ、なかなか活用がしづらいと思っています。例えば、在宅勤務可能の会社だったとしても、自宅にインターネット回線を引いていなければ仕事をするのは難しい。よって、在宅勤務制度を使いこなすのは現実的ではないですよね。

“働き方改革”はとても大きな課題です。それに対して私たちは、オフィスという場を通してチャレンジをしていきたい。一人ひとりのビジネスパーソンが自分らしく働き方をデザインしながら生き生きと働けること。そして生産性が上がること。この両方を実現したいと考えています。

仕事のシーンとして活用すれば、仕事の生産性も向上する

 

――実際に、ワークスタイリングがどのように利用されているのか教えてください。

新しい発想を生むような、創造的な仕事のために利用されることが多いと感じています。特に複数人でご利用されるときには、ブレインストーミングや戦略策定といった会議を目的とされる場合が多いですね。

また、カフェではできない機密性の高い仕事をするときにもご活用いただいています。例えば電話やWEB会議でのミーティングとなると、情報が漏れてしまう可能性があるため外のオープンな場では難しい。あるいは、クライアント先を訪問した後で行う振り返りのミーティングのために、パートナー企業さんと一緒にワークスタイリングへ直行するケースも。

――街中で打ち合わせができる場所を探すのは確かに大変です。また、どのような職種の方が利用されているのでしょうか?

利用者は外回りの多い営業担当者の割合が39%、経理や人事のようなバックオフィスの人たちの利用も増えてきています。


例えば、営業の人たちが集まっているところに経理の人が一緒に参加して、予算の打ち合わせをする…ということもあります。そうすると、営業のメンバーたちは会社まで戻らずに済みますし、ここでそのまま作業を続けたり、次の各訪問先を訪ねたりもできます。なにより社内では生まれない想像的なアイデアが出ることに期待しています。

利用者の交流を促進する仕掛け


――シェアオフィスといえば、他者や他業種の方と交流できるイメージがあります。ワークスタイリングではどうでしょうか?

もちろんあります。他社や他業種とのコラボレーションから新たなビジネスが生まれるのは、今まではベンチャー企業に多い特徴でした。しかし今では、大企業でも異業種や異分野と連携するオープン・イノベーションが重要視されるようになってきています。

ただ、ビジネス交流会のような場で名刺交換をするだけだと、その場だけで終わってしまってあまり後にはつながらないという声もよく聞かれます。それよりも、机を隣にして仕事をしながら「最近、よく会いますね」なんて会話が始まるほうが、実は人脈形成につながりやすいかもしれません。


――そういった利用者間の交流をより促進する仕掛けはありますか?

人と人をつなげる“ビジネススタイリスト”という、新しい職種の担当がワークスタイリングのオフィスにいます。例えば「異業種のマーケターと話してみたい」という方がいれば、利用者の中からそういった人をマッチングしていきます。またそういった機会が増えるように、毎週会員同士の交流を目的としたイベントも実施しています。

ここに来れば仕事の合間に人脈づくりが可能になる。そんな付加価値をつくり出していきたいです。

オフィスは「顔を合わせて話し合う場」に。プロジェクトごとにオフィスを持つ時代へ


――働く場も、働き方もますます多様になっていくこれから、オフィスはどのように変化していくのでしょうか?

1人に1つずつ机がある執務スペースから、多くの人が集まり会話をするための場へと変わっていくのではないでしょうか。

今後、ビジネスシーンに合わせて働き方や働く場が自由に選べるようになると、一番重要になってくるのは「いつ、みんなで顔を合わせるか」だと考えています。それも小規模ではなく、部署全員や全社員が集まる時間をつくり、オンラインのやり取りだけではわからないことをみんなでシェアする必要が生まれる。そのためには、広くてコミュニケーションの取りやすい環境が求められますよね。

――ワークスタイリングも、顔を合わせるオフィスとしてさらに進化していくのでしょうか?

会社全体で集まる場だけでなく、「戦略部屋」のような、プロジェクトごとのオフィスが今後は必要になると思っています。そのような使い方のできる「ワークスタイリングFLEX」というサービスが、今年新たにスタートしました。

ワークスタイリング東京ミッドタウンの「ワークスタイリングFLEX」の一室

従来のワークスタイリングはオープンなシェアオフィスでしたが、「FLEX」は全個室。利用期間や利用人数を柔軟に変更できるので、固定でオフィスを持たず、プロジェクトの期間だけオフィスを持つことができます。

プロジェクトのためだけの部屋があれば、ホワイトボードに書いたことや並べた資料をそのままにして帰ることができるんです。そうすれば、翌日すぐに続きから始められますよね。

――その場に入っただけで前日のことを思い出せそうですね。

打ち合わせをしたときの熱気がそのまま残っているので、インプットが速くなるんですよ。そうすれば集中状態に入りやすくなり、時間削減にもつながります。

現代は1カ月、2カ月のスピード感で、他社と一緒に進めるプロジェクトがたくさんあります。これからは、プロジェクトごとに仕事を持つようになるかもしれません。となると、1人がオフィスを複数持つ働き方も出てくるでしょう。

――「この部屋では、この仕事をする」。そう決めると、部屋に入った途端にスイッチが切り替わって仕事に集中できる気がします。

そうですね。そのぐらい、場所が持つ力は大きいと思っています。

オフィスは「顔を合わせて話し合う場」に。プロジェクトごとにオフィスを持つ時代へ

最後に、川路さんはこのように語ってくださいました。

「いつもの会社を飛び出し、新しい環境や普段顔を合わせない人と一緒に仕事をする。そうやって新しい刺激を仕事に取り込むことで、ビジネスパーソンにとっても会社にとっても、きっとプラスになる人脈やアイデアが生まれると思っています」

環境が変われば、働き方も働く気持ちも変わってきます。みなさんもオフィスをきっかけに、自分が理想とする働き方について考えてみませんか?

(取材・文・編集:東京通信社/撮影:菊池貴裕/15枚目イラスト・図:三井不動産株式会社さまご提供資料を元に編集部にて描き起こし)

識者プロフィール


川路武(かわじ・たけし)。三井不動産株式会社ビルディング本部ワークスタイリンググループ統括。
1998年、三井不動産入社。官・民・学が協業する街づくりプロジェクト「柏の葉スマートシティ」など、大規模案件におけるコミュニティづくりや、環境マネジメント案件の企画開発に多数携わる。三井不動産レジデンシャル出向時(マンション事業の新商品開発等を担当)に、朝活「アサゲ・ニホンバシ」を開催するNPO法人「日本橋フレンド」を立ち上げる。現在は新規事業の法人向けシェアオフィス「WORKSTYLING」を立ち上げ、事業統括を担当する。

※この記事は2018/05/28にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています

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