脳外科医でデザイナー。Drまあやが語る「後悔しない判断基準」の見つけ方

皆さんは、一度でいいから趣味を仕事にしてみたいと思ったことはありませんか。しかし、そう思ってもなかなか簡単には飛び込めないもの……。

脳外科医でデザイナー。Drまあやが語る「後悔しない判断基準」の見つけ方

皆さんは、一度でいいから趣味を仕事にしてみたいと思ったことはありませんか。しかし、そう思ってもなかなか簡単には飛び込めないもの……。

そんな中、脳外科医として10年活躍したのち、34歳でファッションの世界に進むことを決意した女性がいます。週4日は脳外科医、週3日は服飾デザイナーとして活躍するDrまあやさん。今もなお、進化を続ける彼女の、仕事への向き合い方や心がけていることについて聞いてみました。

今の自分のまま人生を遂げる未来が見えて、急に退屈に思えた



─脳外科医という職業を選んだ理由はなんだったのでしょうか?

「脳外科医になることを決めたのは、大学1年のときに『医学総論』という授業で脳外科の手術ビデオを見たのがきっかけでした。目の前で倒れた人がいたら、助けられるようになりたい、と思ったんです。医者の中でもスペシャリストという感じがして、私も極めてみたい、とこのときは思っておりました」

─学生時代に挫折らしい挫折はしなかったのでしょうか?

「恥ずかしい話、医学部に入った時点で『人生、軌道に乗った!』と思いました(笑)。だから大きな挫折というのはないのかもしれません。ただ脳外科医になって専門医を取得した後、『自分は脳外科医としてこの先どのように生きていきたいか』を見つけられなかった時期があり、かなり悩みました。就職して5?10年の間に、誰もがぶつかる壁なのかもしれませんね。

今の仕事だけで生きていくのか、別の職に就くのか、結婚するのか、仕事は割り切って趣味に生きるのか……。さまざまな選択肢がある中で、このままいけば私は脳外科医という仕事だけを続けて、そのまま死ぬんじゃないかと。それがとんでもなく、退屈に思えたんです。結果、脳外科の世界をセミリタイアせざるをえなくなりました。これがある意味、挫折なのかと思います」

破門のリスクを負っての直談判。それでもリスクをおかした理由



─10年間脳外科医の仕事に従事した上で、一から学校に通いファッションの世界に行くことに躊躇はなかったのでしょうか。

「脳外科医としてこの先どう生きていくか悩んでいたとき、山手線内で『日本外国語専門学校 海外芸術大学留学科』のオープンキャンパスの広告を見かけ、『デザインの勉強をする』という選択肢が突然降って湧いてきたんです。その瞬間から楽しくなってきました。不安は2割程度でしたね。自分の新しい道が見つかった!という喜びのほうが大きかったと思います。

ファッションも含め、デザインやアートにもともと興味があったのですが、本格的に好きになったのは、大学に入ってからだったと思います。建築物を見にスペインへ行ったり、NYのMoMA(ニューヨーク近代美術館)に行ったり、日本では特別展示会を見に行ったりしていました。

脳外科医になってからも病院内に貼るポスターを描いたり、学会用のポスターをデザインしたり、先輩の先生にあげるTシャツをデザインしたりしているうちに、もっと自分の作品を世の中に出してみたいと、どんどん思いが膨らんでいったんです」

─周囲の医師からはどのようなリアクションをされましたか?

「教授に専門学校へ入学することをお伝えしたところ、『60歳の定年を迎えてからやればいいのに、なぜこのタイミングで?』と言われました。60歳から始められることもあるとは思いますが、やりたいと思ったときにやらないと後悔する。最終的に『仕方ない』と折れてくださり、留学に行くことができました。

大抵はこの時点で大学の医局を破門になったり、OBの先生方に見放されます。しかし、応援してくれる人たちが多く、このような突飛な行動を許してくれました。帰国後も、OBの先生方が『うちの病院でまた働きませんか』と言ってくださったことが、本当にうれしかったです」

 

人生の決断は「面白いか、面白くないか」



─今現在、二足のわらじを履くことでご自身のプライベートの時間が削られていると思いますが、そこに対して不満はなかったのでしょうか?

「私はプライベートな時間がいらない人間なのかもしれません。日々の中で、最低限の睡眠時間と、テレビを見る時間さえあればよくて。それ以外は休みなしで仕事をしていても気にならない。もちろん時々買い物にいったり、友人とご飯を食べたり、1年に1回くらい旅行に行く……といった時間も人並みには欲しいとは思いますが。ただ当直をしている間も、患者さんが来なければ作業をしていますし、特に仕事とプライベードで自分自身を切り替えている感覚がないですね」

─これからの目標はなんですか?

「今の大きな目標としては、作品を作り続けることです。作り続けるということは、簡単なようで難しいことだと思います。最低でも10年はやらないとなんでも物にならない、と思っております。具体的な目標としては、世界進出です。まだ日本国内でも成功していませんが…(笑)。夢は大きく、見るのは自由かな、と。世界に向けて、ジタバタあくせくしていると、そこに近づくために必要なことが見えてきて、いずれチャンスが生まれるのでは。そう信じて活動し続けたいです」

─職業選択に悩む人にアドバイスがあればお願いします。

「自分がどんな人間になりたいのかじっくり考えることです。仕事で成功したいのか。結婚して幸せな生活が欲しいのか。お金持ちになりたいのか。仕事は最低限にして、趣味に生きたいのか。その目標をかなえるための方法を見つけて、キャリア設計を考えてみては。意外と、次のステップに行く勇気が出ないというのはあると思うんです。そんなときは後悔しないために自分が最も大切にしているキーワードを思い出し、それにのっとって判断するのがいいと思います。

例えば、私は『面白いか・面白くないか』をポイントにしています。シンプルなことかもしれませんが、それが重要だったりします。迷っているときに複雑に考えてしまうと、頭の中で混乱を招きます。私は迷ったらなんでもどっちが面白いか面白くないかを比べて、面白い方向へ進みます。そうすると、後悔しませんし、面白いと思ったのだから仕方ないと思える。何もやらないで、『あのときやっておけばよかった』と後悔することが一番嫌なんですよ」

まとめ


いかがでしたか? 自分の夢に向かってまい進するDrまあやさんの言葉は、今のキャリアに迷いがあるビジネスパーソンが、前向きになれるヒントになるのでは。

人生の岐路に立ったとき、大切にしていることをキーワードにした上で判断すれば、後悔しない生き方ができるかもしれませんね。


識者プロフィール
Drまあや:脳外科医・ファッションデザイナー。2000年岩手医科大学医学部卒業後、慶応大学外科学教室脳神経外科入局。2009年、日本外国語専門学校海外芸術大学留学科、2010年Central Saint Martins Artand Design, Foundation course終了。2013年、「Dr.まあやデザイン研究所」を設立し脳外科医とアシスタントの傍ら、ファッションデザイナーとしても制作活動を行っている。

※この記事は2016/06/30にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています

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