「仕事には社畜マインドが必要」中川淳一郎が社畜を勧める理由とは?

近年話題に上ることが多い「社畜」。会社に飼いならされてしまうビジネスパーソンを意味するこの言葉に、ネガティブなイメージを持っていませんか?

「仕事には社畜マインドが必要」中川淳一郎が社畜を勧める理由とは?

近年話題に上ることが多い「社畜」。会社に飼いならされてしまうビジネスパーソンを意味するこの言葉に、ネガティブなイメージを持っていませんか?

しかし、編集者、PRプランナー、ライターであり、著書に『夢、死ね! 若者を殺す「自己実現」という嘘』(星海社新書)がある中川淳一郎さんは、「全ての仕事人には『社畜マインド』が必要」と語ります。いったい「社畜マインド」とは? そして社畜になることのメリットとは? 中川さんにお話しを伺いました。

社畜こそ、プロの会社員である


―そもそも、「社畜」とはなんなのでしょうか?

「社畜っていうのはあくまでもイメージです。例えば営業マンってお客さんに土下座して回るみたいなイメージがあるじゃないですか。でも実際はそんなことしている人はいませんよね。営業マンと同じように、社畜も『深夜にひとりでオフィスにいる』みたいなイメージがあるけど、そんな人ばかりじゃないですよね。だって、18時に居酒屋に行ったら飲んでいる会社員がいっぱいいて、楽しそうにしてるじゃないですか」

―とはいえ、残業や休日出勤を当たり前のようにしていて、会社から飼いならされているような状況にある人は現実にいるように思います。

「仕事が終わらなかったら、休日出勤してでも仕事をやらなきゃいけないのは当たり前です。だって、その仕事を待っている人がいるわけだから。お金を払ってくれる人が待っていて、自分の給料はそこから払われるわけです。それを通じて社会とつながっているのが仕事なんだから、一生懸命やるのは当たり前なんです。待っている人がいる仕事に向かって一生懸命になれる人は、プロの会社員です。そう考えたら社畜でいいじゃないですか。どのような形でするにしても、仕事には『社畜マインド』が必要なんですよ」

―なるほど。中川さんの考える社畜とは、一般的な「会社に飼いならされている人」とは別の意味を持っていそうですね。

「僕は社畜というのは『言われた仕事はきちんとやって、お客さんのことだけを考える労働者』だと思っています。つまり、仕事をしっかりこなす人ですね。それって会社員もフリーランスも関係なく、仕事人には必要な意識だと思うんです。だって、仕事で言われたことやるのは当たり前じゃないですか」

―中川さん自身は社畜だった時期はあったのですか?

「僕は大学卒業後は会社員をやっていました。そのときは上司の指示通りに動いていたので、まさに社畜をしてましたね。でもフリーランスになって気付いたのは、仕事をしていく限り誰かと関わらずにはいられないということです。上司からの指示に応えるのが会社員で、クライアントの要望に応えるのがフリーランス。上司の先にはもちろんお客さんがいるのだから、人の言ったことをやるという点では、会社員もフリーランスも変わらないですよね」

―なるほど、「社畜マインド」が、「言われた仕事はきちんとやって、お客さんのことだけを考える労働者」という意味だとすると、会社員であろうとフリーランスであろうと必要なことなのですね。

社畜になる2つのメリット


―具体的に、中川さんが考える社畜のメリットはどのようなところでしょうか?

「まず1つは上司にかわいがられて、仕事も振られるようになることです。若いうちは振られた仕事はなんでも引き受けるようにするのがいいです。そこから新しいつながりが生まれたりもしますし。仕事ってどこから降ってくるのか分からないから、とりあえず言われたことをやるという姿勢が大事です。

なんでも指示通りにやらなきゃいけない社風を、『ブラック』と言ったりもしますけど、若いうちはブラックなことを経験したっていいと思うんです。つらいことを避けてきて年を取った人は、将来誰からもビジネスで相手にしてもらえないと思うんです。若いときは根性の出し時だと割り切って、社畜だろうとなんだろうと死ぬ気でやるべきです。年を取ったら無理もできなくなりますしね」

―仕事をえり好みせず引き受けることが、自分の成長や人脈につながり、将来役に立つということですね。他にメリットはありますか?

「やっぱりフリーランスと比べて安定してお給料がもらえることですかね。フリーランスだと、打ち合わせの時間はお金が発生しないし、残業代もないですよね。でも反対に若手の会社員だと、右も左も分からないまま会議に出席しても、その時間分のお金がもらえます。年を取って右も左も分からずに給料をもらっているのだとまずいですけど、若いときなら勉強をさせてもらえてお給料ももらえて、メリットだらけですよ」

―起業や独立を目指す若者は少なくないですが、会社に勤めてさえいれば安定したお給料をもらいながら勉強できると。

「でも、会社員だからといって会社のスネをかじる態度はよくないです。例えば10分残業したとする。それを残業代として請求することもできるけど、仕事中の息抜きで10分ぐらいタバコを吸ってる時間があるかもしれないですよね。ちょっと時間が過ぎたからって残業代を請求するのはプロとしての認識が甘い。1時間なら良いかもしれないけれど、10分程度にこだわって残業代を主張していたら、嫌な顔をする人がいることぐらい想像できるじゃないですか。そもそも仕事が終わらないので残業してるんだから、終わらせればいいだけの話です。

もし僕が若手だったら、『10分ぐらいいいです! 社畜ですから! 』という態度をとりますね。10分の残業代を請求するような人よりも、周囲の人の機微を分かっている人の方が、仕事はうまくいくものです」

中川さんのお話しを伺っていると、社畜のポジティブな側面が見えてきました。たしかに何も考えずに「会社に飼いならされる」だけでは、社畜という働き方はつらいもの。しかし「言われた仕事はきちんとやって、お客さんのことだけを考える労働者」という意味だと考えると、自分・会社・お客さん、それぞれにメリットがある働き方にもなります。さて、皆さんは社畜という働き方、どのように考えますか?

識者プロフィール
中川淳一郎中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)/
1973年、東京都立川市生まれ。ネットニュース編集者。一橋大学商学部を卒業後、博報堂CC局で企業のPR業務を担当。退社後はフリー編集者として企業のPR活動、ライター、雑誌編集などを請け負う。現在は『NEWSポストセブン』など複数のニュースサイトの監修・編集に関わっている。


※この記事は2014/12/24にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています

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