後悔は消えない。だから、後悔を塗り替えるほどの努力をする。-Sansan株式会社 尾部絵里子さん-

「あのとき、あの企業に受かっていれば」「あの仕事を選んでいれば」。多くの人が、そんな後悔を抱えているはず。しかし、後悔を糧に成長できるかは、人それぞれです。皆さんはどうでしょう?

後悔は消えない。だから、後悔を塗り替えるほどの努力をする。-Sansan株式会社 尾部絵里子さん-

「あのとき、あの企業に受かっていれば」「あの仕事を選んでいれば」。多くの人が、そんな後悔を抱えているはず。しかし、後悔を糧に成長できるかは、人それぞれです。皆さんはどうでしょう?

今回は、ビジネスと音楽の“二足のわらじ”で働きながら、29歳でプロミュージシャンの道を諦めた経験を持つ、Sansan株式会社の尾部絵里子さんにインタビュー。高校時代からの夢を諦めた彼女が今語る、後悔との向き合い方とは?

会社員とミュージシャンの“二足のわらじ”


-- 現在はクラウド名刺管理サービス『Sansan』『Eight』を手掛けるSansan株式会社の法人部門で、既存顧客のフォローを行う部署でマネジメントを担当している尾部さんですが、以前はミュージシャンでありながら会社員でもあったそうですね。

「はい。大学を卒業した22歳のとき、新卒で就業しながら、高校時代からの夢だったミュージシャンを目指していました。26歳のときに、音楽活動を優先しようと思い、人材業界に特化したソフトウェアを提供する会社に契約社員として転職しました」

-- そもそも会社員とミュージシャンの“二足のわらじ”を始めたのは、どのような理由からだったのでしょうか。

「ミュージシャンとして、色恋物語や異世界のことを表現するのではなく、“現実世界で戦う人の味方”でありたかった。だから、ビジネスを経験したかったんです」

音楽を諦めたことが、今でも悔しくて仕方がない


-- 2007年に会社員として働きながら、CDデビューもしたそうですね。

「そうですね。でも、2008年のリーマンショックがあり『このまま音楽を続けていても食べられない』と思ったんです。29歳で契約社員から正社員になるという決断をし、ミュージシャンの夢を諦めました。もともと30歳で結果が出なければやめると決めていましたが、1年はやく諦めることになったんです」

-- なるほど。高校時代からの夢を諦めると決めるのは、つらいことだったのではないでしょうか。

「苦しくて、泣きながら悩みましたね。同年代で一緒に活動してきたバンドの曲が、CMや、何かの主題歌となってTVから流れてくるのを聴き、『あのとき続けていれば、私もそうなっていたかもしれない』と思うと悔しかったです」

後悔を塗り替えるくらい、努力をしてきた


-- これからもずっと後悔と付き合っていくのは、つらいことではないですか?

「でも、いいと思います。それがあるから頑張れるので。こういう悔しい思いは絶対したくないと思っているからこそ、もう逃げないと思いますから」

-- もう逃げない、とはどういうときに?

「迷ったときでも、『逃げちゃダメだな』と思うんです。前職で音楽とビジネスを両立させていた私は、その間ビジネスだけに集中した人には能力の点で差をつけられていました。なので、時間を取り戻すべくがむしゃらに働きました。つらくて何度も『辞めようか』と迷いながらも、6年間勤めることができたのは、『もう逃げない』という気持ちが強かったからだと思います」

-- 夢を諦めた経験が努力につながり、結果的に自分を強くしたということですね。

「『あのときの選択が正しかった』と言えるようになるには、後悔を塗り替えるくらい努力するしかないと思っています」

選択の軸は“人生の方向性が同じかどうか”


-- 後悔と付き合うとき、ひとつは「後悔を乗り越える」ということ、もうひとつは「後悔をしない選択をする」ということがあると思います。今度は「後悔をしない選択」についてお聞きしたいのですが、尾部さんは転職など、キャリアの岐路に立たされたとき、“選択の軸”はありますか?

「“人生の方向性が同じかどうか”ですね。Sansanを選んだのも、自分の目指す方向性と、会社が目指す方向性が合っていたからです。前職で、システムを通じてお客さまの事業に貢献する喜びを知りました。次はMicrosoftのOfficeやAppleのiPhoneのように、世界中で愛されるプロダクトに関わりたかったんです。だから、全てのビジネスマンの当たり前になるかもしれない『Sansan』に憧れました」

-- なるほど。選択の軸としては、他に「お金」や「人」のようなものもありますよね。そうではなく「方向性」で会社を選ぶことのいいところは、何なのでしょうか。

「同じミッションのもとに集まったメンバーだと、『どうしたらミッションを達成できるのか』ということに一心不乱になれるので、ストレスにならない。 なので、私は何かを選ぶときに方向性で選ぶという軸は間違えてなかったなと思っています」

この道が諦めた道より劣っているわけではない


-- 先ほど尾部さんは「いまでも後悔がある」と言っていましたが、その一方で音楽を諦めたという選択を、とてもポジティブに捉えているような印象も受けます。

「そうですね。後悔してますけど、この道があのとき諦めた道より劣っているとは思っていないんです。この道を選んだことで、『お客さまの事業の成功』という、音楽では得られなかった新しい喜びを見いだせましたから」

-- 最後に、もし今、29歳で音楽を選ぶか、会社員の道を選ぶか決断したあのときに戻れるとしたら、どちらの道を選びますか?

「どうしよう! 今、幸せですもんね。Sansanに入れて。またこの道を選ぶのもいいし、音楽の道もいいし……。なので、2つの人生どっちも選びたいですね。……こんな回答じゃだめですか(笑)」

 

識者プロフィール


尾部絵里子(おべ・えりこ)/ミュージシャンを目指しながら“サラリーマンのブルース”を表現するため、2004年の4月より250名規模のコールセンターにスーパーバイザーとして新卒入社。同年、YAMAHA主催のコンテストでベストベーシスト賞を受賞。『老後は二人で暮らしたい』でCDデビューするなど積極的に音楽活動を行う。 2008年、人材ビジネス業務管理ソフトを提供する株式会社ブレイン・ラボに転職。同年9月より、コンサルティング営業を担当。プライベートでも、ビジネス交流会やコミュニティ運営を行う。2013年、クラウド名刺管理サービスを提供するSansanに入社。


※この記事は2015/03/17にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています

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