情報技術が金融業界の日常を変える!? 今話題のビジネストレンド「FinTech」とは

新たな金融サービスを提供する「FinTech」という領域は、金融業界以外のみならず、私たちの日常生活にも大きな技術的影響を与えるといわれています。

情報技術が金融業界の日常を変える!? 今話題のビジネストレンド「FinTech」とは

新たな金融サービスを提供する「FinTech」という領域は、金融業界以外のみならず、私たちの日常生活にも大きな技術的影響を与えるといわれています。

そこで今回、FinTechとは何か、また、その発展が私たちの仕事や生活にどのような影響を与えるのかを、株式会社マネーフォワードFintech研究所長の瀧俊雄さんに伺います。

「FinTech」とは


まず「FinTech」とは何かについて、瀧さんは次のように説明します。

「FinTechとは、金融(Finance)と技術(Technology)を合わせた造語で、テクノロジーを利用し、金融サービスを利用者がより使いやすく効率的な仕組みへと変えていく取り組み・サービスのことです」(瀧さん:以下同じ)

では、FinTechのサービスにはどのようなものがあるのでしょうか。表を使って見ていきましょう。



私たちも利用することの多い「電子マネー」や「決済代行」のほか、ビットコインをはじめとする「仮想通貨」や「クラウドファンディング」、会計ソフトの自動化といった業務支援まで、FinTechのサービス領域は多岐にわたるようです。

「証券会社や銀行など既存の金融サービスが対象とする産業・分野は幅広く、FinTechによって生まれたITサービスも、融資や資産運用、会計ソフトの自動化から不動産取引にいたるまで、実にさまざまな産業・分野を対象としています」

FinTechは、今なぜこんなにも注目されているのか


FinTechが拡充している背景には、「利便性・効率性」といった情報ニーズの高まりがあると瀧さんは語ります。

「FinTechが注目を浴びるようになった一番の背景は、スマートフォンの浸透です。家電量販店では価格比較サイトを見ながら購入を行い、レストランでは口コミ情報を見ながらメニューを決めるなど、スマートフォンから得た情報で選択することが、消費者にとって日常的になりました。

インターネットを通じた購買では、ユーザーは自分が納得できる商品をとことん追求する性質があります。デパートの店舗で消費する1万円と、ネットショップで消費する1万円を比較すると、後者のほうがあらかじめ買うものが決まっていた、というケースが多いのではないでしょうか。

このような、『情報面での利便性』『コスト面での効率性』を求める人が増え、金融サービスにも同様のプレッシャーをかけているという状況が、FinTechにおいて新しいサービスが求められる一大要因となっています」

FinTechの発展で私たちの生活はどのように変わるのか


瀧さんはFinTechが私たちの日常生活にもたらす変化について「生活におけるキャッシュレス化」「データ分析の簡易化」「自動化と人工知能がもたらす金融業界の変化」の3つを挙げ、次のように語ります。

◎生活におけるキャッシュレス化


「まず、『キャッシュレス化』について説明します。電子マネーの利用度は、オートチャージ機能の普及と、スマートフォンの決済端末化によって毎年大きな増加が見られています。ECの利用も進んでいるほか、クレジットカードの利用も、2020年の五輪開催に向けて、少額決済ルートの整備が進んでいく見通しにあります。

そして従来は用途の少なかった、預金口座からすぐ支払いができる『デビットカード』の利用についても、今後制度改定によりレジでの現金を引き出しが可能となることで、利便性が認識されやすい環境が整ってきました。

また、これらの取引を促進するべく、生体認証(指紋や顔認証など)も進んでいきます。その結果、日常的な買い物が指一本で行え、財布が不要となるような世界がすぐそこまで来ています」

◎データ分析の簡易化


「次に『データ分析』です。キャッシュレス化が進むと、自分がいつ、どこで、何をいくらで買ったかが、家計簿サービスなどを経由して簡単に入手できるようになります。その結果、わざわざ家計簿をつけなくとも、自分の収支や貯金の目標管理などが簡単に行えるようになります」

◎自動化と人工知能がもたらす金融業界の変化


「最後に『金融業界の変化』について。これまで、現金があることで必要とされてきた多くの手作業での仕事や繰り返しの取引については、今後はコンピューターがその処理や予測を行っていくことになります。銀行や証券会社の人の仕事から『手続き』の作業がなくなっていき、不安のヒアリングや、意思決定の補佐へと移っていくことになるでしょう」

FinTechの知識がビジネスパーソンの判断力を高める


FinTechが私たちの生活、ひいてはビジネス業界の情報速度を加速させていくなかで、「ビジネスパーソンがFinTechの知識を持つ必要性」について、瀧さんは次のように語ります。

「今後、クラウド会計ツールなど、必要なサービスを必要なときにだけ使用する、『SaaS(Software as a Service)』と呼ばれる領域のFinTechサービスは、より注目されるものと考えられています。

キャッシュレス化により、多くの情報がリアルタイムで把握可能となるなかで、売上の報告や、資金繰りなどの判断の自動化が可能となる日は近く、かつて紙を用いて会社で確認していた情報は、今後はスマホでどこでも意思決定できる状態へと移行していきます。

ビジネス環境全般でこういった流れが起きてくると、情報を生かした『計画、評価、実行、改善』といったサイクル(PDCAサイクル)の高速化に乗り遅れない判断力や、ビジネス構築力こそが、今後のビジネスパーソンに求められるスキルとなるでしょう。そのため、時流に乗り遅れず円滑にビジネスを回すためには、各業界がどのようにFinTechを取り入れていくのか、しっかりと把握するべきだと思います」

まとめ


FinTechサービスの拡充により、ビジネスにおける情報のリアルタイム性は増していきます。こうした時流が加速するなかで、ビジネスパーソンには、FinTechを仕事に生かすという動きが求められていくよう。今後さらに多様化していくFinTechについて、皆さんもぜひ理解を深めておきましょう。

 

識者プロフィール


株式会社マネーフォワード サービスを通して、お金に対する悩みや不安が軽減し、日々の暮らしの改善や夢の実現を目指す。個人向けには家計管理や資産管理、ビジネス向けには確定申告、法人決算、請求書の作成や送付など、お金に関するさまざまなクラウドツールの提供を行っている。

※この記事は2016/07/15にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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