あの大企業をも魅了する! 駐車場シェアで勢いを見せるakippaの超越マンパワー

民泊やカーシェアリングなど、個人が所有する遊休状態の資産の貸し出しを仲介する、シェアリングエコノミーのビジネスが近年人気を博しています。

あの大企業をも魅了する! 駐車場シェアで勢いを見せるakippaの超越マンパワー

民泊やカーシェアリングなど、個人が所有する遊休状態の資産の貸し出しを仲介する、シェアリングエコノミーのビジネスが近年人気を博しています。

「akippa(あきっぱ)」もその1つ。世の中の空き駐車場をシェアする、新しいシェアリングサービスを展開します。サービスを開始した2014年4月からたった3年のあいだで、時間貸し駐車場分野では業界3位にまでのぼりつめています。

いったいどんな思いからこのサービスは生まれ、また、この急速な成長を押し上げた裏にはどんな秘密があるのでしょうか?

akippa株式会社の代表・金谷元気さんにお話を伺いました。

空き駐車場を有効活用! 「オーナー」と「借り手」をマッチング


都心に買い物に来たのはいいけど、駐車できるところがなかなか見つからない……そんな経験をしたことはありませんか? 「akippa」はオンライン上で空いている駐車場を検索して、そのまま予約することができる駐車場予約サービスです。

……と、聞くと「きっと空きのあるコインパーキングを予約できるサービスなのかな?」なんて思われるかもしれませんが、そこはちょっと違います。

akippaで予約できる駐車場は、その多くが月極駐車場や個人宅の駐車場です。駐車場スペースを持ってはいるけれど「借り手がいない」「遊休状態にある」――そんな悩みを持つ「駐車場オーナー」と、空き駐車場を探している「借り手」をマッチングしてくれる、新しい体験をもたらすシェアリング型サービスなのです。

実際の使い方はこんな感じです。


akippaの登録ユーザーはまず、akippaのウェブサイトやアプリから「渋谷・○月○日・軽自動車」といった具合に、駐車したい地域・日付・車種を検索。

検索すると目的地周辺の地図が表れます。地図上にはakippaが契約している駐車場の場所が示され、それぞれの駐車代金が表示されます。ここで「¥100~」「¥70~」などと表示が出ている箇所は、15分単位で駐車できるところ。


そのほかに「日貸し」のみに対応した駐車場も表示され、都心部であっても1日1,500~2,000円前後で借りることができます。

駐車場の詳細ページでは、駐車場周辺の写真や自動車のサイズ制限、注意事項、過去に使用したユーザーのレビューなどを確認することができます。この詳細ページから入庫・出庫日時と、車種・車両ナンバー・電話番号などの基本情報を入力し、最後にクレジットカード決済かキャリア決済のどちらかを選択してakippaへの支払手続きを済ませれば、ほんの5分足らずで予約は完了。

指定した日時に行けばその駐車場を利用でき、今までのような駐車場探しでの迷子も時間の無駄もなくなります。

世の中の本当の困りごとを解決したい


akippa株式会社の代表・金谷元気さんによると「日本国内には、個人宅の駐車場、月極駐車場など、3000万台分の空き駐車場があるといわれている」のだとか。国内にそんなに多くの空き駐車場が存在していたとは驚きですが、そのほとんどが、契約者の決まっていない月極駐車場なのだそうです。

これに対し、コインパーキングの数は国内500万台ほどといわれており、ここに遊休状態にある月極駐車場が開放されることで、自動車の駐車事情は劇的に変化を遂げます。


「駐車場オーナー様にとっても、今までの悩みを解決できるサービスです。コインパーキングは土地を一括で借り上げ、コインパーキング業者は料金精算機や斜行機、車止めの機械など、一定数の設備を揃え、それを管理していかなければなりません。コストが相応にかかる分、審査が厳しいのです。

しかしakippaは土地の借り上げも機械導入も必要ないため、エリアの審査はありません。また通常コインパーキングは大きな通りに面していたほうが利用者獲得の面で有利に働きますが、akippaは事前予約制。あらかじめ利用者は自由に場所を選択できるため、たとえ大通りに面していないような場所でも需要をつかめます」(金谷さん、以下同)

金谷さんは2009年、24歳のとき、大阪市平野区で合同会社ギャラクシーエージェンシーを創業しています(2011年株式会社化)。そこからこのサービスが生まれるまでは少し時間がかかっているようですが…。

「当初は求人広告サイトの広告枠販売などの事業をしていたのですが、私が未熟だったため、経営者として営業の数字しか見ることができずにいました。次第に自分たちのやっていることが本当に世の中のためになっているのか、あらためて考えてみたくなったのです。

そこから今までの事業を見直し、電気・ガス・水道が私たちの生活シーンで必要不可欠になっているように、世の中の“本当の困りごと”を解決する新たな事業にチャレンジしてみたいと思うようになりました」

当時の事業を続けながらも、無の状態から世の中に必要不可欠なサービスを生み出すべく、全社をあげて奮闘し始めたと言います。

困りごとを可視化して見いだしたサービスの価値


「“なくてはならぬ”新しい事業を始めるにあたり、まずは会社の壁に模造紙を貼って、スタッフを集め、生活のなかで困ることを200個くらい書き出してもらいました。そこで出てきたアイデアの1つがakippaの素(もと)でした」


「コインパーキングは現地に行って初めて満車って分かるから、いつも駐車場を探すためにあちこち徘徊して時間を無駄にしてしまう」

「でも、家の駐車場は空いていることが多かったりするよね」

「なら、その両者をスマホでつなげばいいんじゃない?」


――そんなふうにしてアイデアがふくらみ、形になっていきました。

それは既存事業をしながらの、新規事業へのチャレンジ。当時の戦力は営業社員が多く、エンジニアやデザイナーはサービス開始時はゼロ。そのためフリーランスのエンジニアとデザイナーを呼び、金谷さんら役員がプロデューサーやディレクターを務め、ユーザーテストは社員の家族を対象にしたそうです。

ただちにアイデアをサービスとして形にするべく、社内外さまざまな人が力を合わせ一つになっていきました。

今まで経験したことがない領域での新規事業、社員のほとんどが営業社員……といった一見不利と思える状況にも、それまでの事業で培ってきたスキルで果敢に挑んでいきました。企業・自治体などを対象に、新たな駐車場オーナーを開拓する段階にまで進めば、これまでの営業で培った社員のスキルや経験が武器になる。そこまで達成できたのも、金谷さんが会社の向かうべき道を明確に示し続けたからなのかもしれません。

akippaで利用できる駐車場の数は、サービス開始から2年半の間で一気に拡大。ナビタイムジャパンやレオパレス21、JR九州、住友商事など、次々と業務提携を進め2016年12月にはトヨタ自動車ともサービスを提携しました。

現在、akippaに登録されている駐車場数は全国9,000カ所にまでにのぼり、まずます勢いを奮っています。しかし、今はまだ序章にしかすぎないのかもしれません。

本当にやるべきことが見つかったときは途中で諦めない


小学校と高校でサッカーチームのキャプテンを務め、22歳のときにはJリーグサテライトチームの練習生だった金谷さん。プロの道を断念したころから、ずっと起業することを考えていたと言います。


「人の悩みを解決したいという思いを胸に事業を行っていく上で、私は特定の人の深い悩みを対象にするよりも、より多くの人の悩みを対象にしたい性分なんです。サッカーをしていたときも、『プロになりたい』とか『うまくなりたい』とかそんなことより、いつも多くの人を元気にするプレーをしたい、なんてことばかり考えていました。そのときの思いはakippaでも同じ。

本当にやり続けるべきことが見つかったときには、何事であっても絶対に途中で諦めない。そこが何よりも大事な部分だと思います」

たくさんの人の小さな悩みのタネを解決するために、試行錯誤し諦めずに立ち向かったから今がある。そして社員たちの底力がサービスの魅力に磨きをかけ、多くの企業を巻き込みながら、社会を、そして日本中の人の悩みを次々と解決していくことでしょう。


(取材・文:安田博勇)

識者プロフィール


金谷元気(かなや・げんき)
1984年生まれ。akippa株式会社 代表取締役社長。大阪大学 経済学研究科 非常勤講師。高校卒業後より4年間、Jリーガーを目指し関西リーグなどでプレー。引退後に上場企業にて2年間営業を経験し、2009年2月に24歳で一人暮らしをしていたワンルームの部屋で会社設立。契約されていない月極駐車場や、個人宅の駐車場を15分単位で貸し借りできる駐車場シェアサービス「akippa」を運営。DeNA、グロービス、トリドール、朝日放送、三菱UFJキャピタルなどから総額12億円以上の資金調達を実施している。2016年12月にはトヨタ自動車と提携し出資も受けた。

※この記事は2017/03/31にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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