あのお嬢様芸人が秘めた“夢への熱い思い”。たかまつななのキャリア観に迫る

「皆さまごきげんよう。たかまつななでございます。」学生服姿で笑顔を振りまく彼女の姿を、テレビで目にしたことがある方も多いはず。たかまつななさんは、“お嬢様ことばネタ”でいま人気のお笑い芸人です。

あのお嬢様芸人が秘めた“夢への熱い思い”。たかまつななのキャリア観に迫る

「皆さまごきげんよう。たかまつななでございます。」学生服姿で笑顔を振りまく彼女の姿を、テレビで目にしたことがある方も多いはず。たかまつななさんは、“お嬢様ことばネタ”でいま人気のお笑い芸人です。

芸人として人気急上昇中の彼女が持つもう一つの顔が、大学生。中学、高校とフェリス女学院を卒業した後、お笑いを通して社会問題を発信する“お笑いジャーナリスト”を目指して、現在は慶應義塾大学に通いながら、東京大学大学院情報学環教育部でジャーナリズムも勉強中だといいます。

なぜエリート街道を歩むなかで、お笑い芸人を目指すようになったのか。また、なぜ芸人としての仕事が忙しいにもかかわらず、学生としてジャーナリズムを学んでいるのか。たかまつさんに話を聞くと、彼女のお嬢様キャラの裏に秘められた“夢への熱い思い”が見えてきました。

“お笑いジャーナリスト”という夢


――お笑いジャーナリストという肩書きは、たかまつさんが考えたのですか?

「私の知る限りではほかにいないと思うので、そういうことになると思いますね。『お笑いを通して社会問題を発信するジャーナリスト』という意味です。でもお笑い評論家みたいに思われちゃうので、『ジャーナリスト芸人』に変えようか迷っているところです(笑)。

私は現場に飛び込む人でありたいんですよね。ジャーナリストって何でも知っている人ではなく、“知らないことがあるから、現場に足を運んで聞く職業”だと思っているので。そういう意味でジャーナリストと名乗っているんです。例えば今年は戦後70年ということで、沖縄県に足を運び、現地で撮影した動画を私のYoutube公式チャンネルである『たかまつななチャンネル』で公開しました」

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――なるほど。現在は芸人としては、主にどのような活動をしているのでしょうか。

「テレビやラジオに出演したり、ウェブで連載を書かせていただいたり。さらには単独ライブをやったりしています。今年は3回単独ライブをやろうと決めていて、10月8日にも単独ライブを控えているので、今はその準備で慌ただしくしています」

――たしかに現在、芸人としてライブやテレビにたくさん出演されていますね。大変さが身に染みているころでしょうか。

「もちろんです。売れるほど大変だなということも分かりました。優秀な人だけが残っていくわけですから、そこに食らいついていかないといけない。売れている芸人さんほど努力しているんだなということも実感していますね」

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――お笑いジャーナリストとしては、これからどのように活動していくのでしょう。

「お笑いを通して本格的に社会問題を提起するというのは、30、40代になってからだと思います。自分の番組を持って、お笑いで社会問題を発信するということをやりたいですね。30代前半でできるようになるのが理想です。

社会問題って、若い人が言っても説得力がないと思うんですよね。それは高校生のときに時事ネタをやってすごく実感しました。なので今、単独ライブで時事ネタをやったりして、それでも笑いがとれるように、お笑いの技術を磨いています。

私はお笑いが本当に好きなんです。まずは見に来てくださった方を楽しませるのが一番の仕事だと思うので、社会問題ネタをやっても笑いが取れないなら、お嬢様ネタをやるべきだと思っています」

劣等感がなかったら違う職業についていた


――そもそもなぜ“お笑いジャーナリスト”になろうと思ったのですか?

「中学1年のとき、富士山での不法投棄についての記事を書きたくて、読売新聞の子供記者に応募しました。公募で選ばれた首都圏の小学5年生から高校3年生が、取材・記事執筆を署名入りで行うんです。私は子供記者にはなれたのですが、富士山の不法投棄については書かせてもらえなかったんですよ。『そんなのは社会部がやればいい、子どもの記者がやることではない』と。

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たかまつさんは高校生平和大使として国連に派遣された経験も持つ



何年かしてやっと書かせてもらえたときはうれしかったのですが、大きな反響があるかなと思ったら、感想を言ってくれるのは友達の保護者の方ばかり。お友達のお母さんに『見たわよ』とは言ってもらえても、友達からの反応は全然なくて。それを機に、『ニュースに関心がない人にも、ニュースを届けられる人になりたいな』と思ったんです」

――友達には興味を持ってもらえなかったんですね。

「はい。でも、社会問題のような難しい話に興味がない人の気持ちも分かるんです。私自身が、勉強ができなくてすごく劣等感を感じていましたから。学校の中では成績が悪くて『全然ダメじゃないか』とも言われる人間だったんです。でも、勉強ができなかった経験を持つ私だからこそ、難しい話を敬遠してしまう人に対してどういうふうに伝えればいいっていうのが分かるんじゃないかなって思って、まずジャーナリストに興味を持ったんです」     

――劣等感があったというのは意外でした。

「劣等感がなかったら違う職業に就いていたと思います。成績は全然よくなかったですね」

――たかまつさんのネタにもあるように、お家ではバラエティー番組を見ることが禁止されていたとのことですが、お笑いに触れたきっかけというのは?

「中学2年のとき、『憲法九条を世界遺産に』という、思想家の中沢新一さんと爆笑問題の太田光さんが対談されている本を読んだのがきっかけでした。そのときの私は爆笑問題さんも知らなくて。なんとなく読んでみたら、太田さんがすごくユニークな政策を提言されている。

『この人は一体誰なんだろう、学者さんなのかな』って思ったら、“芸人”と書いてあった。『芸人さんてすごいご職業なんだな、芸人さんだからこういう発想ができるんだな』とすごく驚きました。そうした経験から、『お笑いを通して社会問題を発信するジャーナリストになりたい』と思うようになったんです」

「ここで優勝しないと!」強い気持ちでつかんだ「ワラチャン!」優勝



――たかまつさんが芸人として世間に知られるようになったのは、フェリス女学院出身であることを生かした「お嬢様ことば」のネタでした。ネタの中でフェリス女学院という具体的な校名を出すことは問題にならなかったのでしょうか?

「実は学校名を出すのに何年もかかりました。私は15歳のときに初舞台を経験して、ずっとアマチュアでやっていたのですが、最初はお笑いをするのに学校の許可が必要だったんです。教員会議にかけられたりもしていました。そして会議の結果、生徒指導の先生に呼び出されて、『お笑いをやることを特別に許可いたします。ただし条件があります』と。『学校名を出さない、お友達を傷つけない、上品にやること』とのことでした(笑)」

――校名は出さないのが条件だったのですね。

「はい。確かにそれはそうだなと思って、真面目に受け取りました。その後、吉本興業主催のハイスクールマンザイという高校生の漫才大会に何度も挑戦したんです。予選から有名な芸人さんたちがMCをされるすごい大会。私その予選を18回受けたのですが、18回ともMCの芸人さんたちに『君ってフェリスなんだね』といじられて。

最初は言われるたびに『学校名NGって言ってるのにどうして言うの?』って思ってたのですが、毎回いじられるってことは何かあるんだなと。優勝した回のMCだったダイノジさんにも『それネタにしたほうがいいよ』と言っていただいて。それで思いきって、高校3年生の秋ぐらいからフェリスの名前を出してしまいました。

実はR-1グランプリの予選にも、高1のときに出たのですが、イヤになるくらいスベったんです(笑)。次の年は怖くて出られなかったぐらいです。でも出ないことには何も始まらないので、2013年、大学1年のときにR-1予選でフェリスのネタをやったらすごくウケて、準決勝にまで行けた。『やっぱりこれだ!』と思いましたね」

――ネタ作りで一番苦労したのもそのときですか?

「そうですね。お嬢様ことばネタで日本テレビの『ワラチャン!U-20お笑い日本一決定戦』という番組にも出て優勝したのですが、ネタ作りはかなり大変でした。大学に行きながら、大会の1カ月は人前で60回ぐらいそのネタをやりました。学校では『先生、5分だけ時間をくれませんか』とお願いして、授業の最後の時間をもらって、みんなに見てもらったり」

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――すごい努力ですね。誰かに言われたわけじゃなく、自分でそうしようと考えたのですか。


「だってすごい大きなチャンスですから。『ワラチャン!』は20歳以下しか出られない大会だったし、そのとき私は20歳だったから一番年上。絶対的に有利なんです。ゴールデン番組の生放送でネタができる機会も、今後一生ないと思ったし、『ここで優勝しないといけない!』って強く思っていましたね」

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誰かの反対くらい打ち破るようでないと、夢はかなえられない


――高校生のときからかなりお笑いに力を入れていたようですが、ご両親はそのことを知っていたのですか?

「高1のときに親に知られてしまいました。塾をさぼってお笑い養成所の試験を受けに行ったんですよ(笑)。その合格通知が家に届いてしまい『これは何だ!?』ということになって。

アルバイト禁止だったのでそのお金は私には払えない。結局そのときはお金を払えないので入学を断念して、3年のときに入り直しました。今でも両親は、私にお笑いは向いていないと思っています」

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――親に反対されてでもお笑いをやり続けるのはなぜなんですか。

「実は、子どものころサッカー選手になりたいと思っていたことがありました。横浜F・マリノスのジュニアユースチームでサッカーをしていたので、将来は選手になりたかったんです。中学1年になる年に、福島にJヴィレッジというサッカー選手を育成する学校が開校されることになったので、私もそこに入学したいと親に言ったところ、『そんなことのために今まで塾に通わせていたわけじゃない!』と言われてしまい、サッカーをやめさせられてしまったんですね。

勉強ができない自分にも劣等感を感じていたので、中学受験をしないという決断もできなかった。サッカーのことはあきらめて、中学受験をやるしかなかったという経験があります。

この、『サッカー選手になりたかったのにあきらめた』という体験が、いまお笑いをやり続けている根底にあると思います。親にサッカーをやめさせられたけど、フェリスに入ってからもサッカーを続ける機会って絶対あったはずなんです。女子のサッカーチームに入るなど、道を探せばよかったのに、親が反対したからといってあきらめていた。

当時はすごく親のせいにしていたんですね。だから『次にやりたいことを見つけたら、絶対に親のせいにしないで、自分で納得できるところまでやってみよう!』と思ったんです」

――夢をあきらめたことを何かのせいにする。誰でもやってしまいがちですよね。

「誰かの反対くらいでやめるのなら、その人の思いはそれまでだったと思っています。それを打ち破ってでもやるくらいじゃないと、自分の夢はかなえられない。特にお笑い芸人なんて本当に厳しい世界ですから。

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私も芸人を目指している高校生の話を聞いたりすることがありますが、『働くっていうのは楽しさと大変さが必ずある。それでも進みたいならどうぞ』と話すようにしています。厳しい現実を教えることのほうが多いかもしれません」

どんなことも、一歩ずつ歩かないと絶対にたどり着かない


――お笑い芸人としての仕事も忙しいと思いますが、そんななか慶應義塾大学と、東京大学大学院にも通っていますね。なぜダブルスクールをすることにしたのでしょうか。

「お嬢様ネタって、『お嬢様=世間知らずなところが面白い』と人に言われたんです。私としては、教養はあると思っていたのに(笑)。世間知らずと思われている人間が社会問題を語っても説得力がないので、どうすればいいか考えました。

『このままではお笑いジャーナリストにはなれない、もっと勉強しなきゃ』と思ったので東大大学院に入りましたし、政治について学ぶ塾にも入りました。短い目で見たら大学院なんて入らないほうがいいし、なるべくお笑いの仕事を突き詰めたほうがいいとは思うのですが、将来的には勉強が必要だと思ったので、ダブルスクールを決めたんです」

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――すでにお笑い芸人として有名になっていますが、たかまつさんが目指しているお笑いジャーナリストという夢は、まだまだ先にあるんですね。

「はい。お笑いジャーナリストになりたくてこの世界に入ったのだから、それはずっと言い続けたいと思っています。転んでもいいっていう気持ちで今はやっています」

――夢を追いかける過程で失敗してもいいと。実際にうまくいかなくて、落ち込むことはないですか?

「しょっちゅうありますよ。強く見せているだけ。実は失敗するとけっこう引きずっちゃう性格なんです(笑)」

――うまくいかないとき、ストレスを発散する方法は?

「登山ですね。本当に落ち込んだら山に行きます。中学のときのハイキングクラブの仲間と一緒に、夏は北アルプスに行ったりしています。     

登山てつらいんですけど、山頂にたどり着くと気持ちがいいんですよね。きれいな景色が待っているし、達成感が半端じゃない。どんなことも、一歩ずつ歩かないと絶対にたどり着かないなって、登りながらいつも思っていますね」

【たかまつさん単独ライブの告知】

今年もたかまつななさんの単独ライブが開催予定です。彼女の魅力がたくさん詰まったライブに、ぜひ足を運んでみてください!

■たかまつなな単独ライブ第06回公演 「井の中のペルシャ猫」

日時:2015年10月08日(木) 開場:19:00開演:19:30

場所:なかの芸能小劇場

料金:前売り(予約)2000円、当日2500円

※詳細やお申し込みはこちらから。

■【慶應大学×お笑い】たかまつななの笑えて学べるニュース ―国際協力編―

日時:2015年12月01日(火) 開場:18:30開演:19:00

場所:慶應義塾大学日吉キャンパス 来往舎シンポジウムスペース

料金:0円

※詳細やお申し込みはこちらから。

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プロフィール


1993年横浜生まれ。慶應義塾大学総合政策学部4年。2015年4月から、東京大学大学院情報学環に通っていることが話題となり、Yahoo!のトップニュースになる。夢はお笑いを通して、社会問題を発信すること。政治塾に通い、国際協力や清掃活動などボランティア活動に精力的に行う。現在、YouTube「たかまつななチャンネル」で動画更新中。お笑い界の池上彰を目指し、現在フリーで活動中。R-1ぐらんぷり2013セミファイナリスト、日本テレビ「ワラチャン!」優勝、ABCお笑いグランプリ決勝進出。

※この記事は2015/08/26にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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