会議のアジェンダとは? 作成マニュアルやレジュメとの違いも解説

仕事で大きなウエートを占める会議。この会議が長時間化することに頭を痛めている人も多いのではないでしょうか。円滑に会議を進めるためにはさまざまなコツがあります。今回は「会議を効率的に進めるためのアジェンダの作成方法」について、働き方改革の専門家・大塚万紀子さんにご紹介いただきます。

アジェンダとは?

アジェンダとは、会議で論ずる事項(議題)の表、議論する計画などを指します。上司や先輩社員から「アジェンダを用意して」と言われた場合は、その会議で取り扱う内容や議題をあらかじめ集めて整理しておくということですし、「アジェンダに従う」と言われた場合は、計画された順番どおりに議題を進めていくということとなります。

つまり、アジェンダを準備することによって会議がスムーズに進みやすくなると考えられます。「会議の質は準備にかかっている」といっても過言ではありませんが、どのようにアジェンダを準備したらよいか考えてみましょう。まず準備に取り掛かる前に知っておきたい「アジェンダ」と「レジュメ」「サマリー」の違いについて整理をしておきます。

アジェンダと「レジュメ」「サマリー」の違い

「アジェンダ」と混同されがちな言葉に「レジュメ」があります。レジュメは、アジェンダに基づいた協議事項を議論する際に必要となる資料や材料を指す言葉です。大きな議題を取り扱う場合は、それらの資料や参考データをまとめたものを「レジュメ」と称することもあります。

また、「サマリー」はレジュメと同様に“要約“を意味する言葉です。レポートや論文などにおいて冒頭に書き記す要約・概要を指す場合が多く、「膨大なデータをまとめて要約する」という意味で用いられることもあります。

【関連記事】
「アジェンダ、リソース、グロース、リスケ…」新入社員として覚えておきたい、よく使われるビジネスカタカナ語【#1】

アジェンダを用意する重要性・メリット

もしもアジェンダがなかったとしたらどのような会議になるでしょうか。例えば、次のような事態に陥りそうです。

◆会議でアジェンダを設定しないと……
・何を話し合う場なのか誰もわからないまま集まっている
・議題が不明なので、事前に資料を整えることができない
・ただやみくもに意見が述べられるだけで、適切な結論・合意に至らない
・誰も会議や議論のゴールが見えていないので、必要以上に時間が長引くか、必要な論点に言及せずに会議が終わる
・会議に対する失敗経験となり、それ以降会議を開くことへの抵抗感が増す

このような会議には参加したくありませんよね。つまりアジェンダを作成し、共有しておくことは、効率的な会議運営につながります。さらにアジェンダには以下のような利点もあります。

◆会議でしっかりとアジェンダを決めておくと……
・何を話し合う場なのか、参加者の共通認識ができる
・議題が明確になり、事前準備の資料に必要なものがわかる
・議題に沿った意見や提案がなされ、適切な結論・合意を導きやすくなる
・事前に会議や議論のゴールを共有しているため、適切な時間配分で会議を進行しやすくなる

目的を達成するための最優先事項「アジェンダ」

うまく進まない会議ってどんな会議? どうすればうまくいく?

うまく進まない会議には以下のような4つの特徴があります。

①結論が出ず、次の行動が決まらない
②時間内に終わらない
③ゴールが見えない
④参加者が誰も意見を言わない

これらの課題があると会議の生産性が下がってしまいます。どのように解消すれば良いのでしょうか?

①結論が出ず、次の行動が決まらない

結論が出ない、次の行動が決まらない場合、アジェンダを設定する際に「結論をまとめる」や「次の行動を確認する」といったレビュー項目を追加してみましょう。そうすることで、忘れずに議論することができます。

②時間内に終わらない

時間内に終わらない場合は、アジェンダに所要時間の目安を記載しておくと効果的です。可能であれば、タイムキーパー役を設けて、時間管理をお願いしておくとよりよいでしょう。

③ゴールが見えない

何を話していたかゴールが見えない場合には、ホワイトボードなど議論の内容を可視化できるツールを使ってみましょう。その際、アジェンダに「ホワイトボードを活用」など使用ツールを明記しておくと忘れずに済みます。ホワイトボードと聞くとリアルの会議を想像するかもしれませんが、オンラインミーティング用のホワイトボードもありますので積極的に活用してみてください。

④参加者が誰も意見を言わない

参加者が誰もしゃべらないことが予想される場合は、アジェンダにアイスブレイクの時間を設定しておくのがおすすめです。最近あった嬉しかったことなどを数分共有するだけで、場の雰囲気がよくなり、発言しやすくなります。

また、それでもどうしても意見が出ない場合は、ファシリテーターがまだ意見を言っていない人を指名したり、「こういう意見が出ましたがどう思いますか?」と発言を促したり、その場に応じた工夫も大切です。

さらに会議を効率的に進めるためには? 会議の目的整理

会議の質を高めたい、スムーズに進行したいといった場合には、会議の種類に注目してみましょう。具体的には、その会議が「共有」のためのものなのか、「相談」のためのものなのか、「決裁・結論」を出すべきものなのかといった具合です。

共有目的の会議

共有目的の会議は、事前にメール等で周知し意見を募っておくといいでしょう。場合によっては、わざわざ会議で時間をとる必要がなくなるケースも少なくありません。また、事前の意見出しを通じて、会議の目的を「相談」や「決裁・結論」に修正することもできます。

相談目的の会議

相談を目的とした会議の場合はアジェンダで相談ポイントを明確にすることが大切です。情報をそろえておくことで、参加者が相談しやすい雰囲気を作ることができます。

決裁・結論を出すための会議

決裁・結論を出すことが目的の会議であれば、期間や費用、懸念点やメリットといった「結論を出すために必要な情報」がそろっているかを事前に確認しておくと、迷いなく進行することができます。

アジェンダの基本の書き方

アジェンダの書き方のポイントは、「誰にでもわかりやすく書く」という点です。会議の内容を過不足なく記載することで、会議をスムーズに進行できるでしょう。

アジェンダに書くべき主な項目

アジェンダには、主に以下のような内容を記載します。

【アジェンダに盛り込むべき基本項目】

  1. 会議名
  2. 開催日時
  3. 開催場所
  4. 予定参加者
  5. 開催目的
  6. 議題内容(予定時間)
  7. 配布資料

必要であれば最後に備考やメモを記載するのもおすすめです。そして、意外と忘れられがちなのが「時間配分」です。事前に目安の時間を記載しておくことで、会議が長時間化するのを避けることができます。

アジェンダの作成例!テンプレートを活用するのがおすすめ

以下の例ように、アジェンダを作成する際はわかりやすく簡潔にまとめることを意識しましょう。なお、アジェンダは「議事録作成」の際にも役立ちます。アジェンダに実際に話し合った内容を追記するだけで議事録が完成するので、手を抜かずにアジェンダを作成しましょう。

【各プロジェクトの情報共有】

開催日時:2022年11月1日(火)10:00~11:00
開催場所:本社第1会議室
予定参加者:○○、○○、○○、○○、○○(計5名)
目的:各プロジェクトの進捗や懸案事項の確認
配布資料:プロジェクト提案書、予算案、スケジュール表

<議題>

  • Aプロジェクトの概要説明(10分)
  • Aプロジェクトにおける各担当の作業内容について(20分)
  • Bプロジェクト予算の検討(15分)
  • 今後のスケジュールについて(5分)
  • 会議内容の振り返り及び質疑応答(10分)

以上

アジェンダを初めて作成するという場合は、テンプレートを活用するのがおすすめです。例えばMicrosoft Wordには、ビジネス文書や請求書、カレンダー、予定表、チラシなど豊富なテンプレートが用意されています。ゼロから作るよりも圧倒的に効率的なので、積極的にテンプレートを活用しましょう。

【Wordのテンプレートの使い方】

  1. Wordを開いて、「ファイル」タブ→「新規」を選択。
  2. 検索窓で「アジェンダ」と入力して、テンプレートの検索をする。
  3. 好きなテンプレートを選択し、「作成」をクリックしたらテンプレートが開く。

会議を効率的に進めるために、アジェンダをうまくまとめる5つのポイント

アジェンダを作成する際には上記で説明した基本の書き方に加えて、次に紹介する5つのポイントも意識しましょう。論点が明確になり、会議をスムーズに進行できるようになります。

①議論したい項目の具体的な情報を示す

「Aプロジェクトの内容について」などといった概要や抽象的な項目ではなく、「Aプロジェクトの5つの作業のうち、Bのスケジュールについて相談したい」といった具体的かつ詳細な内容や提案まで踏まえたアジェンダを作ると、参加者が議論の内容・進め方をイメージしやすくなります。

②議論したい項目のゴールは何かを明確にする

「Aプロジェクトの内容」を共有したいのか、相談したいのか、決裁を求めたいものがあるのかによっても事前準備や所要時間が変わってきます。議論したい項目の会議中のゴールはどこにあるのかをあらかじめ確認しておきましょう。

③議論の内容や進め方、種類が似た項目をまとめるなどの順番を整理する

例えば、「Aプロジェクトの内容」について話した後に、「Bプロジェクトの予算の決裁」があり、その後「Aプロジェクトのスケジュール遅れの相談」に戻る……となってしまうと、論点がぶれてしまい議論がしにくくなってしまいます。プロジェクトごとに項目を分けるなど、似た議題をまとめて順番を整理しておくとよいでしょう。

④議論の目的を達成するために必要な項目ごとの所要時間を見積もる

60分しかない会議のうち「Aプロジェクトの内容」に45分も使ってしまうと、期日のある「Bプロジェクトの予算の決裁」に対し十分な議論ができないといった事態に陥ります。その会議の全体時間を意識しつつ、それぞれの項目に必要十分な所要時間を見積もりましょう。なお、話し始めると長くなる人も多いので、5~10分程度の余白をあらかじめ用意しておくのも有効です。

⑤議論をスムーズに進めるために必要な参考資料の準備を行う/指示する

議論の内容や順番、所要時間が整理できたら、それらの計画がスムーズに進むよう必要な参考資料の準備を行ったり、適切な人に準備を指示したりして会議当日を迎えましょう。指示するときは、資料の作りすぎや過剰品質にならないよう、要点や目安枚数、その資料について紹介する際の時間目安も伝えることをお忘れなく。

アジェンダは誰がつくる?司会?それともファシリテーター

ここまで、アジェンダの重要性や作り方をお伝えしてきました。さて、このアジェンダは、誰が作るものなのでしょうか。最後に司会とファシリテーターの違いをおさらいしながら、「誰がアジェンダを作るべきか」を解説します。

「司会」と「ファシリテーター」の違いを説明できますか?

「司会」と「ファシリテーター」は混同されがちですので、ここで両者の違いを整理しておきましょう。

「司会」は、会議を滞りなく進行する役割を担う人のことを指します。定刻通り開始し、終了時刻に(間に合うよう)注意を払いつつ、スムーズに会議が進行することにコミットします。

一方、「ファシリテーター」は、質のよい議論を引き出し、最終的な結論や合意を得られるような雰囲気づくりをする役割です。参加者の発言を促したり、議論を円滑に進められるような場づくりをして、落としどころを見極めつつ議論を合意へと導きます。

もちろん実際の会議では、1人が両方の役割を担うこともあります。ただその場合でも、両者の違いを理解しておくことはスムーズな会議運営に必要なので、司会とファシリテーターの役割はしっかりと覚えておきましょう。

アジェンダは「ファシリテーター」が作成するのが望ましい

アジェンダづくりは、議論内容や決定事項の進捗にもコミットするファシリテーターが行うのが望ましいといえるでしょう。

では、ファシリテーターは誰が担うとよいのでしょうか。その会議で一番立場が上の役職者? それとも最も若手が担うべき? 様々な観点での人選が考えられますが、重要なのは「議論の方向が見えなくなったときに軌道修正することができる立場・役職の人」かつ「ファシリテーターとしてのスキルを備えている人」であることです。

会議は、集まるメンバーが1人でも変われば結論や方向性、雰囲気までもが変わります。こちらの方向に進んでもらいたいという仮説や意図はあっても、その通りに会議が進むことはめったにないといっても過言ではありません。会議の最中、議論の方向が見えなくなったり、結論がわからなくなったり、次のアクションが決められなかったり、といった事態は頻繁に発生します。

その際、「では、〇〇のようにするのはいかがですか?」「今日は〇〇まで議論が進みましたので、次の会議では△△から議論を続けましょう」などといった提案ができる人がファシリテーター役を担うと安心です。一刀両断で結論づけたり、一方的な物言いで意見をねじ伏せたりというタイプの人ではなく、傾聴する力やWin-Winな関係を築く力のある人を選ぶといいでしょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。効果的なアジェンダの作成と事前準備で、私たちの仕事の多くを占める会議がスムーズに進み、結果的に仕事の質が上がったり、働き方改革が加速したりすることを願っています。

 

【プロフィール】
大塚万紀子
楽天を経て06年(株)ワーク・ライフバランスを小室淑恵とともに創業。高いコミュニケーション力やコーチングスキルを活かし、売上利益に貢献するさまざまな働き方改革を効率的に遂行するコンサルティングの先駆者。心理学や組織論等をもとに多様性をイノベーションにつなげることが得意。経営者から”深層心理まで理解し寄り添いながらも背中を押してくれる良き伴走者”と厚い信頼を得る。農林水産省「食品産業戦略会議」委員(働き方改革分野担当)なども担当。二児の母。

【関連記事】
もうムダな時間は過ごさない!会議を効率的に進める5つのポイントとは?
会議の効率的な進め方。まとまらない会議を「地上戦」に持ち込む
会議が多すぎて残業時間がかさむ…そんな状況をうまく乗り越える残業回避術

page top