ロジカルシンキングとは? 手法やトレーニング方法を専門家が解説

ビジネスパーソンにとって必要なスキルの1つが「ロジカルシンキング」。熟考したアイデアも他者から指摘されて論理が通っていないことが判明する、という経験をした人もいるかもしれません。どうすればロジカルシンキングを鍛えられるのでしょうか。大企業などに向けてロジカルシンキングの研修をしている別所栄吾さんに伺いました。

ロジカルシンキングとはどんな意味?

ロジカルシンキング(論理的思考法)とは、根拠を明確に示しながら自分の主張を展開することだと言います。

「一言で言うと『事実に基づいて結論を導くこと』。自分の言いたいことと、その主張に対する根拠を明確にすることが重要です。そしてその根拠は『事実に基づく』ということを意識してください」(別所さん、以下同)

クリティカルシンキングやラテラルシンキングとの違いとは?

ロジカルシンキングには似た言葉があります。以下にそれぞれの違いを紹介します。

  • クリティカルシンキング…ある主張が「正しいか」を客観的な視点で見定めること
  • ラテラルシンキング…今までの前提を疑い、新しい物の見方をすること

クリティカルシンキングは何が問題かを設定する際に使用するのに対し、ロジカルシンキングは解決策を探るときに使用します。またさまざまな角度から結論を探るラテラルシンキングが複数の結論を見出すのに対して、ロジカルシンキングは論理的な一つの結論に達する場合が多いです。

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ロジカルシンキングのメリットとは?

ビジネスパーソンにとって、ロジカルシンキングを学ぶとどんなメリットがあるのでしょうか。

自分の主張が伝わりやすくなる

メリットの1つは自分の主張を伝えやすくなることです。上長やクライアントに自分自身の主張がうまく伝わらないと感じる人は、ロジカルシンキングを学ぶことで成長できる可能性があります。

「例えば基本の『ホウレンソウ』で『こういうことがありました』という事実だけを伝えて報告できたと思っている人も多くいます。でもその事実から主張や結論が必要になります。その一方で、主張はあるけど『根拠=事実+理由付け』がないため『なぜその主張になっているのか』が伝わらない場面もあります。主張と根拠はセットでないと伝わりません。

どちらもそろっているけど、根拠が主張とうまくつながっていないこともあります。そのときにロジカルシンキングのフレームワークを使うことで『自分の言いたいことが何か』を整理できます」

相手の主張を正しく理解できる

ロジカルシンキングを学ぶことは、自分の主張を伝えるだけでなく、上長やクライアントからの意見を正しく理解することにもつながります。

「普段、私たちがしている会話は大雑把です。だから『相手が言いたいことはきっとこうだろう』と無意識にお互いに推測して会話しています。ロジカルシンキングを学べば、相手の主張とその根拠を理解することが容易になります。

またロジカルシンキングは共通の言語になります。例えば『長いか短いか』という話をしているのに『重い』と答えたら、会話がかみ合っていないとすぐに分かるでしょう。それと同様に、会話には共通の物差しが必要です。共通の思考法であるロジカルシンキングを学ぶことでより正確に、よりスピーディーに、相手と意思疎通をできるようになります」

問題を解決できる

さらにロジカルシンキングは問題の解決にも役立つと言います。

「問題が起きると、原因がつかめていないにも関わらず、その場しのぎの対応をとることがあります。それは応急処置であって、根本的な解決になりません。原因がAであるという事実をつかんでいれば、Aに対応するアプローチができます。

でも社会には自分の経験や勘に基づいて問題に対応してしまう人が多いです。原因を分析せず直感でBの対応をしてしまう。ロジカルシンキングを学べば、経験則や勘ではなく事実に基づいて原因を探るようになります」

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ロジカルシンキングの2つの手法とは?

ロジカルシンキングには主に2つの方法があります。

帰納法

帰納法とは複数の事例から共通点を探り、結論を導く手法です。より多くの事例を採用するほど、ロジカルシンキングの精度が高まります。事例から問題の本質を探る手法なので、分析力が必要です。

演繹法

前提となるルールに、アイデアや主張を当てはめて「当てはまるか否か」で結論を導く手法を演繹法と言います。方程式のように前提となるルールに当てはめて考えればいいので、ビジネスにも取り入れやすい手法です。

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実践!ロジカルシンキングのフレームワーク

ロジカルシンキングをするために、さまざまなフレームワークが用いられています。「ロジックツリー」や「ミーシー」と呼ばれるフレームワークもあります。しかし別所さんはもっとシンプルに「三角ロジック」と「リンクマップ」の2つをおすすめしています。

三角ロジック

主張やアイデアはあるけれど、それに説得力を持たせられない場合があります。このときにおすすめなのが三角ロジックです。

「三角ロジックは自分の主張に根拠を示すのに最適なフレームワークです。主張・データ・理由付けの3点を説明します。主張とは結論、訴えたいこと。その主張となる根拠として必要になるのがデータと理由付けです。データは客観的な事実で、理由付けは『なぜそのデータから主張が導かれたか』を指します。

日常の会話ではこの3つの要素のうち、1つか2つしか言わないことがほとんどです。しかしビジネスシーンではこの3つがそろわなければ、なかなか相手を説得できません。もしプレゼンでどれか1つが欠けていれば、その主張や意見に違和感が生まれてしまいます」

リンクマップ

自分の主張やアイデアを深掘りしたり、発展させたりしたいときには「リンクマップ」を使用するのがおすすめです。

「AならばB、BならばCというように物事の筋道を考えてみるフレームワークです。リンクマップは1つのテーマを深掘りしたり、1つのアイデアを発展させたりするために使用します。

例えば深掘りするには、あるテーマの原因を書き出します。その原因がなぜ起きたのか、またその原因もなぜ起きたのかと、どんどん掘り下げていきます。そうして『なぜ』を限界まで掘り下げることで、根本的な原因の把握につながります。そこからさらにどういう対策が練られるか、対策の理由まで深掘りできるようになります」

ロジカルシンキングを鍛える方法は?

普段から論理的に物事を考えるためには、ロジカルシンキングをトレーニングして慣れておく必要があります。その方法を紹介します。

フレームワークに当てはめて書き出す

先述したフレームワーク「三角ロジック」「リンクマップ」に当てはめて、自分の思考を書き出すクセを付けてみましょう。

三角ロジックの場合

「三角ロジックを用いて『自分の主張』『データ』『理由付け』を書き出すクセを付けます。もちろん日常会話をすべて書き出すのは難しいと思います。家族や同僚、友人との会話で『納得できない』と感じたときに書き出してみるのがおすすめです。もしどこか1点でも書き出せなければ、それが納得できない原因だったと理解できるでしょう。

例として、以下を書き出します。ホテルの従業員が連泊のお客さんから『毎日、歯ブラシを変えないでください』と言われました。その主張について三角ロジックで書き出して、理由を考えてみます」

主張……毎日、歯ブラシを変えないでください
データ……このホテルは毎日、歯ブラシを交換している
理由付け……エコに配慮したい・新品の歯ブラシは歯ざわりが固い

リンクマップの場合

「1つのテーマやアイデアを深掘りしたいときには、リンクマップを書き出す練習をします。多くの場合、途中で考えきれなくなってしまうはずです。最初から100点満点を狙おうとする必要はありません。まだ要素が足りないと思ったら付け足せばいいのです。まずは気楽に、話の筋道をメモする感覚で書き出しましょう。

例として、『商品の納品時に1つ欠品があった』ケースをリンクマップで書き出してみます。そして『なぜ』を深掘りしてみましょう」

なぜ……チェックリストに印はあったけど入れ忘れに気付かなかった
なぜ……本来は一つ一つチェックを入れるべきだったが、商品を全て入れてからまとめてチェックを付けていた
解決策……リストに区切りを入れて、5つ商品を入れたらチェックを入れるようにする

自分の思考のクセを意識する

フレームワークにあてはめて書き出す過程で、自分の思考の傾向やクセを理解できるようになります。傾向を把握し、自分が思考を深めるのに苦手な箇所を鍛えましょう。

実践編:ロジカルな話し方・プレゼンで気を付けたいこと

ロジカルに思考できるようになったら、プレゼンの機会に生かしていきましょう。その際に気を付けたいことを紹介します。

相手に確認しながら話を進める

まずは自分のペースを優先しないこと、話す相手を置き去りにしないことです。

「説明をするときにある程度、区切りながら伝えることが重要です。話を伝える相手に『ここまでで不明点はありますか?』と理解度を確かめるように会話を進めていきます。自分が考えたロジックなので、根拠にしても筋道にしても自分はすべて把握できています。だからどんどん説明をして相手を置いてきぼりにしていることに気付かないことが多く、注意が必要です」

同じことでも2回説明する

次に1度の説明で相手が完璧に理解できると考え過ぎないことも重要です。

「簡潔に一度、紹介したことを丁寧に説明し直すことも重要です。プレゼンの聞き手は、つい考えごとをして聞き逃してしまう人もいます。そのため、同じことでも繰り返し説明することで相手の理解度が高まります」

まとめ

問題の解決だけでなく、上長やクライアントとのコミュニケーションにも役立つロジカルシンキング。トレーニングをすれば、意識しなくてもロジカルに物事を考えるようになる可能性があります。本記事を参考に、ロジカルシンキングの習得を目指してください。

【プロフィール】
別所 栄吾(べっしょ えいご)
BCL代表取締役、産業カウンセラー、国際ディベート学会公認ディベートトレーナー、公益財団法人関西生産性本部 パートナーコンサルタント。大手企業や自治体、学校等で、ロジカルシンキングやマネジメントの研修を年間180日以上出講している。

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