自己肯定感を高めたいと考えたことはありませんか? 自己肯定感は、仕事のパフォーマンスや労働意欲に関わる重要な要素です。「自己肯定感が低くて悩んでいる…」という人も、これから紹介する方法を意識すれば高めることができます。今回は、公認心理師の川島達史さんにうかがった話を基に、自己肯定感の概要や高めるメリット、自己肯定感が低い原因と高める方法などについて解説します。
自己肯定感とは? その概要を解説
「自己肯定感」とは、自己の存在を肯定できる姿勢のことです。ここでいう「自己」とは、自分の容姿はもちろんのこと、失敗・挫折した経験やコンプレックスなどのネガティブなものも含むすべてを指します。
つまり、ポジティブ・ネガティブ問わず、自分を構成しているすべてをありのままに認める姿勢を、自己肯定感というのです。
自己効力感との違いは?
自己肯定感が、自分という存在そのものを認められるかどうかという”姿勢”であるのに対し、「自己効力感」は、自分が目標や課題などを達成できる能力を持っていると思える”感覚”のことをさします。
つまり、課題に対して「この課題はしっかり対応できる」「この目標はやり遂げられる」と思えることが自己効力感です。自己肯定感のなかに、自己効力感が含まれているというイメージでよいでしょう。
自己肯定感が低いとどうなる?
自己肯定感が低いということは、自分に価値を感じていない状態だと言えます。
自分がまずいと思っている料理は他人におすすめできないのと同じで、この状態だと自信を持って企画書が書けなかったり、プレゼンテーションが自信なさげになってしまったりと、仕事のパフォーマンスが低下します。
そうなると、業務がうまく回らなくなってしまい、成果につながらず、人事評価に悪影響が出てしまうケースもあるでしょう。
自己肯定感が低い人の傾向とその原因
自己肯定感が低い人にはどのような傾向があるのでしょうか。ビジネスにおける自己肯定感が低い人の傾向と、その原因について解説します。ただし、以下に紹介する傾向に当てはまらない人もいるのでご注意ください。
傾向1:自信がなさそうにしている
自己肯定感が低い人は自信がなさそうに見える傾向がありますが、他人と比較していることが原因の一つだと考えられます。
例えば、「あの人は評価が上がったのに、自分は上がらない…」などのように、自分と他人を比べてしまい、自分には能力がないと決めつけてしまうといったことです。
傾向2:失敗や指摘されたことを引きずる
失敗や指摘されたことを長く引きずってしまい、ずっと落ち込んでいるという傾向も挙げられます。
この原因は、自分にとってネガティブな出来事や経験を何度も頭の中で繰り返す、いわゆる「ネガティブ反芻」をしてしまっているからでしょう。例えば、上司から「君、ミスが多いよ」と指摘されるとそのことが頭からずっと離れず、引きずってしまうのです。
傾向3:コミュニケーションを取ることに消極的
他人と積極的にコミュニケーションを取らないという傾向もありますが、これには職場の環境も大きく関わっていることがあります。
例えば批判・否定的な雰囲気がある職場だと、「何を言っても批判されるかも…」と発言することに心理的なブレーキがかかってしまうでしょう。
言いたいことが言えない環境に長くいると、自己肯定感が下がり、他人と積極的なコミュニケーションを取ることに苦手意識を持つようになってしまうのです。
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自己肯定感を高めるメリットは?
ビジネスにおいて、自己肯定感を高めると多くのメリットがあります。具体的に見ていきましょう。
自分の本来の長所に気づける
自己肯定感が低いと、何か一つうまくいかないだけで、ほかのことに目を向けられなくなってしまったり、自分と他人を比べて落ち込んでしまったりします。そうなると、本来の長所でさえ活かせなくなってしまうことも。
反対に、自己肯定感が高いと、他人と比べて落ち込むことが少なくなります。「人は人、自分は自分」のように切り替えて考えられるようになり、自分本来の長所にも気づくことができるのです。
同じようなミスの繰り返しを防げる
自己肯定感が低く、指摘されたことを引きずってしまうと、その指摘をしてきた相手に話しかけたり、相談したりするのが怖くなってしまうことも。そうなると、連携が取りづらくなり、同様のミスを繰り返すことにもつながるでしょう。
自己肯定感を高め、相手をむやみやたらに恐れることを避けられれば、このような悪循環を防ぐことができるのです。
会議などで堂々と発言できる
自己肯定感が高まると、自分の考えに価値を感じられ、会議やプレゼンなども堂々と発言できるようになります。これは、先述した「まずい料理」の例の反対で、おいしい料理は人におすすめしたくなるのと同じす。
自分に価値を感じている人の発言は魅力的に映るので、業務に取り組んでいる姿もハツラツとした印象を与え、周囲からの評価も上がっていく可能性があります。
社交的になりやすい
自分に価値があると認識することにより、自信を持てるようになります。
すると、「自分のことを知ってもらいたい!」という気持ちが生まれ、新規の取引先やはじめて会うタイプの人でも、特に物おじせず、コミュニケーションをとれるようになって人脈も広がっていくでしょう。
人を好きになれる
自己肯定感が高い人は、他人を認める姿勢である「他者肯定感」も高くなる傾向にあります。他者肯定感が高くなれば、その分他者を褒めたり、尊敬したりする行動が増えるため、人間関係にいい循環が生まれ、よりよい関係を構築できるようになるでしょう。
自己肯定感を高める方法
自己肯定感を高めるためには、どのようなことをすればよいのでしょうか。すぐに実践できる具体的な方法をご紹介します。
相手を尊敬する
他人と比較して勝ち負けに囚われるのではなく、相手を尊敬するようにしてみましょう。「こんなところが素晴らしいな」「こういう人になりたいな」など、相手を師匠のように受け止めることで他者肯定感が芽生えていきます。
他者肯定感と自己肯定感はプラスの相関関係にあるため、相手を尊敬できるようになれば、結果的に自己肯定感が高まりやすくなります。
「ポジティブ反芻」をする
先述したネガティブ反芻の反対である「ポジティブ反芻」をするのが効果的です。例えば「お客さまが喜んでくれた表情」や「業務を手伝った同僚のうれしそうな笑顔」「チームメンバーで笑って話した雑談」など、人間関係でよかった体験やポジティブな記憶を何度も繰り返して思い出してみましょう。すると、気持ちがポジティブになり、自己肯定感が高まっていきます。
悩みを一人で抱え込まない
悩みを一人で抱え込んでしまうと、ネガティブ思考になりやすく、その結果自己肯定感が低くなってしまうことがあります。
少しでも辛いことがあったら、素直に相談するといいでしょう。信頼している職場の人に悩みを打ち明けてみたり、家族や友人などの身近な人に相談してみるのがおすすめです。
また、自分が管理職である場合は、批判・否定的な職場にならないよう、業務量を調整して職場の雰囲気を変えたり、1on1ミーティングで各メンバーが日頃考えていることや不満に思っていることに耳を傾けるなど、コミュニケーションが活性化する環境を整えることが大切になります。
「良かったこと手帳」をつける
自分の強みや長所を研究する「ポジティブ心理学」という分野では、日々よかった出来事を記録していくと、幸福感や自己肯定感が高まるという研究結果があります。
例えば、「上司に少し褒められた」や「今日の面談で昇給が決まった!」など、業務でよかったことはもちろん、プライベートでうれしかったことなども含めて、ポジティブな経験を「良かったこと手帳」に記録していくといいでしょう。
自己肯定感が低い人にはどう接すればいい?
職場の同僚や部下など、自分以外にも自己肯定感の低い人、もしくは高めたい人がいるかもしれませんね。そんなとき、どのように接するべきでしょうか。そこで、ここからは自己肯定感の低い人との接し方を、STEPに分けて具体的に解説します。
なお、ここで紹介するようなスタンスで同僚や後輩などに接していると、あなた自身の他者肯定感が上がっていきます。他者肯定感が高まると自己肯定感も高まりやすくなるので、「情けは人の為ならず」とあるように、自分の自己肯定感を高めるためにも積極的に実践していきましょう。
STEP1:普段から声かけをする
自己肯定感の低い人には、普段から声かけをするといいでしょう。相手の目を見て「おはよう」「ありがとう」「おつかれ」などとしっかり笑顔で声をかけるだけで、相手は存在を認められたという気持ちになります。
まめに声かけをしていくことで、さらに「自分はここにいていいんだ」という気持ちになり、自己肯定感の土台もつくられていくでしょう。
STEP2:相手の話を傾聴する
相手の自己肯定感を高めようとすると、「とにかく相手を褒めなきゃ」と思う人も多いかもしれません。しかし、その前に相手のペースに合わせて、ゆっくりと話を聞くことが大切です。
その際、やわらかい表情や適度に相槌を打つなど、相手が話しやすい雰囲気づくりも意識しましょう。いきなりなんの文脈もなく相手を褒めても「自分の話を聞いてくれてないな」「これはお世辞だな」と捉えられてしまうケースもあります。
まずは、相手の話を傾聴するのがおすすめです。
STEP3:相手の努力を褒める
相手の話をしっかり理解した上で、「いつもあなたは頑張ってるよね」のように、相手が努力した部分を褒めてあげましょう。
例えば、相手が失敗や挫折をして落ち込んだという話をしたら、結果が出ていなかったとしても、頑張っていた部分を認めてあげるのがよいです。努力していたことを知っている人が周囲にいたというだけでも、自己肯定感が高まるきっかけになります。
自己肯定感はビジネスの根幹
ビジネスでは、自分から取引先やお客さまへ何かを提案・提供するというケースが多くあります。そのため、大もとである自分自身を肯定し、自分に価値があると認識する姿勢は、ビジネスで非常に重要だといっても過言ではありません。
他人と比べて一喜一憂したり、ネガティブなことを考えすぎたりするのをやめて、ありのままの自分を認めてあげましょう。そうすれば、自ずと自己肯定感が上がっていきます。
監修:ダイレクトコミュニケーション 代表取締役 川島達史
目白大学大学院心理学研究科を修了し、現在ではコミュニケーション講座の講師として、心理学や人間関係に関するワークを行う。専門は成人のソーシャルスキルが孤独感・対人不安に与える影響。普段は「コミュニケーション講座」の主催や、YouTubeチャンネル「ダイコミュ大学」による情報発信を行っている。
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