- 余裕がないとき、人はどんな行動や態度をとる?
- 余裕がない人の特徴は?
- 余裕がなくなる原因は?
- 余裕がないと仕事にどんな影響が出る?
- 余裕がない時の対処法は?
- 普段から心に余裕を持つ方法は?
- 余裕がない人が周りにいたらどう接すればいい?
- 「余裕がない…」となったら一度立ち止まって原因を考えよう
「いつも忙しそうで連絡がつきにくい」「相談しようとしたら後にしてくれと怒られた」という経験は、誰しもあるのではないでしょうか。もしくは自分自身に余裕がなく、周囲に対してイライラしてしまったり、ミスが多くなっていたりする場合もあるでしょう。
今回は、余裕がない人の特徴やその原因、対処法などについて、人材育成会社の代表取締役であり、多くのビジネスパーソンに実践的なアドバイスを行なっている高田貴久さんに伺いました。
余裕がないとき、人はどんな行動や態度をとる?
「余裕」は、時間の余裕を表す「時間的余裕」と、心の余裕を表す「心理的余裕」の2つに分けられます。ここでは、余裕がない人がどのような行動や態度をとるのか、主な例を紹介します。
周囲の人とのコミュニケーションがおろそかになる
時間的余裕がない場合は、周囲とのコミュニケーションがおろそかになることが多いです。「メールの返信や折り返しの電話対応が遅れがち」「上司への報連相ができていない」「いつも情報の共有が期日の直前になる」といったことが続くと、仕事の進行に支障が出ることもあるでしょう。
場当たり的な対応をしがち
これも時間的余裕がない場合に該当しますが、焦りから視野が狭くなってしまい、その場しのぎの判断や場当たり的な対応をしがちになります。「何を相談しても『それでいいよ』『任せる』で済まされた」「その場を乗り切るために適当な言い訳をしてしまった」という経験がある人も多いのではないでしょうか。そうした対応によって、一時的に状況を切り抜けることができても、長期的に見るとマイナスの影響が大きいという場合もあります。
機嫌が悪いことが多い
心理的余裕がない人は、周囲に気を遣わせるような態度をとりがちです。例えば、いつも忙しそうな上司や先輩の気分にムラがあり、理不尽に怒られた経験がある人も多いのではないでしょうか。反対に、自分自身に余裕がなく、すぐにイライラしてしまうこともあるでしょう。
自分本位な行動をとりがち
心理的余裕がないと、自分のことでいっぱいいっぱいになり、周囲への配慮に欠けた自分本位の行動・態度をとりがちになります。例えば、他人の進捗やペースを考慮せずに、急いで自分のやりたいことを進めたり、自分の都合で予定を変更したりして、周囲を振り回してしまうことがあるかもしれません。
余裕がない人の特徴は?
ビジネスにおいて、余裕がなくなりがちな人にはいくつかの特徴があります。具体的にみていきましょう。
スケジュール管理がうまくできない人
余裕がない人は、「いつまでに何をすればいいのか」というスケジュール管理が苦手な傾向にあります。「今期の目標達成のためには今月何件契約を取るべきか」「そのためにはいつまでに提案するとよいのか」などの段取りができなかったり、想定外の出来事が起きた際に柔軟に軌道修正ができなかったりと、進行管理がうまくいかないことでスケジュールが後ろ倒しになってしまい、結果的に余裕がなくなってしまうのです。
同じミスを何度も繰り返す人
以前と同じ失敗を繰り返すというように、失敗を振り返っていないというのも余裕がない人の特徴といえます。例えば、クライアントへ提出する企画書で、その宛名を何度も間違えているのに「メールで送付する前に宛名を確認する」ということを学習せず、失敗を繰り返してしまうケースなどです。このような場合、毎回謝罪メールを送るなど本来する必要のなかった対応が増えてしまうことになるので、結果、余裕がなくなってしまうのです。
プライドが高い人
プライドが高い人は人の意見をあまり聞かない傾向があるため、指摘されたことを素直に受け入れられず、余裕がなくなってしまうことがあります。例えば、プレゼン資料のつくり方について上長に指摘された際、素直に意見を受け入れられず「自分はこのやり方でやるので」と自己流を優先してしまった結果、提出の直前に必要な要件とのずれが発生し、余裕がなくなってしまうケースなどが挙げられます。
他人と比較しすぎる人
他人と比較しすぎる人は余裕がなくなってしまいがちです。特に負けず嫌いだったり、自己肯定感が低かったりする性格では、同僚や部下、もしくは同年代の活躍に対して、過剰に意識してしまう傾向にあります。そうなると、劣等感を感じる気持ちが強くなり、心に余裕がなくなってしまいます。
何事にも全力な人
一見、何事にも全力な人は、よい印象を受けるかもしれません。しかし、何事にも全力ということは、力のいれどころ・抜きどころを判断できないともいえます。その結果、すべてを全力でやってしまうことで余裕がなくなりがちな傾向にあるのです。
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余裕がなくなる原因は?
余裕がなくなってしまう原因には何があるのでしょうか。時間的・心理的の2つの側面から解説します。
時間的余裕がなくなってしまう原因
時間的余裕がなくなってしまうのは、ビジネスにおける業務のそれぞれの段階で、問題解決ができていないことが大きな原因といえます。例えば、業務の進行に遅れが出てしまった場合、「なぜ遅れたのか」その原因を検証する必要があり、場当たり的な対処を繰り返していてもきりがありません。そのため、問題が何であるかを見定め、どこに余裕がなくなった問題があったのか、その原因は何か、今後どのように対策するかをしっかりと考え、実行計画に落とすことが大切です。
心理的余裕がなくなってしまう原因
心理的余裕がなくなってしまうのは、周囲と比較してしまい「自分は自分、他人は他人」という多様性を理解していないことが原因といえます。割り切った理解ができていれば、他人と自分を比較して無用な優越感や劣等感を持つこともありません。例え相手がどんな行動をとったとしても「相手の立場に立てば、そういう考え方もあるだろう」と理解でき、「自分は頑張ったのに」といった被害者意識を持つこともなくなります。また、人生の目的や仕事の目的は一つではないと考えられるようになれば無理に自分を追い込まなくなるので、余裕をなくすことも少なくなるでしょう。
余裕がないと仕事にどんな影響が出る?
余裕がなくなると、人間関係だけでなく、目の前の仕事や将来のキャリアにまで影響が出てしまうことも考えられます。考えられる影響についてそれぞれ見ていきましょう。
やり直しがきかなくなる
時間的余裕がないと、やり直しがきかなくなってしまいます。例えば営業の場合、顧客のために用意した提案が的外れであると判明しても、ギリギリのスケジュールではやり直す時間がありません。その結果、営業成績をあげられないばかりか、状況によっては顧客からの信頼を失ってしまうケースもあるでしょう。
最低限のことしかできなくなる
時間的余裕がないと、最低限の目先のことしかできなくなってしまいます。例えば、時間がなく、過去の企画書を使いまわしたり、営業で顧客への+αの提案が準備できずいつもと同じ内容になったりすることが挙げられます。時間がないあまり、今日明日を乗り越えることに必死になり、仕事が雑になるだけでなく、スキルの向上に目が向かなくなってしまいます。
無用なあつれきやトラブルを生む
心理的余裕がなくなると、仕事相手に対して、知らず知らずのうちに嫌な顔をしたり、刺々しい発言をしたりしてしまいます。そのため、例えばミスをした後輩をきつい言葉でとがめるなど、自分が意図していなかったとしても、無用なあつれきやトラブルを生み、仕事が円滑に進まなくなってしまうリスクもあるでしょう。最悪の場合、ハラスメントなどの社内問題に発展しないとも限りません。
自分の評価が下がることにもつながる
心理的余裕がなく、周囲に気を遣わせるような態度をとっていると、社内での評価が下がることにもつながります。例えば、声をかけても嫌そうな顔で「今は話しかけないでくれ」という態度をいつもとっていると、「態度が悪い人」「一緒に仕事をしたくない人」というような良くないイメージが定着してしまいます。ビジネスでは社内外の多くの人とやりとりする機会があるため、印象が悪いままでは、仕事の成果にも影響が出てしまう可能性が十分考えられるのです。
チームの連携をおろそかにしてしまうリスクも
時間的・心理的余裕のどちらもない場合、チームの連携をおろそかにしてしまうリスクもあります。自分の余裕がない状況のことばかりに気がいってしまい、その結果、一緒に働くメンバーの状況が掴めなくなってしまいます。チームを組んで企画やプロジェクトに取り組む上で、最も重要となるコミュニケーションをおろそかにすると、マネジメントスキルやフォロースキルなどを培う機会損失にもつながってしまうでしょう。
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余裕がない時の対処法は?
余裕をなくしてしまいがちな場合、どのように対処すれば改善できるのでしょうか。具体的な対処法について解説します。
仕事のゴール(成果)を明確にする
仕事のゴールを曖昧にしておくと、どれだけ頑張っても成果に結びつかず、時間と体力ばかり浪費してしまいます。例えば営業の場合、毎日がむしゃらに業務に取り組むのではなく、売上目標から逆算して「今月は月の半ばまでに◯万円の売上をめざそう」とするなど、自分はいつまでに、どのような成果を出さなければならないのか、明確に認識しておくのがおすすめです。ゴールを明確にできれば、その分スケジュール管理がしやすくなるので、時間的にも心理的にも余裕が生まれるでしょう。
いきなり行動せず「なぜ」を考える
成果が出ていなくて余裕のない場合、思いつきの対策をむやみにやっても、うまくいく確率は低いです。例えば、営業の成果が上がらない時に、とにかく行き当たりばったりで飛び込み営業をかけても、なかなか結果には結びつかないでしょう。このような場合、提案内容を再考してみるなど、なぜうまくいかないのかをしっかりと考え、「急がば回れ」で対応していく必要があるのです。
抱えているタスクを「優先度・緊急度マトリックス」で仕分ける
タスクを整理すると、効率的に処理できるというメリットがあります。まず、自分が抱えているすべてのタスクを洗い出したら、それぞれ優先度と緊急度の高さで仕分けましょう。それができたら、まずは「①優先度が高く・緊急度も高い仕事」に取りかかり、その次に「②優先度が低く・緊急度は高い」「③優先度が高く・緊急度が低い」の順で取り組んでいくのがおすすめです。
マトリックスをつくる際には、長い目で見て、その仕事の影響度などを考慮した上で仕分けるようにしましょう。
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「他部署やチームで動く必要がある仕事」から先に着手する
他部署や外部パートナーが関わる仕事は、自分でコントロールできないことも多いため、業務遅延の原因となりやすいです。
他部署や外部パートナーと合同で進めるプロジェクトの場合、1人で進められる業務は多くありません。例えばそこで、企画案に行き詰まった場合には、いつまでも自分だけで試行錯誤するのではなく、他部署の人や外部パートナーの力を借りて企画案を出し合うなど、お互いに協力していく方がより早く進められます。
しかし、他人が関わる分、相手の都合による遅延も考えられます。そのため、他人に動いてもらうものは相手の都合も考慮して早めに動くことが望ましいです。また、ほかに協力を仰ぐような仕事の場合は、その進捗をよく確認するなどを心がけると、進行に余裕を生むこともできるでしょう。
「長期的な視点」に切り替えてみる
例えば、今月の売上目標のノルマが達成できていないことによって心理的余裕がなくなるといった場合、焦ったりイライラしたりして目先のことで手一杯になってしまうだけではなく、仕事に対するモチベーションも下がってしまいます。こういった場合はいったん年間の売り上げ目標のことを考え、「今月は厳しいけど、その分来月頑張って挽回しよう」というように中長期的な視点に切り替えると、心理的余裕が生まれるようになります。
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普段から心に余裕を持つ方法は?
忙しくても普段から心に余裕を持つためには、どのようなことを心がけると良いのでしょうか。ここでは主な方法をご紹介します。
自分の時間を確保する
忙しく、休む暇もない日々が続くと、心に余裕がなくなりがちです。仕事とプライベートのメリハリをつけ、しっかりと自分の時間を確保するようにしましょう。タスクが多すぎる場合は周囲にサポートをお願いする、休日や終業後は仕事の連絡に対応しないと決めるなどの方法も有効です。
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自分なりのストレス解消方法を持つ
普段から心に余裕を持つためには、気持ちをリセットする自分なりの方法を持っておくことが大切です。特に心の状態を安定させたい場合は、マインドフルネスという瞑想(めいそう)のエクササイズを習慣にするのもオススメ。現在抱えている焦りや不安、悩みから一時的に離れ、「今、この瞬間」に集中することで、自然と余裕が生まれやすくなります。
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困ったら一人で抱え込む前に相談する
悩みやトラブルを一人で抱え込んでしまうと、時間的にも心理的にも余裕がなくなります。自分で解決するのが難しそうな問題が生じた場合は、早い段階で同僚や上司など信頼できる人に相談しましょう。悩みを他人に共有することで気持ちが軽くなりますし、周囲のアドバイスやサポートによって解決策が見つかることも多いです。
余裕がない人が周りにいたらどう接すればいい?
もし、職場の上司や同僚、部下に余裕のない様子が見受けられたら、どうすればよいでしょうか。
余裕が生まれるタイミングを待つ
誰しも余裕が生まれるタイミングはあります。例えば、ある案件が終わり、次の案件がはじまるまでの数日間などです。その余裕が生まれるタイミングを待って接すると、相手も嫌な態度なく相談やフィードバックに対応してくれるでしょう。ただし、急ぎの案件の場合は、待ったせいで機会を損失してしまう恐れがあるため、この方法は限定的といえます。
余裕が生まれるように協力をする
例えば、余裕のない人が多忙で業務量が多い場合、その人が抱えている仕事を手伝ったり、アドバイスすることで問題解決を手伝ってあげたりなどすると、その人に時間的・心理的余裕が生まれます。信頼関係が構築できる上、その人の集中力が高まり、仕事もはかどるようになるでしょう。
業務量を調整してもらうように動く
余裕がない人は、抱えている業務量が多すぎる、人員が少なすぎるなど、本人でコントロールできる範囲を超えた部分に原因があるケースもあります。一緒に働いている人が、余裕がない状況に陥っていることは、長い目で見れば会社にとってもよくない状況です。そのため、業務量が多い場合は、上司に相談するなどして、業務量を調整してもらえるよう働きかけることも大切です。
「余裕がない…」となったら一度立ち止まって原因を考えよう
余裕がない状態に誰しも陥る可能性があります。その際には、いったん立ち止まってタスクの優先づけをし、段取りをしなおしたり、何が原因かを探って問題解決をしたりすることで対処し、余裕を生むために切り替えて行動するようにしましょう。
監修:株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズ 代表取締役CEO 高田貴久
東京大学理科1類中退・京都大学法学部卒業後、戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトル(ジャパン)でプロジェクトリーダー・教育担当・採用担当を務める。その後マブチモーター株式会社へ転職し、経営企画部員・事業基盤改革推進本部 本部長補佐として改革を推進。ボストン・コンサルティング・グループを経て、2006年に起業。現在は約100名の社員とともにトヨタ自動車をはじめとした幅広い企業で人材育成を手掛けている。
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