ビジネスにおける企画力とは?高め方と具体的な企画立案フローを紹介

企画力とは、課題解決のために必要なスキルです。本記事では、専門家監修による企画力の本質から高め方、具体的な企画立案方法までを解説します。企画力は天性のもののように見えて、実は誰でも鍛えて身につけられる能力なのです。

ビジネスにおける企画力とは?高め方と具体的な企画立案フローを紹介

上司から「次の会議までにアイデアを出しておいてね」「企画書を作ってみて」と言われて困ったことはありませんか? どうすれば企画力は身につくのでしょうか。そこで今回は、企画力の概要や高め方などについて、企業や自治体向けのワークショップを企画し、ファシリテーターとして活躍する北野清晃さんに伺った話を基に解説します。

企画力とは?その概要を解説

企画力とは?その概要を解説

企画力とは、一言でいうと「何が課題なのかを見極めて、解決策を導き出す力」です。企画力について詳しく解説する前に、そもそも「企画」とは何かについて見てみましょう。

そもそも「企画」とは何のこと?

企画とは「考える」「まとめる」「伝える」「実行する」という、仕事で最も重要となる創造的プロセスそのものといえます。

新たな取り組みを始める際に、どのようなビジョンやゴールを描き、どのような道筋や課題を設定するのか。これをゼロベースで考えて、デザインしていくプロセスが企画なのです。

企画と聞くと「アイデアを発想すること」「企画書をキレイにまとめること」などと思う方もいるかもしれません。しかし、これらは企画のごく一部。

斬新な発想で生まれたアイデアもキレイな企画書も、企画が通って初めて価値が生まれるのです。

ビジネスにおける「企画力」のメリットは?

ビジネスにおいて、企画力にはあらゆる場面でメリットがあります。特に、次のように規模の大小は問わず「新しいこと」をするときには大いに役立ちます。

企画力は成果の質やプレゼンの納得性を高め、より価値のある意思決定につながることでしょう。

<企画力が役立つ場面の一例>
・新規事業:構想やビジョンから具体的な新製品・サービスへと展開するとき
・営業:お客さまの問題や課題を整理し、新しい解決策を提案するとき
・職場:コミュニケーションを図る新たな取り組みを試すとき
・自分の仕事:仕事の進め方を刷新するとき

企画力が高い人の特徴

企画力が高い人の特徴

企画力を高めるには、どうすれば良いのでしょうか。まずは企画力が高い人の特徴を見ていきましょう。

豊かな発想力(直感的思考)を持っている人

「楽しむ・遊ぶ」感覚で発想できる人は、企画で良いスタートが切れます。

自分の経験や感性から生まれる直感的な発想が、「論理的にはこうすべきだ」「トレンドに従うなら、こちらが正解だ」というような保守的な思考の壁を超えるきっかけになり得るからです。

また、直感的思考からスタートした企画は、「その人らしさ」や「本人のやりがい」にもつながりやすくなります。

<当てはまるのはこんな人>
・空気を読まずに突飛なアイデアを出せる人
・周りが笑うようなアイデアを考える人
・他者のアイデアに便乗できる人、など。

確かな検証力(論理的思考)を持っている人

前述したとおり、企画に直観的発想・思考は役立ちますが、それだけでは難しい面もあります。本人やチームが「面白いアイデアだしきっと大丈夫!」と思うのは過信かもしれません。

企画力が高い人は、複数のアイデアを論理的に分類し、メリットやデメリット、ベネフィットやリスクを客観的に把握できます。そうした検証力が、企画の失敗確率を減らします。

<当てはまるのはこんな人>
・発想したアイデアを言語化できる人
・複数のアイデアを論理的に分類して選択できる人
・選択したアイデアのリスクを客観的に把握できる人、など。

自分の価値観を信じて決断できる人

「絶対に成功する企画」は存在しません。リスクを徹底的に分析し、企画を精緻に作り込んでも、不確実性はゼロにはならないのです。

最終的には覚悟と勇気を持って、未知の世界へ飛び出すことが必要です。そのあとに自分を支えてくれるのは、自分の価値観や人生哲学。

その軸がしっかりとしていれば、たとえ困難が待ち受けていても粘り強く続けられ、失敗したとしても後悔なく再スタートできるでしょう。

<当てはまるのはこんな人>
・自分の価値観や人生哲学を持っている人
・不確実なことがある前提で勇気を持って決断できる人
・決断した後も粘り強く続けられる人、など。

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企画力を高める方法は?

企画力を高める方法は?

ここまで、企画力の高い人の特徴について「豊かな発想力」「確かな検証力」「自分の価値観を信じる」という3つを挙げてきました。では、それぞれの力を高めるおすすめの方法をご紹介します。

豊かな発想力(直感的思考)を養うには

自由な発想を妨げるのは、「当たり前」「トレンド」「思い込み」といった無意識に陥っている「思考の枠」かもしれません。

思考の枠を外すためにおすすめなのは、好奇心を持って価値観や思考が異なる人とどんどん話すことです。

人とのコミュニケーションの目的は「仲良くなること」ではなく、「思考の枠を外して自分の可能性を広げる」ことと捉えてみましょう。そうすれば、ユニークな考え方ができるようになり、豊かな発想力を養うことができます。

確かな検証力(論理的思考)をつけるには

論理的思考力を鍛えるには、まず「言葉」の面から取り組んでみましょう。何か新しい体験をしたとき、「自分にとって何がどう面白かったのか」を言語化してみるのがおすすめです。

仕事のタスクを「分類」するのも効果的です。

「To Do リストを作って見える化する」「優先順位をつける」などはすべて「分類」にあたります。1日に何十回としている「分類」の精度が上がると、仕事の質も上がってくるでしょう。

この「分類」の精度を上げておくと、「意思決定」の質が上がります。

「分類」によって考えられる選択肢を洗い出し、それぞれのメリット・デメリットを整理してから選ぶと、悔いのない意思決定につながります。

自分の価値観に自信を持つには

普段から「どんな時に自分はワクワクするか? 頑張れるか?」を意識し、自分自身の「モチベーションの源泉」を探求してみましょう。面白いと思うものは実際にやってみるのがおすすめです。

モチベーションの源泉がわかってくると、次第に自分の価値観に自信を持てるようになります。すると、チャンスが訪れた瞬間にすぐつかめるように待ち構えておけるようになるでしょう。

例えば、「こういうコンテストがあれば応募しよう」とアイデアを温めながら待ち構えていると、チャンスが来たときいち早く手を挙げられます。

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具体的な企画立案のフロー

具体的な企画立案のフロー

ここまで、企画力を発揮するための下地について解説してきました。次は、実際に企画を立てる際の手順を確認しましょう。

直感的思考と論理的思考の両面からアプローチして、最終的に統合するのがコツです。

ステップ① テーマ設定

まずは前提として、企画のテーマを明確にしておきます。

ステップ② 課題を設定する(論理的アプローチ)

問題の背景にある原因を洗い出し、論理的に分類します。すると根本的な原因(真因)が見つかり、課題として設定できます。

真因をはじめ、ここで深掘りしたさまざまな原因は、あとでプレゼンするときにも企画案を支える根拠となるでしょう。

ステップ③ 解決策を具体化(直感的アプローチ)

課題を解決するためのアイデアを直感的に発想していきます。実行に移したらどうなるかを考えながら、アイデアを具体化していきましょう。

プレゼン時には、ここで具体化した解決策が企画案の「代替案」として、質疑応答の素材となります。

ステップ④ 企画案にまとめる(論理的アプローチ)

多数のアイデアから解決策を選び、企画案にまとめていきます。

解決策を選ぶときは「本当に課題を解決できるか」「必要な人材や予算は整うか」「解決策を実行した場合、何か問題は起きないか」などの点で検討を重ねましょう。

以上が企画立案のフローです。イメージがつかめてきたでしょうか?

ほかにも、直感的アプローチから始めるやり方もあります。

例えば、近年注目されている発想法「デザイン思考」による企画立案の場合は、先にユーザーの行動観察を行うなど直感的アプローチからスタートします。

これらの方法でも「論理」と「直感」を往復しながら思考を統合し、最終的な企画立案へと進めていきます。

企画立案に役立つフレームワーク

企画立案に役立つフレームワーク

企画立案のフレームワークのうち、特に発想(直感的思考)に役立つ方法を5つご紹介します。発想の方法は「自由発想法」と「強制発想法」の2つに大別されます。

これからご紹介するABCの方法が「自由発想法」で、DEの方法が「強制発想法」です。

実務では、まず自由発想法でアイデアを出し切ったうえで、さらに強制発想法で「思考の枠」を外し、抜け落ちていたアイデアを探るのがおすすめです。

A:ブレインストーミング

通称「ブレスト」。自由奔放な発想からお互いのブレイン(頭脳)を刺激し合い、創造的なアイデアを生み出します。

付箋やホワイトボードを使ってアイデアを書き出し、チームでそれを眺めながら、さらにアイデアを増やしていくやり方が主流です。

実践する際には、「批判禁止(良し悪しの判断は後で)」「自由奔放(突飛なアイデアもOK)」「量を重視(質より量)」「統合改善(便乗、アレンジOK)」の4原則を守るようにしましょう。

B:KJ法

一般的には「付箋ワーク」として理解されている方法です。付箋などに断片的な情報を自由に記入し、並べ替えたり、グループ化したりすることで情報を整理します。

ビジネスでのアイデア整理法としてだけではなく、まちづくりの合意形成の手法としても活用されています。

ただし、開発者の川喜田二郎氏が考案した「本来のKJ法」はこれと少し異なります。本来のKJ法は論理的アプローチと直感的アプローチを往復するものですが、ここでは割愛します。

C:マインドマップ

マインドマップ

アイデアの描写方法の一つです。

人間の自然で自由な思考プロセスを元に、マップを描きます。中心に置くのは、テーマとなる概念。そこから脳構造のように放射状にキーワードやイメージを広げていきます。

マインドマップの描画法には考案者の重要な意図があるので、書籍などでしっかり作法を学んでから行うのがおすすめです。

「いわゆる樹形図型のノート法」というぼんやりとしたイメージのまま使ってしまうと、本来の価値が発揮されにくいので注意しましょう。

D:オズボーンのチェックリスト

強制発想法の代表的な方法の一つです。

9つの視点にもとづいた問いに答え、「思考の枠」を広げてアイデアを発想していきます。9つの視点とは「転用」「応用」「変更」「拡大」「縮小」「代用」「再配置」「逆転」「結合」です。

例えば、スーパーマーケットで「ビッグ〜」「ミニ〜」「〜コラボ」といった商品を見かけることがあるでしょう。これらは既存商品をそれぞれ「拡大」「縮小」「結合」したものです。

既存商品を少し変えるだけでヒット商品が生まれることがあるのです。シンプルですが非常に実用的な発想法だといえるでしょう。

E:マンダラート

マンダラートは、メジャーリーガーの大谷翔平選手が高校1年生のときに描いたことで有名です。

仏教の曼荼羅模様に由来する方法で、「曼荼羅チャート」「マンダラシート」「目標達成シート」とも呼ばれます。

やり方は、3×3の9マスを描き、マス目の中心にテーマ(課題や夢)を書き込みます。そして、周りの8マスに課題達成に関連するワードを記入するというもの。

さらに、周りの8マスに書いた関連ワードをそれぞれ転記し、アイデアや思考を深めていきます。

漠然としたテーマでも、マスに言葉を埋めていくことで発想がブレイクダウンしていくのがマンダラートの特徴です。

多少の不安はあっても、行きたい道へ。自ら未来を切り拓こう

企画を考えるとき、心の中はどんな気持ちでしょうか。

「ポジティブなワクワクした気持ち(期待)」と「ネガティブなドキドキした気持ち(不安)」がおよそ半分ずつ同居していれば、それは挑戦する価値がある企画といえそうです。

期待だけが大きいと、リスクの検証不足かもしれません。逆に、不安だけが大きい企画は、勇気を出して中止した方が良いかもしれません。

企画には期待と不安が必ずあります。勇気を持って一歩を踏み出し、自ら未来を切り拓きましょう。

監修:株式会社北野商会 代表取締役 北野清晃
ワークショップデザイン研究所 代表
組織の学校 校長
金沢大学大学院を修了後、都市計画コンサル会社に入社。その後、人材育成や組織開発を支援する公益法人にて、研修やワークショップの企画業務に従事する。退職後は、実家の事業承継に取り組みながら、京都大学大学院情報学研究科博士課程にて組織デザイン、ワークショップデザインの研究に取り組み、博士号を取得する。現在は、人・組織・事業に関する実践的知識を学ぶ場づくりを目指し、企業や自治体の研修講師、各種ワークショップのファシリテーターとして活躍している。著書に『組織論から考えるワークショップデザイン』など。

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