進捗管理の重要性とは?実践方法やメリット、成功させるコツを解説

ビジネスにおける進捗管理とは、仕事の計画と実行の進み具合を照らし合わせて確認することを指します。この記事では専門家の話を基に、代表的な進捗管理の方法5つと、メリット、成功させるコツなどを解説します。

進捗管理の重要性とは? 実践方法やメリット、成功させるコツを解説

「進捗管理」はリーダーや管理職の仕事というイメージを持っていませんか? しかし、早い段階から進捗管理について理解を深めておくことで自分に任された仕事の解像度が上がり、プロジェクトの全体像をつかめるようになります。今回は、進捗管理の方法やメリット、成功のコツなどについて、社会保険労務士でキャリアコンサルタントの村井真子さんに伺った話を基に解説します。

進捗管理とは?その概要を解説

進捗管理とは? その概要を解説

「進捗管理」には主に2つの意味が含まれています。1つは、計画と実行の進み具合を照らし合わせて確認すること。もう1つは、そうした確認の結果から「どうしてズレが生じたのか」と原因を解明し、計画を改善する(PDCAサイクルを回す)ことです。どちらも大切ですが、特に2つ目はビジネスに直接的なインパクトがあるため、より重要度が高いと考えられます。

ビジネスで進捗管理が必要な理由は?

ビジネスで進捗管理が必要な理由は?

どのような仕事でも進捗管理は重要視されています。その理由を見ていきましょう。

遅延や課題が早期発見・解消できる

プロジェクトを進める中で、想定外の遅延や思わぬトラブルは生じてしまうものです。しかし、進捗管理を適切に行っておくことで各工程の遅延や課題に早い段階で気づき、余裕を持って対処できる可能性が高まります。また、遅延に気づくことすら遅れて、「とにかく間に合わせよう!」と慌てて作業を進めてしまい、結果的に成果物のクオリティーが低下する、という事態も防げます。

納期を守るため

商品やサービスを納める期限を守ることは、顧客との信頼関係を築くうえで欠かせません。そのため、新たなプロジェクトに取りかかる際には進捗管理を徹底し、効率的に進めていきたいところです。特にチームで担当するプロジェクトは全体の進捗管理が不可欠。体制を整えておけば、あるタスクで遅延が発生してもほかのタスクの担当者がカバーする、といった連携がしやすくなります。

工程の抜け・漏れの確認と対処ができる

1つのプロジェクトを完遂させるまでにはいくつかの工程が存在します。「どのようなタスクが必要なのか」「どのタスクから優先順位をつけるべきか」といった疑問は、進捗管理を行うことで解消できるでしょう。必要な工程の抜け・漏れを防ぎ、逆に不要な工程はカットして時間の浪費をなくすことができます。

各工程・担当者の進捗を一元管理するため

プロジェクトの工程をチーム内で分担する場合、誰かが一元的に進捗管理をすることがよくあります。これは納期を守るため、そしてトラブル発生時の状況把握、スケジュール調整、人員手配などをスムーズに行うためです。一元的に管理すれば情報の混乱が起きにくく、チームのメンバー全員に正しく状況を共有できます。

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代表的な進捗管理の方法とは?

代表的な進捗管理の方法とは?

ここからは進捗管理の実践方法として、代表的な5つの方法をご紹介します。どの方法を選ぶのかも大事ですが、チームで取り組むプロジェクトで活用する場合は共有のしやすさも重要なポイントです。作成した図表やツールがメンバー間で共有され、リアルタイムに管理できる状態になるよう意識すると良いでしょう。

作業分解構成図(WBS)

作業分解構成図(WBS)

WBSとは「Work(作業) Breakdown(分解) Structure(構造化)」の略。プロジェクトの各工程を大きいものから小さいものへと分解して管理しやすくする図のことです。

例えば、「ECサイト会員限定のセールを実施」というプロジェクトなら、その実現のために「特設サイトを制作する」「商品の割引率を決める」「会員に告知する」などとタスクを細かく分けていきます。こうすると、具体的に何をすれば良いのか各担当者が把握しやすくなるうえ、タスクの作業量を均一にしやすくなります。

ガントチャート

ガントチャート

ガントチャートとは、「スケジュール表」「進行表」とも呼ばれるものです。棒グラフを使った表の形式で、縦軸にはタスク名や担当者名など、横軸には時間や進捗率などの項目が並びます。進捗管理の全体を「見える化」できるのが大きな利点。ただし、進捗に対するコメントやメッセージを記入するには向いていないため、コミュニケーションには別のツールを併用する必要があります。

作業分解構成図とよく混同されることがありますが、作業分解構成図はプロジェクトを構成する項目のリストアップが目的、ガントチャートはスケジュールを把握するのが目的、という違いがあります。

そのため、作業分解構成図が先、ガントチャートが後、という順番で作成するとタスクの抜け漏れがなくなるのでおすすめです。

PERT(パート)図

PERT(パート)図

PERT図は「Program Evaluation and Review Technique」の略。プロジェクトに必要なタスクを挙げていき、タスクごとの所要時間や前後関係などをネットワーク図にするものです。「パート」「アローダイアグラム」とも呼ばれます。

PERT図を作ると、プロジェクト全体に必要な期間の算出や、あらかじめ想定していた期間の短縮・延長の検討などがしやすくなります。また、タスクごとに最遅完了時刻(デッドライン)を設定することで、複数のタスクを同時進行するときの優先順位づけにも利用できます。

フローチャート

フローチャート

フローチャートとは、業務の流れなどを分かりやすく整理した手順図のこと。主に長方形やひし形の図形、矢印を用いたシンプルな図です。大規模なプロジェクトや複雑な製造プロセス、システム処理などで活用されます。プロジェクト全体の流れが見えるので、タスクの実行前に体制を整えたり、問題が起こったときにはフローチャートを基に原因を解明したりすることに役立ちします。

進捗管理ツール

一般的にタスク管理ツール、プロジェクト管理ツールと呼ばれるサービスの総称です。昨今、DX 化が進んでいることを背景に、進捗管理に特化したさまざまなツールが開発されています。

クラウド上で操作できるツールが多く、チームのメンバーが進捗状況や変更などをリアルタイムに確認できるのがメリットです。ツールによって、To Doリスト機能、チーム別のタスク管理機能、ガントチャート機能、メッセージ機能などの仕様が異なります。

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進捗管理をするメリットは?

進捗管理をするメリットは?

進捗管理をするとプロジェクト全体に良い影響があることが分かりました。では、個人単位ではどのようなメリットがあるのでしょうか。主なものをご紹介します。

自分の仕事のPDCAサイクルが上がる

PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取ったフレームワークのこと。プロジェクト全体はもちろん、個人単位の仕事にも効果を発揮します。各々が進捗管理をすることで、計画の進み具合やつまずいたところなどを可視化でき、その改善まで考えるのを繰り返すことで、生産性やクオリティーのアップにつなげられます。

今すべきことが分かり、優先順位がつけられる

まず「自分が与えられている仕事は何か」を理解でき、工程の進み具合によって優先順位を見直すといった仕事の進め方ができるようになります。例えば、複数のプロジェクトを同時に進めるとき、「納期の早いほうから先に着手する」「工数のかかるほうから着手する」などと進捗度合いで柔軟な対応ができます。

ビジネス全体を効率化する視点が持てる

ビジネスにおいて、一人ひとりが仕事を受け持ち、それらが有機的に結びついていくことが重要です。1つのタスクだけで考えるのではなく進捗管理の視点を持つと、それぞれの仕事の重複部分や無駄を発見しやすくなるでしょう。また、改善がしやすくなるのでビジネス全体の効率化にもつながります。

進捗管理でよくある失敗とは?

進捗管理でよくある失敗とは?

進捗管理を行ったものの、うまくいかないケースがあります。やみくもに進捗管理を始めてしまう前に、次に挙げた「進捗管理でよくある失敗」をあらかじめチェックして未然に防ぎましょう。

工数を分解し切れず、スケジュールが破綻してしまう

前述した「進捗管理の方法」の「作業分解構成図(WBS)」や「PERT図」で解説したように、プロジェクトにどのような工程や工数がどれだけあるのかを把握することが進捗管理の第一歩です。しかし、適切に工数を分解し切れないことがよくあります。その原因は、仕事に対する知識や経験の不足、理解の浅さがほとんど。これにより、見逃していたタスクを追加して工数が増え、それに伴ってスケジュールが後ろ倒しになるなどの悪影響が出てしまうのです。

余裕のないスケジュールを組んでしまう

プロジェクトを進めていくと、予期しない事態が発生することがあります。「そもそも所要時間の見込みが甘かった!」とあとから気づくこともあるでしょう。もし、余裕のないスケジュールを組んでしまうと、進捗管理によって計画と実行のズレに気づいても改善する時間がなく、結果としてクオリティーに影響が出る可能性があります。

各担当者に進捗が共有されていない

複数の部署を横断してプロジェクトを進める場合、関わる全員に進捗を確認する方法が周知されている必要があります。これができていないと、ある部署では余裕を持ってタスクを進めているのに、ほかのある部署では気がつかずに納期ギリギリに着手する、といったアンバランスな状況を生んでしまいます。

進捗管理をうまく行うコツは?

進捗管理をうまく行うコツは?

では、進捗管理をうまく行うためにはどうすれば良いのでしょうか。まずは次の4つのコツを押さえましょう。

工程を細かく分け、作業粒度をそろえる

プロジェクト完了までの所要時間や優先順位を考えるために、各工程をできる限り細分化してみましょう。ただし、細かすぎる工程表作成および進捗管理は、メンバーへの共有がしにくかったり、実行に移す際に動きにくかったりする可能性があります。

そこで重要なのが、必要な作業工程の分解粒度をそろえること。作業にかかる時間または工数を、各工程で同程度にそろえることで、管理精度を高めることができるからです。

その一つの指標として「8/80ルール」があります。これは、工程ごとの作業時間の最小単位を、「8時間(1日)以上かつ80時間(2週間)未満にそろえる」というもの。このようなルールも活用しながら、粒度をそろえることを意識すると良いでしょう。

工程ごとの責任者と作業者を明確に決める

メンバーの報告を集約したり、全体の進捗管理をしたりするためには、各工程における責任者が必要です。作業するメンバーは、工程の責任者が自ら選ぶのも良いかもしれません。

ここで特に重要なのは“責任者が誰なのか”を、作業をするメンバーが知っている状態にすることです。責任の所在を明確にできるだけでなく、トラブル発生時に誰に判断を仰ぐべきかが分かるので、緊急時の混乱を抑えやすくなります。しっかり周知するように心がけましょう。

スケジュールに余裕を持たせる

メンバーの欠勤や機械の故障など、計画段階では予期できなかったトラブルが起こるものです。こうした場合に備え、スケジュールは数日ほどの余裕(バッファ)を持たせて作るのがおすすめ。チームのキャパシティーという面でも余力を残しておくと、トラブルが発生しても臨機応変に対応しやすくなります。

進捗を共有する方法を複数持つ

チームのメンバー全員が進捗状況を共有して意思疎通ができているかどうかは、進捗管理の成功を左右します。そのため、定期的にミーティングをしたり、変更が生じたら都度共有したりと、進捗共有の方法がいくつかあると安心です。クラウド上で進捗状況がリアルタイムに見られる進捗管理ツールも登場しているので活用すると良いでしょう。

適切な進捗管理こそがプロジェクト成功のカギに

ここまで、進捗管理の基礎について解説してきました。納期の順守から正確な作業、優先順位づけまで、進捗管理で行うことはいずれもビジネスパーソンに必要な能力といえるでしょう。

若手のうちはプロジェクト全体の進捗管理を行う機会はあまりないかもしれません。それでも、自分に任せられた仕事が全体のどの位置づけにあり、どのぐらいのペースで進めれば良いのか、今のうちから意識しておくことが大切です。

監修:村井社会保険労務士事務所 村井真子
社会保険労務士/キャリアコンサルタント/経営学修士(MBA)。総合士業事務所で経験を積み、愛知県豊橋市にて2014年に独立開業。LGBTQ+アライ。行政協力業務を経験し、あいち産業振興機構外部専門家を務めた。地方中小企業における企業理念を人事育成に落とし込んだ人事評価制度の構築・組織設計が強み。著作に『職場問題グレーゾーンのトリセツ』、監訳に『バウンダリーレス・キャリア上巻』『組織と従業員の間で変化する心理的契約』『経営心理学』など。

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