- 人間関係リセット症候群・人間関係リセット癖とは?
- 人間関係リセット症候群の場合、どんな行動を取ってしまう?
- 人間関係リセット症候群の原因は?
- こんな人は要注意!人間関係リセット症候群になりやすい人の特徴
- 人間関係リセット症候群を改善する4つの方法
- 人間関係リセット症候群は冷静になって時間をおくことが大事
人間関係リセット症候群・人間関係リセット癖とは?
まず、そもそも「人間関係リセット症候群」とはどのような症状を指すのか、川島先生に伺いました。
「人間関係リセット症候群とは、これまで築いてきた人間関係の解消を繰り返し行ってしまう現象のことです。『症候群』と名前はついていますが、現状、正式な医学用語ではありません。ただもし、電話帳に載っている友人のデータを大量に削除したり、人間関係をリセットしたいがために転職を繰り返したりしている場合は、注意が必要です」(以下、川島先生)
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人間関係リセット症候群の場合、どんな行動を取ってしまう?
では具体的に、「人間関係リセット症候群」の人はどんな行動を取ってしまうのでしょうか? その例を4つにわけて紹介します。
親しい人と突然、音信不通になる
人間関係リセット症候群の人は、それまで親しく接していた相手に対しても突然、連絡を取らなくなります。「もう会わない」「もう連絡しない」といった「もう」という縁切りフレーズを頻繁に使う傾向があります。
「『理想化とこき下ろし』という用語を使いますが、基本的に人間関係について好きか嫌いか、はっきりわかれている傾向があります。そのため1度『嫌い』のスイッチが入るとシャットダウンしてしまって、いくら連絡しても反応がなくなることがある。3日前までは『大好き』みたいな態度で接していた相手でも、突然嫌いになって連絡を返さなくなるケースもあります」
SNSのフォローを外す、アカウントを削除する
現在、多くの人がTwitterやInstagramといったSNSを利用しています。人間関係リセット症候群の人の中には、それまで親しくしていたユーザーのフォローを突然外したり、自身のSNSアカウントを削除したりする人が多いようです。
また、Facebookをやめたら次はTwitterを始めて、Twitterをやめたら次はInstagramを始めてといったように、あるSNSアカウントを削除しても別のSNSで復活するといった行動を繰り返します。
転職を繰り返す
いつのまにか転職を繰り返すのも、人間関係リセット症候群の人に多く見られる行動です。もちろん転職の理由はさまざまですから、一概に「転職が多い=人間関係リセット症候群」ではありません。「キャリアアップのため」などの理由で転職を繰り返している人もいるでしょうし、ハラスメントなどを受けた場合、転職をして職場から離れることは重要です。ただし人間関係のトラブルで退職するケースが多い人は、人間関係リセット症候群の可能性があります。
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突然の引っ越し
人間関係リセット症候群の人には、誰にも伝えずに引っ越しをする傾向もあります。近場で何度も引っ越しを繰り返す人よりも、いきなり見知らぬ土地に行ってしまう人は、特に人間関係リセット症候群の傾向が強いと言えます。
「人間関係のしがらみを完全に断ち切りたい人が多いので、より遠くに引っ越す傾向があります。近場では偶然、道端で会ったりしてしまいますからね」
人間関係リセット症候群の原因は?
他人と信頼関係を築くには、多くの時間を共有しなくてはなりません。多くの時間をかけて築いた大切な人間関係を、なぜリセットしたくなるのでしょう? 川島先生は、以下の4点をその要因として挙げています。
見捨てられ不安がある
見捨てられ不安とは、「この人は自分を見捨てるかもしれない」と根拠のない不安に陥ってしまうことです。そのためちょっとでも人間関係でつらいことがあると、それ以上のつらさを避けるために全ての関係を自ら断ってしまいます。見捨てられる不安が強いほど、リセットしやすくなるのも特徴の1つです。
「曖昧さ耐性」が不足している
そもそも人間関係に明確な答えはないため、多くのことを曖昧にしたまま関係を築いていくのが基本です。ただ、人間関係をリセットしたくなる人は、白黒はっきりさせないと気が済まないという思いが強く、少しでもはっきりしないことがあると人間関係の全てが嫌になってしまいます。
自己効力感がない
「自己効力感」とは「ある行動に対し、自分は達成できると認識すること」を意味します。人間関係をリセットしてしまう人は、この「自己効力感」がなく「どうせこの人と関係を継続しても、いつかうまくいかなくなるはずだ」と諦めてしまうため、相手との関係を短期的に切ってしまうのです。このような行動を起こしてしまう人の背景には、今まで長期的な関係を築こうと努力したものの、裏切りにあってしまった人が多いと考えられています。
分裂癖がある
人には必ず長所と短所があります。そのため多くの人は、相手を評価する際「あの人の、この性格は短所だけど、この性格は長所だ」と統合して考えます。しかし、分裂癖がある人は、長所と短所を完全に区別して考えてしまうため、どちらか一方に目を向けることしかできません。したがって短所ばかり目立つ時期が長く続くと、その人との関係をリセットしてしまうのです。
こんな人は要注意!人間関係リセット症候群になりやすい人の特徴
もしかしたら自分も人間関係リセット症候群になってしまうのでは? そんな不安を抱えている人もいるかもしれません。次に人間関係リセット症候群になりやすい人の特徴を紹介します。
狭い人間関係を持つ
人間関係リセット症候群の人は比較的、交流関係が狭い人が多いそう。なぜなら、人間関係が広い人の方がメンタルが安定しやすい傾向にあるからです。ただしこれはあくまで傾向でしかなく、人間関係を狭く深く築くことは人間関係のあり方として重要なことです。
「交流関係が狭い」と言っても、一人行動や一人の時間が好きな人はそもそも人間関係を積極的に築こうとする人は少なく、人間関係リセット症候群になる人も多くはないと言います。人間関係リセット症候群になりやすいのは、あくまで狭く人間関係を築こうとする人のようです。
SNSをよく見ている
川島先生は、「人間関係リセット症候群の人とSNSは相性が良い」といいます。なぜなら、現実の人間関係はなかなかリセットできませんが、SNS上の関係はボタン1つで遮断できてしまうからです。
例えば職場で人間関係をリセットしようとしても、利害関係があるため簡単に退職したり、関係を遮断したりするのは難しいでしょう。ネット環境が発達する以前は、終身雇用の企業も多く、転職を繰り返す人も少数でした。人間関係のリセットは、現代的な現象なのかもしれません。
白黒思考
「好きか嫌いか」「敵か味方か」など、グラデーションが欠けている考えを「白黒思考」と呼びます。白黒思考の人は、それまで好きな状態でも少し嫌いな側面が見えると突然「嫌い」になってしまい、割り切って関係を遮断しようとします。
白黒思考と反対の意味を表す用語に、先述した「曖昧さ耐性」があります。曖昧さ耐性がある人は中途半端な状況、つまり好きな面と嫌いな側面の両方がある状態を受け入れます。人間関係リセット症候群には、白黒思考の人がなりやすいと川島先生と指摘します。
対人信頼感が低い
「対人信頼感」とは、人を信じられる気持ちのこと。対人信頼感が低い人は、「自分の気持ちを話してもどうせ理解してもらえないだろう」と感じ、本音で話をしなくなります。そして本当の気持ちを内に秘めたまま、「話し合ってもどうせ解決できないから」とその関係からフェードアウトしてしまうようです。
対人信頼感の高い人は「本音で話せばわかりあえる」という感覚があるので、トラブルがあってもリセットせず、粘り強く話し合って関係性を取り戻そうとします。
人間関係リセット症候群を改善する4つの方法
川島先生は、リセット癖を抑えるための手段として以下のようなものをおすすめしています。
メタ認知を活用して感情を整理する
メタ認知とは、「自身の身の回りで起こった事実によってうまれた感情や考えを客観的にとらえ、自分について知ること」です。人間関係リセット症候群の場合は、リセットしたくなった時の事実をもとに感情を整理することで「自分はどんな感情から人間関係をリセットしたくなるのか」を知ることができます。具体的な方法としては、日記のように毎日少しずつ書き出してみるのがおすすめです。
あえて曖昧なことから目を逸らし、自分のやるべきことに時間を費やす
先にも述べたように、人間関係の多くは曖昧なことばかりです。職場の人間関係においても同様、上司や同僚が自分のことをどう思っているかについて、いくら考えても明確な答えは出ません。もし曖昧な状態に嫌気が差してしまいそうな時は、一度その問題や悩みから無理やり目を逸らしてみましょう。同時にいま自分のやるべきことや、やりたいことに時間を費やすと、冷静になる時間を作れるはずです。
SNSを一時的に遮断する
人間関係のリセット癖を抑えるための手段として、SNSの遮断も欠かせません。
現代は、SNSを利用すれば誰とでも自由に繋がることができます。ただそれは裏を返せば、人間関係のリセットも容易にできるということでもあるのです。人間関係をリセットしやすい人はSNSを削除・退会する傾向が強いと考えられており、川島先生も以下のように述べています。
「SNSやネット環境が充分に普及していなかった時代は、人間関係をリセットしようと思っても、それを実行する手段がほぼありませんでした。そのため、リセットしたくなった瞬間と実行するまでの間にタイムラグができ、冷静になる時間があったんです。しかし現代の主なコミュニケーションツールは容易にアカウントを削除できるSNSであるため、人間関係のリセットも容易にできてしまいます。これはとてももったいないと思いますし、きっと後悔することの方が多いでしょう」
相手と粘り強く話し合う
同じ失敗でも、対処をした上での失敗には後悔が生まれづらいですが、対応しないままの失敗には後悔が生まれやすいそうです。それは人間関係においても同様で、対処せずにリセットしてしまうより、相手と向き合い、それでも亀裂が解消できなかったときにリセットすることが必要と川島先生は述べています。
「どうせリセットするのであれば、自分の本音を伝え、話し合った上でリセットするのがよいと思います。一番もったいないのは、何も伝えずにフェードアウトしてしまうこと。人間関係でトラブルがあるたびにリセットをするクセをつけてしまうと、それを繰り返して、どの人間関係も短期的なもので終わってしまいます。人間関係にトラブルは付きものなので、話し合うスキルを身に付けるのが大切だと思います」
【参考】傾聴力は鍛えられる!コミュニケーションの鍵を握る「傾聴」を身につけるには
人間関係リセット症候群は冷静になって時間をおくことが大事
人間関係をリセットしやすい人の多くが、リセット後に「なぜリセットしてしまったのだろう……」と後悔してしまいがちとのこと。川島先生は、そんな後悔をしないためにもリセットしたくなった時こそ冷静になり、時間を置くことが重要であると述べています。
「特に転職や退職にまで至りそうなほど職場の人間関係をリセットしたくなった場合は、一度冷静になることが重要です。なぜなら、リセットしたくなる時は往々にして、怒りや悲しみといった負の感情、その場の勢いが引き金になっているためです。当然、その時に結論を出そうとしても、リセット以外の判断は難しいでしょう。時間を置き冷静になってから考えても答えが変わらない場合もありますが、意外と勢いや負の感情に任せて決めていたことに気付くこともあるでしょう」
人間関係のリセットは、決して安易に実行して良いことではありません。たった一度のリセットで失ってはいけない関係も失う可能性もあるでしょう。後悔しないためにも、まずは一度冷静になって考えてみることが大切です。
【プロフィール】
川島 達史(かわしま たつし)
公認心理師。ダイレクトコミュニケーション代表取締役。「ソーシャルスキルトレーニング」「社会心理学」「臨床心理学」を専門分野とし、講演開催回数は通算で1,500回以上。様々なメディアにも出演経験を持つ。現在はYouTubeでの配信にも力を入れている。
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文=トヤカン
編集=TAPE
更新日=2023年1月10日
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