- 「結局、何が言いたいの?」と言われた経験はありませんか?
- 話やメールが長いほど、相手の時間を奪ってしまう
- 超基本!端的に伝えるための文章テクニック
- 報連相やメール文面をすっきりまとめるコツ
- 会議やプレゼンで話をまとめるコツ
- まとめ
「結局、何が言いたいの?」と言われた経験はありませんか?
コピーライターとして、人の心に言葉を届ける“伝え方のプロ”である勝浦さんですが、過去には言いたいことを端的にまとめられず、もどかしい思いをした経験があるといいます。
「小さい頃から本を読むことが好きで、大人が感心するような単語を知っていたり、難しい言い回しができたりすると、子ども心にうれしかったのですが、そんな中でもいざ、『君の考えを聞かせて』『どう思っているのか教えて』と言われると、途端に喋れなくなってしまうものだなというのは感じていて。
読書感想文を書くのも苦手でした。
感想文って、本を選んだ理由、あらすじを紹介してから自分の経験を踏まえて感想を述べる、というようなフォーマットが決まっていますよね。
文章を書くのが苦手な子ほど、考えなくても書けるあらすじの部分が長くなる。
いったんそのやり方を身につけてしまうと、例えば小説や映画の感想を求められるたびに、まず1から10まであらすじを説明しようとしてしまうんです。
そして、最後に『面白かった』『素晴らしかった』と取って付けたように感想を言って、終わり。
本当に大事なのは、『自分がどう思ったのか、何を感じたのか』なのに。
結局、話の総体として何が言いたいのかが伝わらない。そういう失敗を僕もしてきました。
大学の講座などで若い人とやりとりをする機会があるのですが、今の世代の人たちも似たような悩みを抱えているのではないかと感じます。
細部まで取りこぼさないように説明するのではなくて、自分の心が動いた瞬間を捉えてひと言で伝えたほうが、結果的に相手の心は動くものです。
それに気付くまでにずいぶん時間がかかりました」(勝浦さん・以下同)
このように話の要点が定まらず、1からすべてを話そうとしてしまう傾向は、ビジネスの現場においても見られるといいます。
「話し合うテーマがあらかじめ決まっている会議であるにもかかわらず、伝えたいことをダラダラと話し始めてしまう人というのはよく見かけますね。
それは、話がまとまっていないという以前に、相手に共有するべき自分の考え自体がそもそもまとまっていないことが原因なんです」
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話やメールが長いほど、相手の時間を奪ってしまう
勝浦さんの実体験や周囲の現状からも浮かび上がってくるのは、あれこれと言葉数を増やして説明しようとすると、かえって話が伝わりにくくなってしまうということ。
これは口頭のみならず、メールの文面にも言えることでしょう。
このように話をうまくまとめられないと、ビジネスにはどのような悪影響があると考えられるでしょうか。
相手の時間を奪う「時間泥棒」になってしまう
「話にまとまりがなく長々と続いたり、要領を得ない長文メールを送ったりしてしまうと、何よりもまず、相手の大切な時間を奪ってしまうことになります。
それが一番の悪影響ではないでしょうか。
ミヒャエル・エンデの児童文学作品『モモ』から引用されて、『時間泥棒』というちょっと穏やかではないビジネス用語もよく耳にするようになりました。
長々と話をされたけど、『これは一体、何の時間だったの?』『結局、私は何をすればいいの?』と相手に思われてしまったら、それは完全に時間泥棒です」
仕事やプロジェクトの進行を妨げてしまう
「話の要点がはっきりせず、意図が伝わらないまま物事が進んでしまうと、仕事やプロジェクトにも影響が出ますよね。
上司や先輩、取引先など、立場の違いによる遠慮や忖度が生まれやすく、はっきり物を言うことを恐れてあいまいな表現で済ませてしまうことが多々あります。
それを放置した結果、あとあと大変な状況に追い込まれてしまうわけです」
超基本!端的に伝えるための文章テクニック
ここからは、そんな事態にならないために、話を分かりやすくまとめるコツをご紹介します。
まずはその前提となる、伝わる文章の基本的なテクニックから押さえておきましょう。勝浦さんが挙げるのは次の7つです。
- 一文にはひとつのメッセージしか入れない
- 主語と述語の位置を離しすぎない
- 同じ言葉が文中に2回以上出てくる場合は、言い換えるか省略する
- 箇条書きを使って分かりやすくする
- 「〜と思う/〜と感じる」は使わず、できるだけ言い切る
- 同じ語尾の連続を避け、体言止めも用いて文末のリズムを良くする
- 接続詞や指示語などなくても問題がない言葉をできるだけ削除する
「日本語はその特性として、一文をダラダラと長く続けてしまいがちです。なので、ポイントはとにかく『短くすること』。
一文にはひとつのメッセージしか入れない、話の核となる主語と述語を離しすぎないというのは、分かりやすい文章の基本ですね。
もし、一度のメールで伝えたいことがたくさんあったり、複雑な状況を整理して誤解なく伝えたりしたいときは、箇条書きにしたほうが分かりやすいでしょう。
あいまいな言い回しや過剰な表現で相手を戸惑わせないためにも、『~と思う』『~と感じる』を含めた、余計な修飾語は極力削ることも意識してみてください。
そうした短い表現で的確に伝えられれば、『時間泥棒』にならずに済むし、解釈のブレによる仕事への影響も避けられます。
僕は何も、こうした原理原則を必ず守れと言いたいわけじゃありません。大切なのは、相手のことを思い、適切な言葉を選んで伝えられる柔軟さです。
ただ、それも型を知っているからこその応用なので、基本を頭に入れておくことは大切なのです。
『型破り』は型を身につけなければ、できませんから」
報連相やメール文面をすっきりまとめるコツ
基本となる文章の型を押さえたところで、続いては、報連相やメールの文面ですぐに実践できるコツを解説いただきました。
ポイントは「捨てる」「まとめる」、そして「判断しやすくする」ことにあるといいます。
「つまり」を繰り返して伝えたいことをクリアにする
「そもそも、自分が相手に何を言おうとしているのかが明確になっていないと、分かりやすく伝えることはできませんよね。
そこで、いきなり話を始める前に試してほしいのが『つまり思考法』です。
自分の中に第三者の視点を設けて、頭に思い浮かんだことに対して『つまり、これってどういうこと?』と問いかけるんです。
それを繰り返してぼんやりとした情報を捨てることで、話の要点が次第にクリアになり、伝えたいことの純度が上がっていきます」
話の全体像から先に伝える
「話が分かりづらい人というのは、伝えたいことの地図を持っていない人とも言えます。
地図には、現在地と目的地、その間を結ぶルート、それらを含む全体像がありますよね。話を始めるときは、まずは全体像からです。
ビジネスの場面で相手に伝えることといえば、主に、報告・連絡・相談、意見、感想、雑談でしょう。
そこで、まずは『報告していいですか?』『これは相談なのですが』というように話の全体像を先に示すんです。
それによって、『ただ報告を聞けばいいんだ』『相談に答える必要があるのだな』といった目的地が明確になり、相手もどんな心づもりでその話に向き合えばいいのかが分かります。
そのうえで、現在地から話を具体化していくことで、聞き手が会話の途中で迷子になってしまうことを防げます」
数値や数量を使う
「あいまいな言い回しを使いがちな人は、物事を定量的に説明することを意識してみてください。
例えば、進捗状況を尋ねられたときに『いい感じです』ではなく、『6割まで進んでいます』と数値で答える。
あるいは、『お客さまがたくさん来ました』ではなく、『定員100人のうち80人来ました』と伝える。
『いい感じ』『たくさん』といった抽象的な表現は、相手によって受け取り方が異なるため、自分の意図とはズレて内容が伝わってしまうことがあります。
そうではなく、普段の会話から定量的な表現を心がけることで、会話の解像度が上がり、イメージが的確に伝わります。
会話自体もシャープにまとまり、時間短縮にもつながりますね」
相談や質問は選択肢を提示する
「あいまいな言い方を避けるのは、相談や質問でも同様です。ここで大事なのは選択肢を提示すること。
例えば、『このプロジェクトについてどう思いますか?』では聞きたいことがあいまいです。
そこから、もう一歩深く考えて、『このプロジェクトについて、予算とチーム編成どちらに課題があると思いますか?』と選択肢を用意して具体的に聞きましょう。
自分が相談や質問をされる側に立ったときのことを想像し、相手が判断しやすい聞き方を意識することが大切です」
会議やプレゼンで話をまとめるコツ
最後に、会議やプレゼンなどの重要な局面において、自分の考えや意見をまとめて伝えるときのコツ、そしてその心構えについても教えていただきました。
事前準備は必須
「報連相やメールなど自分からの発信であれば、事前に文章を考えることができますが、会議やプレゼンなどでいきなり意見を求められたときは困りますよね。
ただ、そうした場合も、その場の瞬発力だけでどうにかしようとするのは難しいです。
そもそも、会議やプレゼンには明確な目的が設定されているはずです。
打ち合わせにはそれがなく、意見交換のみの場合もあります。いずれにしても事前に情報収集をして自分の意見をまとめておき、受け身で臨むことは避けましょう。
自分の意見には、正解・不正解はありません。論理的な根拠を示して、責任を持って意見を伝えられればOKです」
会議やプレゼンはスポーツだと捉えてチャレンジする
「伝え方や話し方の本って世の中にたくさんありますよね。それだけ多くの人がいろいろな方法を試してみたり、結局、何もやらずにうまくいかないと嘆いていたりするわけです。
僕もここまでいろいろなコツをお伝えしてきましたが、ひとつ言っておきたいのは、即効性のある方法や必殺技なんてないということ。
時間をかけて練習しなければ、うまくなるわけないんです。
僕はぜひ、会議やプレゼンをスポーツと捉えてチャレンジしてほしいと思っています。それは、別の角度から言うと、仕事と自分の人格を切り分けて臨むということ。
仕事で伝え方に失敗すると、自分の人格を否定されたようでショックかもしれません。でも、その否定はあくまで仕事に対してのみです。
そこをしっかりと切り分けたうえで、伝えることをスポーツみたいなものなのだと割り切って、日ごろからトレーニングしておくんです。
例えば、『5秒以内に言葉にする』『理由は3つあります、と言いながら全部思い浮かんでいなくても話し始めてみる』といったルールを決めて、アスリートになったつもりで日常会話の中で自分を追い込んでみてください。
僕もコピーライターになりたてのころは、街に出てパッと目にしたものにキャッチコピーを付けてみるということを繰り返していました。
そうやって普段から意識的に頭を使う習慣が身につけば、言葉にまとめることが苦ではなくなるはずですよ」
まとめ
話をまとめるコツは、不要な言葉をそぎ落とし、一文を「短く」するのを心がけること。
日ごろから話の要点を頭のなかで整理したり、すぐに言葉にしたりするトレーニングを重ねることで、その技術は磨くことができるようです。
一方で、そうしたテクニックを絶対視するのではなく、自分の言葉に責任を持ち「伝えきれた」と思えることも大切だと言う、勝浦さん。
「自分の心が動いた瞬間を正直に言葉にできるようになると、世界は今よりずっと、過ごしやすいものになるはずですよ」と、最後にメッセージをくれました。
ビジネスの場面だからといってあまり気負うことなく、伝えることをスポーツのように楽しむ姿勢が何より大切なのかもしれません。
話を聞いた人:勝浦雅彦さん
株式会社電通のコピーライター、クリエーティブディレクターとして活躍中。また、15年以上にわたり、大学や教育講座の講師を務め、広告の枠からはみ出したコミュニケーション技術の講義を数多く行ってきた。クリエイター・オブ・ザ・イヤーメダリスト、ADFEST FILM 最高賞、Cannes Lion など国内外の受賞歴多数。著書に『つながるための言葉』(光文社)、『ひと言でまとめる技術』(アスコム)がある。
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