説得力のある人とは? 説得力を高める方法をコミュニケーション専門家が紹介

上司や取引相手とのやりとりにおいて重要になる説得力。説得力を高めるために何をすればよいのでしょうか。コミュニケーション研究者の藤田尚弓さんにお聞きしました。

説得力は誰でも身につけられるスキル

自分に説得力がないと感じる人は、生まれつきの才能や性格のせいだとあきらめていませんか。説得に関する研究は1970~80年代に盛んに行われ、さまざまな知見が報告されています。多岐にわたる説得力を高める方法の中から、誰にでも取り入れやすいものに絞ってご紹介します。

あなたの強みや弱みがわかるキャリアタイプ診断(無料)

説得力のある話し方の特徴は?

一般的に使われる「説得力がある話し方」とは、「なるほどと思わせられる」「納得感がある」と感じられるような話し方を指します。一方で心理学における「説得」は、「コミュニケーションによって態度や行動を変化させること」を意味します。

この記事では相手の態度を変えたいケースも含め、「なるほど」と思われる話し方全般について解説します。一般的にどうすれば説得力のある話だと思ってもらえるのか。代表的なポイントから見ていきましょう。

説得力のある話し方①話が整理されている

何の準備もせずに自分のしたい話をすると、どうしても伝わりづらくなってしまいます。説得力のある人は、伝える情報と伝えなくていい情報を整理してから話します。また、伝える情報も相手がわかりやすいように整理し、情報量が多すぎないように調整しておきます。よく使われるのは「ポイントは三つあります」などと提示してから話していくやり方です。

説得力のある話し方②根拠が示されている

説得力がある人は、なぜそう言っているかという根拠もしっかり伝えます。例えば節電をしてほしいとき、ただ依頼するだけよりも「昨年に比べて光熱費が〇%上がっている」「経費に占める光熱費の割合が〇%になっている」「このままだと利益を圧縮してしまい、ボーナスへの影響が予測される」といったように、なぜ今の行動を変えなければいけないのか、その根拠を伝えることで納得してもらいやすい状況にしています。

説得力のある話し方③具体例をイメージできる

人を説得するには、どんなことから始めればいいのか具体的なイメージを提示するとより実行しやすいアクションへと誘うことができます。いきなり「従業員の残業時間を半分にする!」といった抽象的な目標を示すのではなく、説得力のある人は「まずは1日30分の圧縮から始めよう」「業務効率化のためにみんなの仕事を棚卸ししよう」など現実的に取り組める小さな変化をイメージしてもらうことで、相手が行動に移しやすくしています

あなたの仕事力はどれぐらい?リモートワークにも役立つ仕事力をチェック(無料)

説得力を高めるための振る舞いとは?

同じメッセージでも、表情や声のトーンなどによって説得力は変わってしまいます。例えば、自信がなさそうに話すのはNGだというのは皆さんが一番に思いつくことだと思います。しかし、一方的に命令されるような口調だと、協力したくない気持ちが強くなることがあります。どのように伝えるのがよいのか、代表的なポイントをご紹介します。

説得力を高める振る舞い①自分に合ったスピードで話す

説得力を高めたいときには「ゆっくり大きな声で話すのがよい」と解説されているケースが多く見られます。しかし実際にやってみて、しっくりこなかったという経験がある人もいるのではないでしょうか。

先行研究を調査してみると、日本語での説得の場合、話すスピードが遅いと信憑性が高くなることが報告されています。その一方で、話すスピードが速いほうが、専門性が高くなることも明らかになっています。

説得力には信憑性も専門性も大事な要素です。無理にゆっくり話したり、速く話したりして不自然になるよりも、自分が得意なペースで話しましょう。

説得力を高める振る舞い②話し始めは大きな声を意識する

話の聞き取りやすさは、説得力に影響します。特に大勢の前で話す場合、慣れていない人は緊張で声が小さくなりがちです。聞き取りにくいときの表情は、ネガティブな印象をもたれているように感じやすいので、萎縮してしまいがちです。

少し大きめの声、具体的には飲食店で店員さんを呼ぶときの声の大きさをイメージして話し始めるのがよいでしょう。

説得力を高める振る舞い③アイコンタクトを長めにとる

聞き手が思わず頷きたくなる要素の一つにアイコンタクトがあります。何人かで話しているときのことを思い出すと、自分の目を見て話されたとき、つい頷いてしまったという経験がある人も多いはずです。「あなたを見ていますよ」とハッキリ伝えるためにも、頷きを確認するためにも、いつもより少し長めにアイコンタクトをとるようにしましょう。

頷きには話し手を安心させる効果もあるので、長めのアイコンタクトで聞き手に頷いてもらい、自分の自信に繋げるのもひとつのテクニックです。

説得力を高めるために意識すべきこととは?

説得力を高めるためには、事前準備も必要です。逆に言うと、事前に準備をすることで話すのが苦手な人も説得力を高めることができます。どんな準備をすればいいのか、基本的なポイントをおさえておきましょう。

説得力を高めるために意識すべき点①ポイントは三つに絞る

情報量が多すぎると、理解しにくくなるだけでなく、感情的にも面倒になってしまうことがあります。複雑な話であっても、できるだけポイントは三つに絞って伝えましょう。

どうしても伝え足りない分は補足として話せばOKです。私たちの短期記憶の量には限界があるので、情報量が多い場合には、資料をつけ、後で確認できるようにしておくのも大切です。

説得力を高めるために意識すべき点②事実・推測・感想をわけて話す

論理的な話し方は説得力に必要不可欠ですが、ロジカルシンキングを身につけるにはトレーニングが必要です。論理的に聞こえる話し方として、まずは「事実」「推測」「感想」をわけて話すことから始めましょう。

私たちは相手を説得しようとするとき、自分の意見を事実のように話しがちです。「事実としてどんなことがあるのか」「そこから推測されるのはどんなことか」「自分はどのような感想(所感)を持っているのか」と整理することを意識しましょう。

説得力を高めるために意識すべき点③数字を提示する

「たくさんの人に支持されています」と「95%の人に支持されています」ではどちらが説得力を感じるでしょうか。「たくさん」といっても、どの程度を想像するかは人によって違います。「たくさんというのは、あなたの感覚ですよね?」と考えてしまう人もいるかもしれません。

納得してもらうだけでなく、共通認識を持った上で話を進めていくためにも、あいまいな表現はなるべく避け、数字で表現できるものは数字を使うようにしましょう。

説得力を高めるために意識すべき点④相手に合わせてイメージしやすい具体例を使う

準備に時間をかけても、他人事だと思われてしまっては納得してもらえません。例えば、なくては困るものをイメージしてもらうのに「スマホ」を例に挙げるとします。若い世代にはその重要性が伝わりますが、高齢者には違う例を出したほうが重要さをイメージしてもらいやすいかもしれません。

年代、性別、仕事、趣味などの糸口から、相手に刺さりそうな例を探すようにしましょう。

「準備」すれば説得力は改善される

説得力は生まれ持ったキャラや能力ではありません。意識して練習することで改善は可能ですし、準備をしないで臨めば、自信のある人でも失敗につながります。最初は面倒に感じるかもしれませんが、この機会に「準備をして説得力のある話し方をすること」を習慣にしましょう。周りからの評価が変わっていくはずです。

【プロフィール】
藤田尚弓(ふじた なおみ)
コミュニケーションコンサルタント、企業と顧客をつなぐコミュニケーション媒体を制作する株式会社アップウェブ代表取締役。全国初の防犯専従職として警察署に勤務し、防犯関連のコミュニケーションデザインを担当。その後、銀座のクラブ、民間企業を経て、現在に至る。異色の経歴にもとづく硬軟織り交ぜたコミュニケーションの専門家として、企業研修や執筆、TVコメンテーターなど幅広く活動している。早稲田大学オープンカレッジ講師、All About 話し方・伝え方ガイド。日本社会心理学会、日本応用心理学会所属。

【関連記事】
語彙力を鍛える6つの方法!今日からできる語彙力強化
ロジカルシンキングとは? 手法やトレーニング方法を専門家が解説
ファシリテーターとは? 会議における役割やスキル、具体的な動き方を解説

page top