夏も本番。仕事帰りに「ちょっと一杯」と、飲み会のお誘いも多くなってきます。
そこで気になるのは、上司からごちそうしていただく、または部下に気持ち良くごちそうするためのマナー。
仕事外の時間とはいえ、お酒の席での細かな気配りは、あなたの印象を数段と高めるものです。そこで今回はお酒の席の振る舞いに詳しいライター谷垣吉彦さんから、スマートな「おごる/おごられ」マナーを教えていただきます。
飲み会は、伝統あるコミュニケーションの場
最近は仕事よりプライベートを尊重する傾向に感じますが、ビジネスパーソンにとって「飲み会」は有意義なものなのでしょうか?
「コミュニケーションの場として、とても有意義だと思います」(谷垣さん:以下同じ)
「古くからさまざまな文化圏で、お酒を通じたコミュニケーションは大切にされてきました。酒席にはそれだけ大きなメリットがあると認められてきたのです。
プライベートを尊重するような風潮は、そういった長く深いアルコール文化に比べれば、ごく短期間の小さな現象ともいえます。そのため最近になって、『飲み会』『飲みニケーション』を見直す動きが出てきているのは、当然の揺り戻しといえるでしょう」
では実際に、飲みの席ではどのようなマナーが求められるのでしょうか。おごる側(上司)とおごられる側(部下)に分けてシーンごとに見ていきましょう。
スマートな“おごり”マナー
1.部下を誘う~部下にお金だけ渡して参加しない~
「上司からのお誘いで最もスマートなのは、『たまにはみんなでおいしいものでも食べてこい』と部下の一人にお金を渡すことです。
このとき、自分は参加しません。二度三度とそういった機会をつくれば、そのうちに部下の側から『ぜひ、ご一緒に』と誘ってくれます。誘ってもらえないとしたら、日ごろの付き合いに問題があると考えるべきでしょう。
また、ごく普通に『今夜飲みに行かないか』と誘って答えがNOだった場合は、『じゃあ、また今度な』と軽く流すのがよいでしょう。できるだけ短い受け答えに徹し、理由を訊ねたりしないのがマナーです」
2.店選び~上司が店を選ぶときは客層を意識~
「財布に無理のない店を選びましょう。客層のチェックも大切です。若い部下が多ければ、騒がしくなることもあるもの。しっとりとした雰囲気のバーなどに連れて行っても大丈夫か、部下の人柄などと照らして検討するのがおすすめです」
3.注文~上司はおすすめを一品!~
「注文は基本的には部下に任せましょう。旬の食材やその店のおすすめ、裏メニューなどがあるなら、それを一品注文すると大人としての奥行きを示すことができます。
また、部下は嫌いと言いにくいので、クセの強いものなど、好き嫌いが分かれる料理は避けましょう」
4.食事中~独演会はNG!~
「食事中は情報収集の場と心得て、部下の話をよく聞くようにしましょう。普段は話す機会が少ない、家族や異性関係、趣味などの話を聞くことで人柄や特性をつかめば、職場でも生かすことができます。
自分の話ばかりするのはNGです。部下は上司の話をさえぎりにくいので、気をつけていないと独演会になりがちです」
5.お会計~支払いはこっそりさりげなく~
「トイレに立った際などに、先に支払いを済ませておきます。部下にお金のことを意識させないのが、最もスマートな支払い方法です。総額がいくらだったかなども教える必要はありません」
6.アフターケア~上から目線に要注意!~
「部下からお礼を受けたら『楽しんでくれてなにより』『自分もとても楽しかった』『また一緒に飲みに行ける機会があるとうれしい』など、上から目線にならないよう答えるのがよいでしょう。お金の話をするのはNGです。また酔った席での失言や失敗を蒸し返すのも避けましょう」
注意点:上司はなるべくおごるべし!
「飲みニケーションは人間関係をつくるためのものです。割り勘にするなど、部下と同じ立場に立つことは、その後の職場での関係を考えてもあまり好ましくありません。義務や負担を負うことが、上下関係をきっちり固めることにつながります。
そのため、部下からの誘いを受けたときに、経済的な事情が苦しいからといって、 割り勘にするのは避けるべきです。部下から『支払いは自分たちが』などの申し出があったとしても、 上司の送別会など特別な理由があるとき以外は、金策をしてお金をつくるか、 断るのが正解だと考えます」
スマートな“おごられ”マナー
1.上司の誘いを受ける~素直に感謝~
「受け方としては、誘ってもらえたことに対して、素直に感謝を示すのが一番です。辛いものは苦手、明日はお得意先に出向くのでニンニクはちょっとなど、希望や都合は先に伝えておきましょう」
注意点:お断りする場合
「お断りするときには、角が立たないよううそを考えましょう。こういった場合は『うそも方便』ですが、相手のキャラクターや考え方を理解しておく必要があります。
『今夜はデートなので』という理由に対して『上司が優先だろう』、『その子に会わせろ』などと言い出す人もいますので、うその方向性は相手が受け入れやすいものにする必要があります」
2.店選び~上司の希望を尊重~
「店選びを任された場合は、上司の好みを優先しましょう。みんなでワイワイ盛り上がりたいのか、上司の話を聞きたいのか、TPOに合わせて個室がある店などを検討してみるのがおすすめです。年齢的に上司が浮いてしまうような店は避けましょう」
3.注文~あらかじめ予算を見積もって注文を!~
「上司が食べるものはあるか、数や量は人数に釣り合っているか、配慮しながら注文しましょう。
また、上司の財布事情に配慮せず注文するのはNGです。あらかじめ支払い総額を想定し、それに合わせてメニュー選びや量を調整しましょう」
4.食事中~普段言えない相談をするべし~
「上司が求めているのは、『部下からの相談』です。仕事のことはもちろん、プライベートな事柄についても人生の先輩として相談してみましょう。
特に有益な答えが返ってくるとは限りませんが、『頼りにしています』という尊敬の姿勢を示すことで、その後の人間関係が円滑になります。
そのため、自分のことばかり語るのはNGです。遠慮がちな後輩が上司としゃべられるよう話を振ってみるなどの配慮を示すと、上司からの評価も高まります」
5.お会計~感謝の気持ちを誠実に~
「感謝を示すことが一番大切です。『ごちそうさまでした』 は基本ですが、『おいしかったです』や『すてきなお店でしたね』(上司が店をチョイスした場合)などのほめ言葉があると、上司も気分よく支払いをすることができます。
多人数で盛り上がりすぎたときなど、支払いが上司の予算を大きく超えているのでは、と思えるときはいちおう『支払いを一部負担しましょうか』と申し出てみてもよいでしょう」
「さらに上級者向けの殺し文句として『いつかは自分も部下を連れてこんなお店に来られるよう頑張ろうと思います』というのもあります」
6.アフターケア~必ず再度のお礼をしよう~
「当日にメールする、翌日に直接お礼を言うなど、感謝の気持ちを伝えましょう。『また誘ってください』と付け加えると好感度大です」
注意点:あいさつと感謝の気持ちが大切
「『おごってもらって当然』という姿勢はNGです。『いただきます/ごちそうさま/ありがとうございました』という基本的なあいさつと、その気持ちが非常に大切です。
お互いが気持ちよく、有益な話ができるよう場の雰囲気をつくる能力は『部下力』として上司からも評価されます」
まとめ
会社の飲み会なんてナンセンス、と考えているあなたも、試しに上司のお誘いに乗ってみる、または、部下を誘ってみてはいかがでしょうか? 今回紹介したような、おごり・おごられマナーを意識することで、会社内では得られないような親近感と有益な情報が得られるはずです。
※この記事は2015/07/22にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています
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