「一言どうぞ」むちゃ振りで恥をかく前に必見!“3分間スピーチ” 7つのコツ

さまざまなシーンで求められる突然のスピーチに苦手意識を抱く人は多いですよね。しかし、そんなむちゃ振りに物おじすることなくスピーチができたら、周囲からの評価も高まるはず。そこで今回は、突然のスピーチ依頼もスマートにこなしてみせるための“3分間スピーチ”のノウハウや例文を、キャスターの出光ケイさんから学びます。

「一言どうぞ」むちゃ振りで恥をかく前に必見!“3分間スピーチ” 7つのコツ

話し下手でも身に付けやすい3分間スピーチ


そもそもなぜ、“3分”という数字が大事なのでしょうか。

「カップ麺の待ち時間からクッキング番組の尺、果てはウルトラマンの活動限界時間まで、3分という時間は日本人にとって、とてもなじみのある長さ。話の上手な人というのは、自分の言いたいことをいかにこの3分間に集約するかを心得ているのです」(出光さん:以下同じ)

「しかし一方、人前で話すのがあまり得意ではない、あるいは、ゆっくりとしか話せないという人にも、何とかこなせるのがこの3分。聞き手にとっても、飽きがこない時間といえます」

3分間スピーチが有効な場面


出光さんによると、こうした3分間スピーチは、一人あたりの持ち時間が決められている以下のような場面で有効だそうです。

・パーティーや会議でのあいさつ
・聴衆を引き付けるための、プレゼンの前振り
・簡潔な受け答えを求められる面接時

実践! 3分間スピーチの7つのコツ


それでは実際に、優れた3分間スピーチを行うためのコツを、出光さんから教えてもらいました。

コツ1:構成の基本は「序破急」


「スピーチの構成はリード、本文、締めといった『序破急』の展開を意識しましょう」(出光さん)

1.リード:自己紹介として単に名乗るだけでなく、趣味や名前の由来など、自分を立体的に伝える一言を添える。

2.本文:なぜこのテーマなのか、どこが好きなのかなど、思いの丈を分かりやすい言葉で伝えれば十分。

3.締め:締めは聞いてくださった方への感謝と、主賓などの相手へのはなむけの言葉。このときすてきな笑顔ときれいなお辞儀もぜひ忘れずに!

(例)
リード:出光と申します。よく「ガソリンの出光さんですか?」と聞かれますが、私はいつもコスモ石油で給油しています。
本文:今日皆さまにお伝えしたいのは、私の大好きな仰木監督の言葉です。その独特の野球戦術が“仰木マジック”と称されていた仰木監督ですが、ある試合の後、控えでも腐らず声を出していた選手に、「今日は君の声援のおかげで勝てたよ」とねぎらわれました。そこには「私はいつもあなたを見ていますよ」という心が込められています。短い言葉で、相手を思いやり、不安にさせない仰木監督は、野球の戦術だけでなく、言葉のマジックも兼ね備えていらっしゃいました。(等々)
締め:今日の話が、少しでも皆さまの心に染み入れば大変うれしく存じます。どうぞ皆さまも相手を見つめて、温かい言葉で包んで差し上げてください。それは必ずご自分にも返ってきますから! 今日ご一緒させていただいた皆さまの、ますますのハートフルなご活躍をお祈りしております。ご清聴誠に有り難うございました。



日本の雅楽に由来する構成「序破急」。あまりなじみのない場合は、「序破急」の3段構成を、一般的に知られている「起承転結」にあてはめて、「序」が「起・承」、「破」が「転」、「急」が「結」と考えるとよいのだそうです。

コツ2:新聞のコラムを読んでネタを集める


「スピーチのネタ集めには、新聞の記事を読むことが効果的です。もちろん雑誌やWebからダウンロードしたものでも構いませんが、新聞なら、『天声人語』『余録』などのショートコラムがおすすめです」

世の中のあらゆる動向を一度に知ることができる新聞は、昔からビジネスパーソンにとって欠かせない情報源。普段はネットニュースで済ませている人も、一度新聞を手にとってみてはいかがでしょうか。

コツ3:音読で3分の長さを体で覚える


「大概の活字は文語体=書き言葉で書かれているものが多いですが、それを口語体=話し言葉に変えながら、声を出して読んでみてください」

「それこそ1日3分のトレーニングで、話し方がスムーズになり、自然になり、ひいては大体3分という時間の把握にもつながるはずです」

持ち時間が決まっているスピーチの場で頼りになるのは、腕時計ではなく体内時計。日頃から音読をして3分の感覚に慣れておきましょう。

コツ4:日頃から普遍的な題材をストックしておく


「取り上げる題材は時流に乗ったものでも良いですが、最初はいつの時代にも通用する普遍的な題材を具体的に引用するのが安心です」

「『卒業式の定番曲“仰げば尊し”のように』と言えば大体の方が分かりますが、『最近のアニソンで』と例えると、ビジネスシーンに合わなかったり、見識を疑われたりする可能性も否定できません。あくまでも題材選びはTPOを大事にしましょう」

いくら熱意のこもったスピーチでも、一部の聴衆にしか通じない話を引き合いに出しては、共感できない人々を置いてきぼりにさせてしまいますよね。ここでは、「狭く深く」ではなく、「浅くても広く認識されているもの」を意識して引用しましょう。

コツ5:要点は1点に絞る


「通常、スピーチの要点は最大3点に絞るのがスマートですが、3分間スピーチならば1点で十分です」

「詰め込み過ぎは自己満足でしかなく、うんざりされることもしばしば。むしろ腹八分目の内容で話した方が、相手に余韻を持たせ、かえって興味を引かせることになります」

短いスピーチに要点を詰め込んだ結果、それぞれ6割程度の内容しか話せなかったら聴衆の印象にも残りづらいですよね。大事な1点について、しっかりと伝えるということを意識しましょう。

コツ6:口の中を広く使って喋る


「実際に喋るときは口の中を広く使いましょう。唇を開けるのではなく、奥歯を縦に開けるような感じです」

「こうすると言葉が鮮明になり、かみにくくなります。声も自然と前に出ますので、伝わりやすくなります。鏡の前で口の開け方や表情をチェックして、美しさも兼ね備えてください」

緊張すると声が小さくなって言葉もかんでしまう、という多くの人が抱える悩みの原因は、不十分な口の開きにあったのかもしれません。また、口をきちんと開けて話す姿は自信を感じさせ、聴衆に堂々とした印象を与えることもできます。

コツ7:リラックスするために仕草を開放的に


「喋るときは、そっと両方の手のひらを上に向けてみましょう。どうしても緊張する人は、おまじないだと思ってやってみてください」

「“手の内を隠す”ではなく、“手の内を明かしてみる!”。相手に自分を理解してもらおうと思うなら、仕草から開放的になった方が心身共にリラックスできます」

さらに、少しの笑顔ときれいなお辞儀、相手の眉間辺りを見るやや上向きの目線、すっと立った姿勢を日頃から意識することで、それが好感につながり、聴衆に話を聞こうという気を起こさせるのだそうです。

一番大事なのは、真心を込めて一生懸命話すこと


出光さんは、スピーチにおいて何より大事なのは「完璧な内容をうまく話すことより、真心を込めて一生懸命話すこと」だと語ります。皆さんもスピーチの場をピンチからチャンスに変えられるよう、1日3分の音読トレーニングから始めてみてはいかがでしょうか。

識者プロフィール


出光ケイ(いでみつ・けい)/大学3年生の秋からフリーのアシスタントDJとしてメディアの世界へ進み、TBSの番組でキャスターとしてスポーツニュースを伝えるようになる。日本初の女性スポーツキャスターと称され、プロ野球やサッカーJリーグ、ソウル五輪、MLB、全米オープンテニスなど数々の中継や取材をこなす。現在は「スポーツニッポンフォーラム」や、官公庁・自治体や企業の式典イベントでの司会も多数担う。

※この記事は2015/06/19にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています

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