“カメハメ波”が競技になるかも? あなたの世界を拡張する! テクノスポーツ「HADO

今年、社会現象となった「ポケモンGO」がリリースされ、多くの人がAR(拡張現実)の世界観を身近に体験したのではないでしょうか。

“カメハメ波”が競技になるかも? あなたの世界を拡張する! テクノスポーツ「HADO

今年、社会現象となった「ポケモンGO」がリリースされ、多くの人がAR(拡張現実)の世界観を身近に体験したのではないでしょうか。

ARの技術はゲーム以外にも、教育や医療の現場で活用できる可能性があることから、世界中で今後急成長する大きな市場としても注目されています。

そんなARを使ったサービス「HADO」を日本から発信しているのが、株式会社meleap(メリープ)。なんと、あの「ドラゴンボール」の“カメハメ波”が撃てるという夢のようなスポーツなのだとか! CEOの福田浩士さんにARやテクノスポーツ「HADO」について、お話を伺いました。

現実世界で“魔法”が使える「HADO」


---最近、「AR」や「VR」という言葉をよく耳にしますが、どのような違いがあるのでしょうか。

AR(Augmented Reality)は、「拡張現実」のことです。現実世界にあるはずのないものを現実の世界と重ねて表現し、コミュニケーションをとったりして楽しむことができます。現実世界にゲーム要素を加える「ポケモンGO」などが分かりやすいですね。

一方、VR(Virtual Reality)は「仮想現実」のことです。現実ではない非現実の世界観の中にどっぷり浸かって、できることのないものを体験していく。ゲームのような異世界に飛び込むもので、「プレイステーションVR」などが代表的ですね。360度シューティングのゲームはもちろん、世界中の旅行先に行く、不動産物件を内見する…など、実際に存在する遠い場所へ行った感覚になれるような体験もできます。

---では、「HADO」とはどんなサービスなのでしょうか?

AR技術を使った新しいスポーツ競技として制作しています。プレイヤーはまず、頭にヘッドマウントディスプレイをかぶり、腕にはアームセンサーの付いたリストバンドを付けます。プレイヤーの腕の動きをセンサーがキャッチして、あたかも現実世界で本当に自分が憧れの“技”や“魔法”を放つような経験ができ、技を打ち合う対戦のほか、協力してモンスターと戦ったり、カートに乗って競い合ったりなどの体験ができます。


---まさに、あの“カメハメ波”が現実世界で撃てるのですね。子どものころに憧れた人も多いはず。そもそも、「HADO」を作ったきっかけはなんだったのですか?

子どものころからアニメや漫画を見て、その世界観に憧れていました。やっぱり一番の動機は「ドラゴンボール」の“カメハメ波”を本当に撃ってみたかった…という願望ですね。あとは、魔法を使って世界を救いたかった(笑)。でも、それは憧れだけで実際は難しいじゃないですか。

そこで、誰もがそんな“ヒーロー”になれる仕掛けを作ったら面白いのではないかと考えました。

「2年だけ」トップ企業のノウハウを吸収してから挑んだ起業


---大学で建築設計を学ばれた後、リクルートに1年半勤めていたとのことですが、すぐに起業に至らなかったのはなぜですか?

当時はまだ、具体的な起業プランが決まっていなかったし、年上のおじさんを目の前にすると緊張して黙りこくってしまうほど、コミュニケーション能力が低かったんです(笑)。

そこで、日本でトップレベルの営業会社といわれるリクルートに「長くても2年」と期限を決めて入社し、そこで多くの勉強をさせていただきました。一からみっちり教育されて、仕事のノウハウはもちろん、お客さんの課題をどう発掘し、どう問題を解決したら喜んでくれるのか…など、ビジネスの考え方も学びました。

無邪気に「HADO」について話してくれた福田さん

そんな中、ライゾマティクスが手がけるPerfumeの作品に出会って衝撃を受けたんです。その作品は動きに合わせて体に映像を投影していたのですが、センサー技術とアウトプット技術を増やすことで、もっとコミュニケーションや表現が変わるだろうなと自分の中で思ったんです。

---その体験が、「HADO」の誕生につながったのですね。

僕は、もともと身体を拡張するようなものができたらいいなと思っていました。“カメハメ波”や“魔法”って、いわば身体の拡張ですよね。電車や車などは「足の拡張」だし、テレビやラジオは「目や耳の拡張」ともいえる。人間の体ってこんなものじゃない!という可能性をもっと広げたかったんです。

そして退社後、2014年に会社を立ち上げ、「身体の拡張」をテーマに、キネクトとプロジェクター、サイネージとセンサーを使ったらどうなるか…など、さまざまなパターンを試してシミュレーションしていきました。

突き抜けないと見えないものがある


---前例がないものだからこそ、きっと苦労も多かったでしょうね…。

そうですね。誰もやっていないことにチャレンジしているので、「本当にこれでいいのか」という不安はつきまといます。でも、ある程度突き抜けないと、見えてこないものもあるんです。

まずとにかく進んでみる。そこからちょっと突き抜けた先に「あ、これで良かったのかも」って思う瞬間があるんですよ。

このアームセンサーからカメハメ波が飛び出す

---多くの人がそこまで突き抜けられないまま挫折してしまうと思うのですが、そこまで突き動かされた原動力は何ですか?

ビジョンですね。どうせやるなら「ドデカイ」ことをして、世界をひっくり返したいと思っていました。簡単なことばかりにチャレンジしていては、そんなことできませんよね。

次世代スポーツ、「テクノスポーツ」の未来


---「HADO」はゲームではなく、「テクノスポーツ」として紹介していますよね。

はい。最初はリアルな「モンスター・ハンター」をイメージしていたのですが、“人対人”の方がより戦略などに奥深さが出てくることが分かってきたため、対人戦のスポーツ競技として作ることにしました。

スポーツというと、サッカーやテニスなどのアナログスポーツから、技術の進化とともにモータースポーツが生まれていきましたよね。そしてこれからはIT技術を使った「テクノスポーツ」が生まれてもいいと思ったんです。
「HADO」はその代表的な競技と位置づけて、盛り上げていこうと進めています。

---テクノスポーツが今後、普及していったらどんな世界になると思いますか?

このヘッドマウントディスプレイが拡張世界へいざなう!

身体能力に関係なく、老若男女が参加できるので、もっとスポーツ自体が身近になると思います。同じような流れで、ゲームなら新しいIT技術を使って「eスポーツ(e-sports)」などを競技化するという流れが世界中で起きていますよね。

IT技術によって拡張する世界


---今後、「HADO」を含めて、ARやVRはどんな進化を遂げていくでしょうか?

学校やオフィスで手軽に楽しめたり、プレイを通して世界中の人がつながることができるようになってくると思います。先日、アブダビで「HADO」を現地の人たちに体験していただいたのですが、夢中でプレイしていました。

日本と中東のアブダビがHADOを通して仲良くなるって未来も面白いですよね。アメリカでも体を動かしながらみんなで楽しめるものはどんどん受け入れられる傾向がありますし、中国は今特にVR熱がかなり高くて、企業がどんどん投資しています。

---日本国内でも地域活性化に一役買いそうですね。

「ポケモンGO」によって人が動いたように、こういったコンテンツで人は動くはずです。「HADO」でいえば、地域性のあるコンテンツや、そこに行けば倒せるモンスターが作れれば面白いんじゃないかなと思っていますね。

---ARによって世界が拡張される…なんだかワクワクしてきますね!

ARやVRは身体的な概念をガラッと変える可能性があります。例えば、遠い地球の裏側にあるロボットに乗り込んで操縦したり、自分の意識だけが月に行って生活する体感が得られるなど…挙げたらキリがありません。

そして、東京では2020年にオリンピックが開催されますが、「テクノスポーツ」という点では、障がい者と健常者が同じ土俵で競えるような新しいスポーツが誕生する…そんな未来を想像すると楽しみは増えていきますね。

まとめ


私たち人間の身体を大幅に拡張する「AR」技術。今後「HADO」を筆頭に、世界を超えてさまざまな形で私たちの生活を楽しく彩ってくれることでしょう。不可能を可能に変えていく、突き抜ける力で次に新たなアイデアを形にしていくのは、これを読んでいるあなたかもしれません。

識者プロフィール

福田浩士(ふくだ・ひろし)株式会社meleap CEO
東京大学大学院卒業後、株式会社リクルートに就職。2014年に独立し、株式会社meleapを設立。「HADO(ハドー)」という名のARスポーツを開発。空間認識技術やヘッドマウントディスプレイ、モーションセンサーなど、ウェアラブル技術を使用した「HADO」は、体を動かし、仲間と協力しながら対戦する新しいゲームの形として、注目を集めている。KDDIムゲンラボ第7期にも参加。ヒザがガクガク震えるほど世界を面白くする!をテーマに掲げ、活動を行う。

※この記事は2016/12/16にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています

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