仕事運アップをさせたい人、必見!ビジネスパーソン御用達の「神田明神」へ行ってみた!

東京・千代田区にある「神田明神」は、神田や日本橋、大手町や丸の内など東京都心を守り、仕事運アップのご利益があるというビジネスパーソン御用達の神社。

仕事運アップをさせたい人、必見!ビジネスパーソン御用達の「神田明神」へ行ってみた!

東京・千代田区にある「神田明神」は、神田や日本橋、大手町や丸の内など東京都心を守り、仕事運アップのご利益があるというビジネスパーソン御用達の神社。

しかしそれだけではなく、アニメやアイドル、企業とのコラボレーションなど、一風変わった取り組みも多数行っています。神田明神は、なぜこうした取り組みを行っているのでしょうか。そもそも、仕事運アップにご利益がある由来とは? 参拝の方法や仕事にご利益のあるお守りなど、気になる神田明神のあれこれを聞いてきました。

1300年の歴史を持つ威風に満ちた神社…でも、入り口にはアニメののぼりが!


神田明神は730年に創建された、じつに1300年近い歴史を有する神社です。江戸時代は「江戸総鎮守」として、徳川将軍から庶民まで、江戸のすべてを守護する存在でした。現在は近くに御茶ノ水駅や秋葉原駅があり、地域住民や近隣の会社に勤めるビジネスパーソン、さらには観光客まで、多くの人に親しまれる存在となっています。

その神田明神ですが、私たちが一般的に想像する「神社」のイメージとは少し違います。門や御神殿は立派な風格が漂いますが、入り口の横にはアニメとコラボしたのぼりがずらり。歴史があり、格式を重んじる…そんな従来の神社のイメージとのギャップにまず驚かされます。


神田明神の鳥居をくぐると見えてくる門。正面に配された随神像は、経営の神様と言われる松下幸之助氏の奉納によるもの。


そんな厳かな随神門のすぐ右手には、アニメののぼりがずらり!

また、仕事運へのご利益があることでも知られる神田明神は、そのお守りもユニーク。参拝を済ませお守りを見てみると「縁結び」「商売繁昌」などの定番に加え、半導体をイメージした「IT情報安全守護」のお守りなど、他では見かけないものが存在感を放っていました。さらに、神田明神は2017年12月にはクラウド名刺管理サービスのSanSanとともに名刺を祈祷・奉納する「名刺納め祭」を開催するなど、行事も特徴的。来年1月にはイベントやライブができるホールを有する施設「文化交流館」もオープンで、幅広い取り組みを行っています。

こうした取り組みはどういった思いで行われているのでしょうか? 神田明神権禰宜(ごんねぎ、神職の職階の一つ)の岸川雅範さんにうかがいました。


お話を伺った権禰宜の岸川雅範さん

今を生きている人にとって、一番良い場所であるように


まず、神田明神はなぜ仕事運にご利益があると言われているのでしょうか。それには、神田明神で祀られている御祭神が関係しています。

「神社では祀っている神様を『柱』という単位で数えるのですが、神田明神では現在3柱(みはしら)の神様を祀っています。縁結びと国土繁栄を司る大国様、商売繁昌と病気平癒を司る恵比寿様、厄除けの神様である平将門命(たいらのまさかどのみこと)です。縁結びというと恋愛関係をイメージされがちですが、これは広く人間関係全般の縁を結ぶもの。そのため、仕事での縁にも効果があるとされています。恵比寿様の商売繁昌はもちろん、もともと神田明神の氏子が商人だったこともあり、仕事運にご利益があると言われるようになったのだと思います」(岸川さん)

様々な理由から、仕事運アップに由来があると言われるようになった神田明神。そのためビジネスパーソンが多く訪れるといいますが、現代のように仕事始めなどの節目にご利益のある神社に行く文化が根付いたのは、意外と最近なのだそう。

「初詣などで大きな神社にお参りするためには、遠方の人は鉄道などの交通機関が発達していないと大変ですよね。そうなると、今のような初詣文化は明治時代以降にできたと考えられます。意外と伝統的なことって、昔から続いているように見えて新しかったりするんですよね」

さらに岸川さんは「伝統」について話を続けます。

「ずっと変わらず続いているもののことを伝統だと考えている人は多いのですが、実際は作り変えられて永らえていくものです。過去のものを文化資源として利用しながら、今を生きている人にとって一番良いものに作り変えていくのが伝統なんです」


えびす様像。かわいいイルカやタイなど海の仲間たちの像が一緒に置かれており、なかなかにポップ!

歳月を重ねることで、歴史に変わっていく


「今を生きる人にとって、一番良いものに作り変えていく」。この視点で見てみると、アニメとのコラボやビジネスパーソン向けの取り組みが、すっと腑に落ちて理解できます。

「アニメのコラボや『名刺納め祭』のようなビジネスイベントへ協力することに関して、参拝された方からは『変わってるね』とよく言われます。今の人たちに親しまれ、願いを叶えるという点では同じ。他にも境内でプロレスや、アイドルのライブを行うこともありますよ。

時々、不謹慎なのではないかと言われることもありますが、歴史的にみるとまったくおかしなことではありません。たとえば、神田祭には『附け祭(つけまつり)』という古くから続く仮装行列があります。江戸時代には女子たちや歌舞伎に関わった演奏者たちがこの行列に参加していましたが、これは今で言えばAKB48などのアイドルが歩いているようなもの。イメージ先行で考えると違和感がありますが、歴史的な背景と照らし合わせることで普通に思えてくることもあります。

他にも、神田明神には明治時代の神田祭と歌舞伎役者の姿がコラージュされた浮世絵が残っていて、これは当時の日常生活のしきたりを示す資料になっています。しかし当時はこれが博物館に飾られることになるなんて、誰も思いもしなかったと思いますよ。歳月を経ることで、歴史的な資料へと姿を変えていくんですね。そう考えると、今のアニメとコラボしたグッズやのぼりなども、いつかは貴重な資料になるかもしれません」

だいこくさま像。後ろの建設中のものが、2019年12月オープン予定の文化交流館。

文化交流館のイメージ。地下一階~地上四階建てで、お守りの授与所などが置かれるほか、ショップやカフェ、ホールなどもオープン予定。

時代に合わせて意味を変えていく「IT情報安全守護」のお守り


ユニークなお守りについても、今を生きる人に合わせたものを作ろうという試みの賜物です。半導体風のデザインが特徴的な「IT情報安全守護」のお守りは、どのようにして生まれたのでしょうか。


「発想としては、車につける交通安全のお守りと同じ。いまでは当たり前にあるけれど、これは江戸時代にはなかったはず。お守りを考案した2002年はWindows XPが登場した頃で、パソコンが一般的に普及してきた時代でした。これからの生活に密着したお守りを、と考える中で生まれたものです」

最初はフロッピーディスク型にすることも考えていたそうですが、試行錯誤の末、パソコンなどに貼っておける現在のシール型に。さらに、お守りの持つ効果についても時代を経るごとに変化しているそうです。

「このお守りが最初に登場した時は、主にフリーズ除けが祈願されたようです。それが時代が変わるにつれて、ウイルス除け、個人情報保護、サイバーテロ除けと、徐々に変わっていきました。お守りの意味はこちらが具体的に提示しているわけではないのですが、時代の流れと参拝者の解釈によって徐々に意味が変遷していきましたね」

まるで柔軟に時代に対応していく神田明神の姿勢を反映したかのようなお守りです。他にも、ビジネスパーソン向けにおすすめのものを教えてもらいました。

「名刺入れと、『IT情報安全守護』の一部と『開運の御守』がセットになった『しごとのおまもり』はビジネスパーソン向けに作ったものですね。他にも、一番人気なのは『勝守』という成功のお守り。神田明神は徳川家康が関ヶ原の戦いに向かう前に戦勝祈願の祈祷をしていたのですが、そのかいもあって家康は見事に勝利します。そのエピソードにちなんだお守りで、仕事で成功するという意味で皆さんいただかれますね」


真ん中:勝守、右:しごとのおまもり。

参拝のスタイルは自由。堅苦しく考えすぎなくてOK


ここまで読んで、神田明神に行ってみようと思った方もいるでしょう。一方で、神社って参拝の仕方がよくわからなくて、気遅れしてしまうという人もいるかもしれません。しかし、岸川さんは「あまり堅苦しく考える必要はない」と言います。

「神社って常識の範囲内であれば、絶対にこうしてはいけないというルールはないんです。たとえば、手を洗う時にどちらの手から洗うとか、参道の真ん中を歩かないとか、ネットなどをみていると様々なルールが書かれていると思いますが、一般の参拝者がそれらをすべて忠実に守らなければならないということはありません」

そう言われると、堅苦しく感じていた神社が少し身近に感じられる気がします。一般的に言われる「二礼二拍手一礼」についても、意外な歴史が。

「現在決められている『二礼二拍手一礼』ですが、昭和17年頃は『二礼二拍手』は神様を尊敬しすぎでかえって失礼だから、拍手をしてはいけないと言われていました。現在のかたちに決まったのは戦後のことで、意外と新しいんです。もちろん、様々な歴史や伝統を踏まえて作られたものなので、新しいからといって価値がないわけではありませんが、囚われすぎる必要はないと思います。育ってきた地域によっても違いはありますから、自分のスタイルで参拝すればいいんです。大切なのはそれを人に無理に押し付けないことです」


訪れた日も、お年寄りや観光客、ビジネスパーソンや若者たちで境内は賑わっていた

神頼みになりすぎず、安全を願い、頑張ることを大切に


その上で、最後に岸川さんにおすすめの参拝の姿勢をうかがったところ、こんな答えが返ってきました。

「神社に祀られている神様は、もともとは恵みを与える存在というだけではなく祟る存在でもあります。たとえば、雷って一般的に激しい光と音が怖いし、もしも直撃したら人の命を脅かす危険なものだと思われていますよね。でも、雷は稲の妻、稲妻とも書きます。これは雷とともにもたらされた雨で稲が育ち、豊作をもたらす存在でもあるということを意味します。この雷のように、祟りと恵みを両方持っている存在が日本の神様なんです。

力の強い神様ほど、祟る力も強いです。なので、本来は商売繁昌や仕事運アップをお祈りする前に、『何事もありませんように』とお祈りするのが第一だと思います。何事もなければ幸せに暮らせますし、病気になったら商売どころじゃないじゃないですから。そして、あとは一生懸命働くこと。真剣に取り組んでこそ、ご利益が得られるのだと思います」


あれもこれもと神頼みで叶えてもらおうとするのではなく、まずは無事を祈り、今の仕事を頑張ること。それは自分の現在を見つめ直すことにもつながっていきそうです。

アニメとのコラボやビジネスイベントを開催し、現代の人の暮らしに寄り添う神田明神。ポップな印象で敷居は低いけれど、その背景にしっかりとした考え方と由緒があることが、多くの人に愛されている理由かもしれません。2018年ももうすぐ後半戦。もっと仕事を頑張りたい! という方は、足を運んでみては。

(取材・文:小沼理/編集:東京通信社/撮影:菊池貴裕、7枚目のみ神田明神よりご提供)

識者プロフィール


岸川雅範さん
神田神社権禰宜。昭和49年東京都生まれ。國学院大學大学院文学研究科神道学専攻博士課程後期修了。博士(神道学)(國學院大學)。

※この記事は2018/06/28にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています

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