語彙力を鍛える6つの方法!今日からできる語彙力強化

仕事でも語彙(ごい)力は重要です。語彙力が低いと、「うまい言い回しが思い付かない」「考えていることを理解してもらえない」「誠意が伝わらない」など、コミュニケーションに支障が出てしまいます。ぜひ身に付けたい語彙力ですが、高めるにはどうしたらいいか。この記事では国語教師の吉田裕子さんに、インプット・アウトプットの二面から具体的な方法を教えていただきます。

語彙力とは

語彙力とは、「言葉の知識を豊富に持っており、その知識を実際に使いこなすことができる」という能力です。

言葉の知識には、「難しい漢字を読める」とか「ことわざ・四字熟語を知っている」とか、ウンチク的な側面もありますが、仕事で必要となるのは、やり取りや資料の中で実際に出てくる言葉が分かるかどうか、連絡やプレゼンテーションの中で的確かつ信頼される表現を使えるかどうか、という側面です。

また、ビジネスの現場では、敬語や接遇用語(上質な接客・サービスの言葉)を知り、使いこなすことができるというのも、語彙力として重要な要素となるでしょう。

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語彙力のない人の特徴

まずは「語彙力がない人」に共通する特徴を見ていきましょう。心当たりがないかセルフチェックをしてみてください。

使える言葉のバリエーションが少ない

語彙力がない人は、言葉の選択肢が少ないためTPOに合わせて言葉を言い換えるのが苦手です。たとえば何か謝らないといけないときにも、「ごめんね」と「この度は誠に申し訳ございませんでした」というのとでは相手が受ける印象は大きく異なります。状況に合わせて言葉を使い分けるためには、語彙力が必要になります。

あいまいな言葉を多用する

「やばい」「ふつうに」「たしかに」「とても」など、意味があいまいな言葉を日常的に多用している方は注意が必要です。これらの言葉は便利に使える一方、多用しすぎは語彙力向上を妨げてしまいます。特に「やばい」という言葉は、ポジティブ・ネガティブ両方の意味をもち、いろいろな場面で使えてしまいます。あいまいな言葉に頼りすぎていないか、自分の言葉遣いを振り返ってみましょう。

話が長い

語彙力がないと言いたいことを適切に表す言葉がなかなか浮かびません。そうなるとどうしても話が長くなってしまい、相手にも要点が伝わりづらくなってしまいます。ひどい場合には、「あの人は話が長いから…」と敬遠されてしまう事態にもなりかねません。

感情的になりやすい

語彙力が高い人は、自分の中に怒りや苦しみなどのネガティブ感情が芽生えたとしても、気持ちを上手に言葉で表現できます。「仕事がはかどっていないからイライラしているんだ」「疲れているのは残業が続いているせいだ」と今の状況を言語化できれば、それに対する解決策を考えられるため感情をコントロールしやすくなります。

一方、語彙力がない人は、「めっちゃやばい」「とにかく忙しい」というふうにあいまいな言葉でしか自分の気持ちを捉えられず、それだけネガティブな感情に支配されやすくなります。

語彙力が低いことで起きること

語彙力が低いと、仕事でもプライベートでも損してしまいがちです。思い当たるところがある人は、ぜひ語彙力向上のために一歩踏み出したいところです。

伝えたいことがうまく伝わらない

語彙力が低いと、自分の考えをうまく相手に伝えることができません。伝わるまでに時間がかかり、打ち合わせが必要以上に長引いてしまうことがあります。「結局何が言いたいんだ」と相手をイライラさせてしまうことも。

プレゼンテーションや商談、採用面接でも、自分が考えていることに対して的確な表現が出てこないので、魅力やメリットが伝わりづらく、アピール不足になってしまうことがあります。

読書をしていてもあまり内容を理解できない

語彙力は読解力に直結します。概念を表す熟語、専門用語、時事用語などの知識があってこそ、高度な書籍を読み解くことができます。せっかく買った本も、知らない言葉が多いと途中で挫折してしまいがちですし、読み切ったとしても、あまり内容がよく分からなかったという状態で終わってしまいます。

人と会話していても深く理解することができない

本だけでなく、人の話をしっかりと理解するにも語彙力が必要です。私たちは無意識のうちに知らない言葉を推測しながら話を聞いているものですが、知らない言葉が2つ、3つと多くなってくると、推測ができなくなり、内容が頭に入らなくなってきます。

自分の感情をうまく表現できず対人関係のトラブルにつながりやすい

自分の気持ちを言語化できると、原因や対処法などを分析できます。そして、問題を解決し、気持ちを静める方向に持っていくことができます。そのための語彙力が不足していると、ひたすらイライラしたり、ムキになってしまったりして、対人関係のトラブルにつながってしまいます。

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語彙力を鍛えることの重要性とメリット

語彙力を鍛えることで、語彙力不足から生じるトラブルを防ぐことができますし、さらに、理解力や表現力があなたの武器になります。

伝えたいことが相手に伝わりやすくなる

使いこなす語彙が増え、表現力が高まると、自分が伝えたいことを的確に相手に伝えることができます。端的に要点を伝えられれば、伝える時間も短くなり相手に対しても親切です。たとえば、上司に報連相をする際にも、語彙力が高ければそれだけ短時間に要点を伝えやすくなるでしょう。さらに口頭だけでなく、メール上でも語彙力が高ければ言いたいことを意図したかたちで相手にそのまま伝えられます。

相手の話を理解しやすくなる

言葉の面でつまずくことなく相手の言いたいことをしっかりキャッチすることができます。遠回しな表現を使われたときも、その真意を見抜くことができるようになるでしょう。研修を受けたり、メールや資料を読んだりするときの理解力も上がっているので、学びや仕事の能率も高まります。

本や映画などの作品をより深く楽しめる

語彙力が高まれば、楽しめる作品の幅が広がりますし、同じ作品を見たときの理解も深くなります。感想などの表現力も高まるので、自分の記憶にも残りやすくなります。

抽象的な思考力が高まる

私たちは、言葉を使って思考しています。語彙力が高いということは、いろいろな言葉・表現方法をあやつれるということなので、それだけ深い思考ができるということになります。

たとえば、「法則」という抽象的な言葉をイメージするとき、語彙力のある人は法則という言葉から「原理、公理、摂理、定理…」と似たような言葉を次々と思い浮べられるでしょう。さらには、「フレミングの法則→理科」「万有引力の法則→宇宙」というように、言葉のイメージを大きく広げることができ、新しいアイディアや斬新な発想を思いついたりできるのです。

明日から実践!語彙力を鍛える6つの方法

語彙力は「インプット」と「アウトプット」両方向から鍛える

語彙力を鍛えるには、「インプット」と「アウトプット」の両方の活動が欠かせません。「インプット」は知識を入れること、「アウトプット」は知識を発揮することです。

中高生の頃、「友人に勉強を教えることで、自分もより理解が深まった」という経験はありませんか?  自分の言葉で説明するなど、アウトプット活動を行うことで、理解は深まり定着します。語彙力アップというと「インプット」に偏りがちですが、ぜひ「アウトプット」も意識してください。

ここでは日常生活の中で実践したい方法を、インプット、アウトプットそれぞれ3つずつ紹介します。

インプットを増やす3つの方法

言葉の引き出しを増やす「インプット」は語彙力の基本です。辞書を引かなくても何となく意味が分かる「認知語彙」が増えると、本や雑誌を読むのもより楽しく、効率的になります。そのためには日常での心がけが重要です。

1.読書をする

語彙力を培う王道はやはり読書です。文化庁の調査によると、1カ月に1冊も本を読んでいない人が47.3%なのだそうです(平成30年)。「忙しい」「本は苦手」などの理由で、もっぱらネットの記事やSNSを見ているという人も多いのかもしれませんね。

ただ、ネットの記事は読みやすさを意識して、易しめの言葉で書かれていることが多いですし、SNSは口語体(話し言葉)に近い人が多いです。残念ながらそれだけでは、なかなか語彙力には結び付きにくいところです。

まずは1冊でも2冊でも、手に取るところから始めませんか。エッセイやコラム、好きな分野の本など、興味の持てるジャンルから入っていきましょう。

すでに本を読む習慣がある人は、

・「難しい言葉」「いいなと思った表現」に付箋を貼ったり線を引いたりして目印を付ける
・気に入った箇所を手帳やノートに書き写す

など、プラスアルファのアクションに取り組んでみましょう。

2.いろんな人と会話する

同年代・同業界の人とだけ話をするのではなく、違う年代(特に年上の人)、違う業界の人との会話をする機会を意識的に増やしてみてください。普段自分が使っているのとは違う語彙や言い回し、心配りのある表現などに出合うことができるはずです。

いろんな人と話すことは、「業界知識のない人に伝えるにはどう言ったらいいかな?」と、自分の側の伝え方を見直し、工夫するきっかけにもなりますので、アウトプットのトレーニングであるともいえます。

3.自分好みの表現をしているロールモデルを探す

芸能人やスポーツ選手など、自分の見ている人たちの中で、「この人は表現力がステキだな」という人はいませんか? 自分もこんなふうに言葉を使ってみたいと思う憧れの対象(ロールモデル)を決めて、話しぶりなどを意識的に観察してみましょう。

テレビやYouTube動画を見る際も、「こういうときにはこんなふうに言うんだな」「こういう言い方をすることで、角が立たないようにしているんだな」など、公式やノウハウを見つけるつもりで鑑賞してみると気付くことも増えます。

アウトプットを増やす3つの方法

言葉をただたくさん知っているだけでは「雑学王」状態です。覚えた言葉は、使いこなせる「使用語彙」にランクアップする必要があります。そのためには実践あるのみ! 実際に日々の中で使ってみることで、周囲から一目置かれる人になれますし、知識の記憶もより深く定着します。

1.日記を書く

自分の行動や感情などを振り返って言葉にすることは、語彙力向上に効果的です。日記というと、三日坊主になってしまうイメージが強いかもしれませんが、スマホの「メモ機能」「日記アプリ」を使うなど、ハードルを下げることで続けやすくなります。

「よかったこと3つを箇条書きで書く」など、前向きな気持ちになれる書き方をすることで、心理的にも良い影響が期待できます。

2.使ったことがない言葉を積極的に使ってみる

実際に使ってみることで、難しい熟語や上品なフレーズも自分になじんできます。いきなり会話で使うのが照れくさいのであれば、メールなど書き言葉から始めてみましょう。実際の仕事や生活の中で、3回使えば「自分の言葉」になりますよ!

3.よく使う言葉を言い換えてみる

人は定番のフレーズを繰り返し使いがちです。お礼なら「ありがとうございます」の連発になりがちですが、そこに「誠に御礼申し上げます」「心より感謝いたします」「お気遣い痛み入ります」など他の言い方も組み合わせることで、感謝の気持ちもより深く伝わることでしょう。言い換えの表現力を磨くには、「類語辞典」などを参照してみるのもおすすめです。

まとめ

語彙力は、理解力・表現力・思考力などいろいろな能力とつながっています。日頃のちょっとした心がけから高めることができ、今日からでも語彙力の訓練は始められます。また、語彙力で大切なのは単純な語彙数だけでなく、「覚えた語彙を適切に使えるかどうか」という点です。そのため、覚えた言葉や普段使わない言葉を会話やメールで、意識的に使うといいでしょう。

語彙力は一朝一夕には向上しませんが、トレーニングを続けることで着実に伸ばせるスキルです。ぜひできることから始めてみてくださいね。

更新日=2023年3月13日

【プロフィール】
吉田裕子
㈱裕泉堂 代表取締役。「国語を学ぶことで感受性と対話力を磨いたら、人生はもっと楽しいと思う。」そんな想いを胸に”国語の先生”を始めて約20年。都内大学受験塾・カルチャースクールで講師を務める他、書籍執筆、講演、企業研修、三鷹 古典を読む会などの活動に取り組んでいます。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)など。NHK Eテレ『知恵泉』、NHK‐FM『トーキングウィズ松尾堂』など、テレビ・ラジオにも出演。

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