いい声の出し方とは?フリーアナウンサー直伝、仕事が円滑になる声作り法

「一生懸命に話しているのに、きちんと聞き取ってもらえない」「なんとなく自信がなくて、はきはきと話せない」。そんな声の悩みを抱える方は多いかもしれません。そこで今回は、好印象を与え、さまざまなコミュニケーションを円滑にする「いい声」の作り方を、『「この人なら!」と秒で信頼される声と話し方』(日本実業出版社)の著者で、フリーアナウンサーの下間都代子(しもつま・とよこ)さんに伺います。

いい声でプレゼンする人

「いい声」は、コツをつかめば誰にでも手に入る!

いい声で好印象を与える人

「いい声」とひとくちに言っても、具体的にどんな声なのか、イメージできる人は多くないかもしれません。まずはいい声の定義について、下間さんに聞いてみました。

「いい声と言うと、漠然と“美しい声色”などと想像する方が多いかもしれませんね。でも、私が提唱しているいい声とは、伝えたいメッセージが相手にしっかりと届き、なおかつ相手が嫌な気持ちにならない声のことです。同じ声でも、不快な話し方でよろしくないメッセージを発していたら、どんなに美しい声色だとしても“悪い声”として耳障りに聞こえてしまうものです。

声や話し方には人柄が表れます。単純にきれいだとか、透明感があるとか、声色の種類だけでは語れないんです。まとめると、いい声とは人柄というフィルターを通して発せられるもの、そんなふうに考えてください」(下間さん、以下同)

いい声になると、どんなメリットが?

続いて、実際に下間さんの定義するいい声で話せるようになると、仕事にどんな好影響をもたらすのか、ご紹介いただきました。

「他者との信頼関係の構築がしやすくなることですね。先ほど『声に人柄が表れる』と話しましたが、極端な話、声さえ改善できれば好印象を相手に与えられる、ということになります。

ビジネスパーソンには、信頼感や説得力、朗らかさが求められるもの。そうした好印象を与える要素は、実際声によって生まれやすいのだそう。第一印象の多くは見た目で決まりますが、聴覚からの印象も意外と大きく、見た目の印象に次いで声のトーンや話し方で判断されていることが多いと言われています。

他者との信頼関係を築くには、時間と経験の積み重ねが必要なのは大前提。それでも、ここで言ういい声で話すことができれば、相手に信頼してもらえるスピードが格段にアップして、仕事を円滑に進められる確率が高まると思います。

美しい声を持っていなくてもいい。どんな声の人でもいい声になれるのですから、改善してみる価値はあるはずです」

まずは自分の声を知るところから。「いい声」の出し方とは

自分の声を録音して確認する様子

ボイストレーナーとしても活躍している下間さん。ビジネスパーソンからはどんな声の悩みが届いているのか、実情を伺いました。

「話しているうちに声がかすれてしまう、声がこもっていて通りづらいという悩みが多いですね。これはどちらも、大きな声を出そうと必要以上に力んでしまっているのが原因です。“大きな声”と“聞こえやすい声”は、実は別物。聞こえやすい声とは“芯のある声”のことで、これが出せれば力を入れなくても遠くまで聞こえます。

また、話し方も重要です。声が大きくても、肝心な部分をもごもごと話していると、伝わりづらくなってしまう。声と話し方の改善は、必ずセットで取り組まなくてはいけない、と覚えておいてください。

加えて、最近はコロナ禍によって人前で話す機会が減ってしまい、声を出すのが怖くなったという声も聞きます。メンタルと声には相関性があるので、まずはその恐怖心を取り払うところから取り組む必要がありますね。

それに、マスク越しに話すことに慣れて、自分が声を出している意識が薄くなっている人もいます。そういう人の中には、早口になったり、文末が曖昧になったり、知らないうちに話が主旨から外れたりして、コミュニケーション不全が起きてしまう方もいるんです」

自分の声に耳を傾け、改善点を考えてみる

声の悩みを抱えている人がいい声を手に入れるには、まず何から始めればいいのか。下間さんに要点を伺いました。

「普段、自分がどのくらいのボリューム、どんなトーン(音程)、どういったテンポ(速度)で話しているかを把握してみましょう。自分の声をちゃんと聞いたことがない人は、意外と多いんですよ。客観的に聞き、それを基準に調整することが必要です。別にわざわざ録音をしなくても、まずは自分が話している声に耳を傾けるだけでもOK。声に意識を向けるだけで、話し方が変わるのを実感できるはずです。

自分の声でチェックしたいポイントは、主に以下の3つ。チェックした上で、『うまくできていないかも』と思ったら、自分なりの判断基準でも構わないので、改善点を探っていきましょう。

  1. 人に良い印象を与える明るいトーンかどうか
  2. 深刻な話の時は真面目なトーンになっているか
  3. 聞き取りにくい部分はないか

同時に、話している時の表情も確認できるとベストです。鏡を使ったり、オンラインで会話をする際に画面を見たりして、コミュニケーションの内容に応じた表情になっているかを確認しましょう。表情って、意外と声のトーンに表れていますよ」

腹式発声で「芯のある声」を出す

いい声の条件という「芯のある声」は、どうすれば出せるのでしょうか。

「喉の力で声を出そうとせず、体全体を共鳴させて出すのが、芯のある声です。リラックスして体を緩め、深く呼吸してお腹にグッと力を入れて発声してください。これは『腹式発声』ともいいます。

力んでいると浅い呼吸しかできず、しょっちゅう息を吸ってしまうので、声が震えたり、上ずったりしてしまいます。空気を大きく吸い込んで、お腹に力を入れ、その空気を吐きながら声を出す。そうすると、よく響くいい声が出ますよ」

オンラインでの対話中に、気を付けたいことは?

コロナ禍以降、オンライン上でコミュニケーションを取る機会が増えています。その際に気を付けるべきポイントも聞いてみました。

「先ほども話題にしましたが、自分が話している時、そして人の話を聞いている時の表情を、常にチェックすることが大切です。

加えて、オンラインだと声が小さくなる人が多いです。特にイヤホンやヘッドセットを付けている場合がそうなりがちですね。確かにマイクが声を拾ってくれますが、オンラインは機械を通して声が届きますから、声に芯がないとブレたり、弱々しく聞こえてしまいます。

リアルの時もオンラインの時も同じように、少し大き過ぎるかなと思うくらいのボリュームで話すことをお勧めします」

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「いい声」と共に意識したい、印象がアップする話し方とは?

第一印象に気を配る様子

声のトーンやボリュームだけではなく、話し方も大切と話す下間さん。相手に好印象を与えることができる話し方のコツを教えていただきます。

文末まではっきり声を出すと、説得力が上がる

「例えば、営業職でクライアントにプレゼンをする場合、内容に説得力を持たせるには、文末を意識して話すのが大切です。“この新製品を導入すれば、作業効率が30%アップ……(もごもご)”などと、文末を曖昧に話してしまう人は少なくありません。これでは、“アップするのかしないのか”を言い切ってないな、と捉えられてしまいます。

このように、肝心の述語を早口で言ったり、省略したりしてはいけません。文末をしっかり言い切るのは、発言した内容に責任を持つということ。それによって、相手が受ける印象は大きく変わり、説得力のあるプレゼンになるはずです」

抑揚の高低で、信頼感と明るさを演出

他にはどういったテクニックが活用できそうでしょうか。

「マニュアルをつらつらと読み上げたり、丸暗記した営業トークをそのまま話したりすると、声に抑揚がなく、感情が表に出ないため表面的なコミュニケーションしか取れません。真剣に相手のことを思って話しているかどうかが、全て声に出てしまうのです。

気を付けたいのは、声の高低とテンポ。低い声は信頼感を生む効果がありますから、肝心なところは低く、ゆったり話す。それ以外の部分は高めの声を使って、明るい印象を与えましょう。営業職など、とくに信頼感が大切な職種の人なら、商談時の自分の話し方を録音して聞いてみる、というのも一つの手です」

プレゼンも「対話」と考え、コミュニケーションを意識しよう

声や話し方に、相手への想いがにじみ出てしまうものなのですね。

「誰のために声を出しているかと言ったら、聞いている相手のため。相手がいなければただのひとりごとになってしまいます。相手のことをしっかり考えて話すことが大切ですから、相手の方を見ないでひとりよがりで話すのは、できるだけ避けてほしいですね。

原稿を読みながら話さなければならない場面でも、文末だけは相手の顔を見て、伝えたいメッセージをちゃんと渡すことを意識する。相手がうなずいてくれたら、次の話へ移る。一方通行で話すプレゼンのような場だとしても、“相手とのキャッチボール”と考えるようにしましょう」

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「いい声」の持ち主に共通する、マインドセットとは?

自然体を心がける様子

先ほど、メンタルと声には相関性があると解説いただきましたが、いい声を出すために必要な心構えがあるのなら、ぜひ知っておきたいもの。下間さんにご紹介いただきました。

自然体の声と話し方が、信頼の証

「どんな場面でも自然体でいることが、いい声を出すために必要なマインドセットです。本当に仲の良い友人と話している時は、誰もが高い声と低い声を駆使して、とても表情豊かに話しているもの。それは、リラックスしたありのままの状態だからこそ可能なんです。

自分を良く見せようと力み過ぎると、話し方が一本調子になり、相手にその意思を見透かされてしまいます。仕事の場で、友人といる時のような状態にはなかなかなれませんが、相手に対して何かを求めず、ありのままの自分を受け入れれば、自ずと着飾らずに話すことができるでしょう。

気取ったり、無理して知ったかぶりをしたりしても、全て声に表れます。仕事でも、プレゼンを成功させたい! と思ったのなら、その一心で懸命に話せばいい。そういう取り繕わない姿に対して、信頼感は生まれるものです。クライアントと良い関係が築けている人の多くは、おそらく自然体の素直な人なのだと思います」

失敗も絶妙な「良いギャップ」に変える

自然体である以外に、人を惹きつける話し方ができる人は、どんな特徴があるのでしょうか?

「いい意味でのギャップを見せられる人ですね。かっこつけてばかりいないで、ダメなところを見せる。例えば、饒舌に完璧なプレゼンをしていた人が、大事なところで噛んでしまったとしましょう。そこで“うわぁ、今日は完璧だと思っていたのに、やっちゃいました!”と言うと、一瞬にして場が和みます。そこにその人の人柄が表れて、こういう人なら信頼できるなと思ってもらえる。

肝心なのは、やはり自然体なこと。自分自身を受け入れる大らかさがあると、それが声に表れるのです。いい声や話し方を追求することは、自分磨きにもつながるものなのです」

まとめ

声の良し悪しは、相手のことをどれだけ考えて、相手ファーストで伝えるかで大きく変わります。伝えたい想いをしっかり持っていれば、自然と相手にとって聞きやすく、「いい声」だと思ってもらえるでしょう。自然体の「いい声」は、信頼感や安心感を生んで、相手との良い関係性の構築につながるもの。ぜひ、自分の声を知り、「いい声」を追求してみてください。

話を聞いた人:下間都代子さん
声・話し方の総合プロデューサー。元FM802アナウンサー。現在フリーのアナウンサー、ナレーターとしてテレビの報道情報番組やCMほか声の仕事で多方面に活動。阪急電車の声の人としてもSNSで人気。また話し方、コミュニケーション、発声の講座や個人コンサルの講師としても活躍中。音声SNSの番組『耳ビジ★耳で読むビジネス書』では年間60冊超のビジネス書を朗読。

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