- 悲観的とは? 2つの種類について解説
- 悲観的な考え方をする人の特徴
- 悲観的な考え方になってしまう原因
- 悲観的であることのデメリット
- 悲観的であることのメリット
- 「悲観的」な考えを改善するコツ
- 悲観的な思考を仕事に活かすことはできる?
- チーム内に悲観的な人がいるときの対処方法
- 悲観的思考を課題発見力に変換させる
「ついネガティブな発言をしてしまう」「チーム内に悲観的な人がいて、全体の士気が下がっている」などと悩んだことはありませんか?
悲観的であることは一見、短所のようですが、実は慎重な特徴を仕事に活かすこともできます。本記事では、公認心理師の川島達史さんに伺った話をもとに、悲観的な性格の改善方法や仕事に活かすコツなどを分かりやすく解説します。
悲観的とは? 2つの種類について解説
一般的に「悲観的」の意味は、「この世界は悪いことや悲惨なことで満ちていて、希望が持てないと考えること」などとされています。心理学的な意味で考えると、「悲観的」は次の2種類に分けられます。
防衛的悲観
未来を予測するとき、過去にポジティブな結果の経験があるにもかかわらず、「今度は上手くいかないだろう」と考えること。例えば、「前回のプレゼンは上手くいったけど、今回は失敗するかも」と考えてしまうことなどを指します。防衛的悲観は、将来に対して「リスクを回避したい」「失敗した時のショックを和らげたい」と願う意識によるものです。
一般的悲観
未来を予測するとき、過去にネガティブな経験があることから「将来も上手くいかないだろう」と考えること。例えば、「昨日話しかけて『忙しいから』と断られた同僚に、今日も声をかけるのが嫌だな。また断られるだろう」と考えてしまう心理のことです。
「どうせ頑張っても報われないだろう」と、さまざまな物事に対してモチベーションが下がってしまいがちです。
悲観的な考え方をする人の特徴
悲観的な人には、考え方にいくつか共通する特徴があります。それぞれについて見ていきましょう。
マイナス思考から入る
物事を考え始めるとき、まずネガティブな結果を予想することからスタートします。そして、その予測に基づき、「どうせ悪い結果になるだろう」と諦めてしまいがちです。もともと自分のスキルや実力の範囲内で十分に成功するはずだった仕事も、そのマインドで臨んだ結果、失敗してしまうということも考えられます。
失敗の過大評価
「悲観的」な人は一つの失敗を過大に捉え、その影響が永続的に自分の価値を下げ続けるように感じます。例えば、朝10分の遅刻をして上司に叱責を受けた場合、今後気を付けるべきことではありますが、多くの人はそこまで大ごとに捉えることはありません。
大事な商談の日の遅刻であったり、度重なる遅刻であったりするのであれば問題ですが、そうでない場合は今後気を付ければいい話です。しかし、「悲観的」思考をする本人は大きく深刻なミスと捉え、「今後ずっと上司からの評価は上がらないままかも……」と考えてしまいます。
自己効力感の欠如
「自己効力感」とは、問題解決や目標達成が「自分の力でできる」と思える自信のこと。この自己効力感は、悲観的な考えにとらわれると不足してしまいます。結果的に挑戦を避けたり、困難があったときに自分を奮い立たせることが難しくなったりします。
未来への希望が持てない
「悲観的」な人は未来に明るい希望を持つことが苦手です。自分の将来や仕事の展望に対してポジティブな変化を期待できないので、「どうせ何をしても上手くいかない」などと考えてしまい、行動する意欲が弱くなります。
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悲観的な考え方になってしまう原因
「悲観的」になる原因は、ビジネスシーンにおいては自分の性格だけではなく、さまざまな要因があります。主な原因として考えられるものは次の2つです。
批判的な人に囲まれている
チーム内に批判的、あるいは否定的な言動の人が多いと、自己評価が下がりやすくなります。自分の発言に自信が持てなくなったり、発言すること自体ができなくなってしまったりと悪循環が生じて、評価もされにくくなってしまいます。もともと悲観的な思考を少しでも持っていた人は、その思考が強化されてしまうでしょう。
不安感に支配されている
ビジネスシーンで不安を感じる瞬間は、おそらく誰にでもあることでしょう。しかし、もともと悲観的な考え方の人は、そうした「不安」という感情が生まれたときに行動が感情に支配されてしまいがちです。結果的にビジネスや自分のキャリアについて明るい展望を描けなくなり、メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性もあります。
悲観的であることのデメリット
悲観的であることのデメリットはどのようなものがあるでしょうか。詳しく解説します。
物事に対して消極的になる
ビジネスシーンにおいて、挑戦するべきタイミングや積極的な発言が求められる場面でも、プロジェクトのリスクや周囲からの反応を悲観的に考えてしまい、行動に移せません。ビジネスの展望についてネガティブな予測をしたり、なんとなく不安感を抱いたりすることが足枷となるためです。
創造性に欠ける場合がある
リスクを避けることを重要視するため、「今まではこうだったら、今後も無難にこうしよう」という保守的な考えに終始してしまいます。革新的なアイデアの発信や、新しいプロジェクトに手を挙げることは苦手になるでしょう。
精神的に不調になりやすい
物事について最悪のシナリオを想像し、マイナス面に注目しながら仕事を進めがちです。そのため自己効力感が低下したり、不安感やストレスが増大したりして精神的に不調を起こすことがあります。
周囲のモチベーションを下げることも
ネガティブで否定的な言動を日常的に発信することにより、チーム内の人にまでネガティブな気持ちや不安感を与えてしまいます。チーム全体の士気が下がることや、悲観的な人本人と周囲との摩擦なども考えられるでしょう。
悲観的であることのメリット
悲観的であることはデメリットばかりのように思われがちですが、実はメリットとなる側面もあります。悲観的であることがビジネスにおいてプラスに働くシーンについて見ていきましょう。
リスク回避ができる
悲観的な思考を持っていると、ビジネスシーンでも最悪のシナリオを予想できます。楽観的な人では気付きにくい潜在的なリスクを事前に察知して、回避策を考えられるでしょう。
プレゼンなどで周到な準備ができる
悲観的な人は、顧客との面談時やプレゼンにおいて、予測できるリスクに備えて入念な準備をしようとします。チーム内の事前準備でも、「この部分が心配だ」「ところで、ここは大丈夫?」などとリスクや懸念点について徹底的に洗い出すことを得意とします。結果的にプレゼン資料などのクオリティや正確性を高めることにつながるでしょう。
チーム内のコンプライアンス意識を高められる
企業のSNS投稿や商品企画時においても、悲観的な人は「これは、もしかすると法律違反なのでは?」と冷静に見ることができます。想定されるミスや法令違反を避けようとするので、チーム全体のコンプライアンス意識を高めることにもつながります。
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「悲観的」な考えを改善するコツ
悲観的であることのメリットを説明してきましたが、どうしても悲観的になりすぎて悩んでいる人もいるかもしれません。その場合、精神的なバランスを取るためにはどのような方法で思考を改善したらいいでしょうか。ここでは、改善するコツを3つ紹介します。
ポジティブな経験を心の中で繰り返す
小さくてもいいので、過去の成功体験を心の中で繰り返し思い出してみましょう。難しい場合は、日々の褒められたことや成功したことを日記に書くことを習慣づけてみましょう。少しずつでも、自己効力感やポジティブな思考パターンを身につけられるようになります。
スモールステップで行動する
いきなり大きな挑戦をするのは難しいものです。大きな目標に向かう場合は、そこに進むまでの「小さなゴール」を段階的に設定してみましょう。目の前のことを一つ一つクリアして成功体験を積み重ね、前向きな気持ちを育むのがおすすめです。
楽観的な人と関わる
チーム内などにいる楽観的な人、ポジティブな言動をしている人と積極的に関わりましょう。自分の中の悲観やネガティブな予測が緩和され、前向きに行動するモチベーションが湧いてくるでしょう。
<関連記事>楽観的とは?楽観主義を仕事で活かすポイントや考え方について解説
悲観的な思考を仕事に活かすことはできる?
悲観的な思考をビジネスシーンで活かすためには、どのようにしたらいいでしょうか。気をつけるべきポイントを紹介します。
どの職種でも、「問題発見力」として活かす
悲観的という特性を「問題発見力」と捉えるよう意識してみましょう。プロジェクト進行時に「何かミスにつながるところはないか?」「この発言をしたらどう思われるかな?」と考えることは、課題を洗い出し着実にプロジェクトを推進したり、プレゼンなどにおいては、内容をブラッシュアップさせたりするシーンで役立ちます。
ミスの原因や課題をあぶり出したら、あとはロジカルな視点で淡々と準備を進めていくことが重要です。例えば、作業のタスク管理をする際に、「10時から11時はリスクを洗い出す作業」「13時以降は、洗い出したリスクの解決策を考える時間」などと意識的に、不安感とタスクを切り離すようにしましょう。こうすることで不安感にとらわれすぎずに、自身の特性のいいところを活かせます。そもそも不安があるのは当たり前のこと。その感情に付き合いすぎず、ビジネスシーンではロジカルに考える習慣をつけていきましょう。
リスク管理系の仕事を選ぶ
自分に向いている仕事を選ぶことも、強みを活かすうえでは大切です。リスク管理に関わる仕事や法務や経理などの管理部署、個人情報を取り扱う部署などではミスを最小限に抑えることが重視されています。自分の特性を活かしながら活躍できるでしょう。
チーム内に悲観的な人がいるときの対処方法
最後に、「周囲に悲観的な人がいて、どう対応したらいいのか迷っている」という人に向けて、上手く付き合うためのおすすめの対処方法を紹介します。
不安に寄り添って傾聴する
まずは相手の話を聞き、不安な感情を共有しましょう。「~といったところが不安なのですね」などと話して悲観的なところは否定せず、相手の感情に寄り添うことを意識します。こうして信頼関係を築くことで、相手が不安感や抱えているリスクなどを発信しやすい場をつくれます。
<関連記事>「傾聴力」ひとつで、好印象に!コミュニケーションが円滑になる、話の聞き方
具体的な解決策を引き出す質問を投げかける
傾聴した結果、相手が解決策を出さずに不安や問題ばかりを指摘している場合はこのように投げかけてみましょう。「その問題、どうしたら改善するかな?」「チーム内の業務フローをどう変えたらミスが少なくなるかな?」などと問題解決に焦点を当てた質問を相手に委ねてみることで、相手のポジティブな言動を引き出すことにもつながります。
チーム内のリスク管理担当として活躍してもらう
悲観的な人がいるからこそ、チームは「危ない橋」を渡らず、着実に仕事を前に進めることができます。そこで、悲観的な人にはチーム内のリスク管理係を任せるのも一つのアイデアです。チーム全体でリスクにつながりやすいところを洗い出し、具体的な対策をいっしょに考える時間を設けるのもおすすめです。
悲観的思考を課題発見力に変換させる
「悲観的」は言い換えると「ほかの人が気付きにくい課題や問題点に気づくことができる能力」です。ただ不安感を発信するのではなく、具体的な解決策を導き出すところまで思考を伸ばす習慣をつけると、ビジネスで大きな武器となるでしょう。
悲観的であることを悲観せず、「私は問題解決ができる」と受け止め、前向きに仕事へ活かしていきましょう。
監修:ダイレクトコミュニケーション 代表取締役 川島達史
目白大学大学院心理学研究科を修了し、現在ではコミュニケーション講座の講師として、心理学や人間関係に関するワークを行う。専門は成人のソーシャルスキルが孤独感・対人不安に与える影響。普段は「コミュニケーション講座」の主催や、YouTubeチャンネル「ダイコミュ大学」による情報発信を行っている。
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