大きな仕事は会社員だからこそできる? ーTWDW2014「サラリーマンの逆襲」レポート

2014年11月19日から25日の7日間に渡って開催された、国内最大級の働き方の祭典「TOKYO WORK DESIGN WEEK 2014」。

大きな仕事は会社員だからこそできる? ーTWDW2014「サラリーマンの逆襲」レポート

2014年11月19日から25日の7日間に渡って開催された、国内最大級の働き方の祭典「TOKYO WORK DESIGN WEEK 2014」。

キャリアコンパスでは「常識をブッ飛ばせ、オンリーワンキャリアの作り方」というプログラムをレポートし、企業や業界の枠にはまらないキャリアの作り方をお伝えしました。とはいえ「自分は起業したり、転職したりするのはちょっと……」という方も多いはず。

そこで今回は、同じくTWDW2014で開催された「サラリーマンの逆襲」というプログラムをレポート! トークセッションの中から、「会社に勤めているからこそやりたいことができる」というサラリーマンの可能性と、「サラリーマンがやりたいことをやるための心得」というポイントをまとめてお伝えします。

■イベント名
「サラリーマンの逆襲」
■登壇者
小杉 俊哉(THS経営組織研究所)
1958年生まれ。NEC、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ユニデン人事総務部長、アップルコンピュータ人事総務本部長を経て独立。専門は人事・組織、リーダーシップ、人材開発、キャリア開発。主な著書に『起業家のように企業で働く』『29歳はキャリアの転機』などがある。

高橋 大就(オイシックス株式会社執行役員 海外事業部長/一般社団法人「東の食の会」事務局代表)
1975年生まれ。外務省を経て、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。震災を機に休職し、「東の食の会」事務局代表就任。その後、マッキンゼー社を退社し、現在はオイシックス株式会社で海外事業部長も務める。

刈内 一博(野村不動産/新宿360°大学)
1978年生まれ。野村不動産株式会社にて分譲マンション「PROUD」の事業推進・建築部門を経て、商品開発部では「かやぶきの里プロジェクト」を起案。その後海外事業部にて海外市場の開拓に従事。業務外活動として「新宿360°大学」を設立。共著に『新世代トップランナーの戦いかた 僕たちはこうして仕事を面白くする』。

■モデレーター
羽渕 彰博(株式会社パソナテックSocial Solution Company 新規事業企画担 ハッカソン芸人)
1986年生まれ。2008年に株式会社パソナに入社し、法人営業、新卒採用、新規事業企画に従事。現在はパソナテックにて新規事業企画に携わる。また、ハッカソン芸人としてハッカソンのファシリテーションを通じた新規事業の創出、地域コミュニティーの形成を支援している。

サラリーマンだからこそ、やりたいことができる

 

■イントレプレナー、パラレルキャリア……多様化する働き方


羽渕さん:そもそも現在どのような働き方の選択肢があるかということを、高橋さんから伺いたいと思います。

高橋さん:まず組織で働くのか、個人で働くのかがありますよね。組織で働くとしたら営利なのか非営利なのか。非営利にも、官公庁もあればNPOという選択肢もある。また、営利を大きく分けると、直接事業をやる組織とコンサルティングのような専門ファームがあります。事業会社は規模によってベンチャー企業から大企業まである。

ここに新しい働き方を位置付けると、ベンチャー企業を起こすのがアントレプレナー(起業家)。最近は社会起業家も注目されています。あとは個人で仕事をする、ノマドのような人もいます。そうしたなか、今日フォーカスするのが、大企業の中のイントレプレナーです。企業の中で「リーダーシップを発揮して社会課題を解決していこう」というような働き方をする人ですね。また、私のようなオイシックスという企業にいながらNPOをやっているという、パラレルキャリアもあります。このように、スキルがある人であればあるほど、どこかの箱の中で働くということが古くなっているのです。スキルを切り売りして働く、という働き方が出てきているんだと思います。

■会社は「仕える」ものから「使える」ものになった


高橋さん:でも、私はこんな話しがしたいんじゃない(笑)。それよりも重要なのは「やるのか、やらないのか」。さっき言ったような分類は重要ではなく、具体的にアクションを起こすことが大事だと思います。なので、より重要な分類は「実践者・評論家・傍観者」という分類です。実践者になることが重要ですが、現在は評論家が増えていると思います。アクションする人はまだまだ限られている。

今日のテーマでいうと、会社の中でもアクションはできると思うんです。今までは、会社は「仕える」ものでした。でもこれからは「使える」ものになるんです。社会課題や自分のミッションを解決するために会社を使うというのが、新しい働き方なのではないかと思います。

 

■サラリーマンにもアントレプレナーシップが必要


小杉さん:私が書いた『起業家のように企業で働く』という本では「あなたは、ただ会社から言われた通りに働き続けるのか?」と問いかけています。アントレプレナーシップ(起業家精神)が必要なのは、ベンチャーの人だけではないでしょうと。サラリーマンは守られているので、サラリーマンがアントレプレナーシップを持って仕事をすれば、すごい仕事ができると言っているのがこの本です。

起業家というのは大変なんです。ホームレスの就農支援をしている小島希世子さんという方が、「私はお金も能力もないので、“できるか、できないか”で考えると、“できない”という結論になる。でもそうではなく、大事なのは“やるか、やらないか”でしょ」と言っています。これは先ほどの高橋さんの話ともシンクロしますね。起業家はしんどいです。起業しようか迷う人はやらないほうがいいです。失敗したらベンチャーキャピタルから厳しい追及があります。結果しか評価されないです。そして究極の自己責任です。それに比べてサラリーマンっていいよね、ということです。だったら会社を“使って”、起業家のように働いたらすごいことになるよね、と。

■大きな仕事は、企業でこそできる


小杉さん:本のなかの第3章で「大きな仕事は企業でこそできる」ということを言っています。会社でやることの意味を意識するんです。会社のリソースを使い倒す。社内外のネットワークをつくる。一人でやれることは限られているので、いろんな人の知恵を使って一緒にやったらいい。

そのときに意識しないといけないのは、「一人当たり売上高」です。会社の売り上げを社員数で割ってみるんです。これは集団のシナジー効果を表します。つまり、一人当たり売上高が、個人で働いても稼げるくらいだったらやめちゃってもいいんじゃないか。「1+1が2」ではなく、「5」とか「10」とか「100」になるから会社に入ってやってるわけで。それだけのことをやっていかないと、会社にいる意味はないですよね。一人当たりの売上高で、自分の年収分の倍は稼ぐというくらいの生産性を、実は皆さん上げないといけないんです。

サラリーマンがやりたいことをやるための心得

 

■提案は「心がありそうな人」にする


羽渕さん:私も社内でやりたいことを提案するんですが、なかなか通らないんです。誰に提案するのかが大事だと思うのですが、それについてはいかがですか?


小杉さん:直属の上司に言ってもダメですね。だってやらなくてはいけないことをやらせるのが上司ですから。なので、そうじゃない人で、心がありそうな人。そういった人に会議の場などで、事あるごとに言って回る。そうすると、声をかけてくれる人が出てくる。

刈内さん:広報とか人事とかCSRの部署って、意外と使えるんですよ。部署としては、当然部署のミッションがあるじゃないですか。だから(個人がやりたいことを提案しても、それが部署のミッションと異なると)「お前そんなことやってるんじゃないぞ」と言われがちです。でも会社としてのミッションは、トータルで企業の価値を上げていくことなので、自分の部署でやりにくい提案も、会社のミッションと合致していれば他の(企業の価値を上げることをミッションとする)部署でやると意外とできちゃったりしますよね。

■パラレルキャリアを選択するなら、両方の仕事で結果を出す


高橋さん:私はオイシックス株式会社での事業と、「東の食の会」での活動をやっているのですが、やっぱり事業の方で業績が上がらないと「時間減らせば?」と言われるつらさはあります。パラレルキャリアをやるからには覚悟は必要です。自分の時間も削られますし、事業の方で結果を出さないと、会社の人から「バランスが悪い」と言われるので、やるからには両方成功させるのが大事だと思います。

小杉さん:やりたいことがあるとすると、自分の今の仕事って効率的にできるようになるんですよね。目の前の仕事だけをやっていると時間がかかるんだけど、早く終わらせてやりたいことをやろうと思うと、目の前の仕事もうまく片付けるようになっちゃう。子育てをしていて毎日4時半に帰らないといけない人が、7時8時までやる人より仕事を速くやっちゃうようなことがあるんです。

■失敗する覚悟を持つ


刈内さん:僕はサラリーマンとしては損をしていると思っていて、進む過程でかなり「返り血」を浴びているんです。つまり失敗したこともいくつもあって、目も当てられないですよね。「お前のために予算をつけたのに、どうなったんだ?」と今でも言われます。うまくいくものもあればいかないものもあって、うまくいかないときはかなり痛いです。だから返り血を浴びる覚悟がないと、イントレプレナーはおすすめしないところもあります。ある程度打たれ強くて、「最悪会社なんて辞めてやってもいいんだ」くらいの覚悟がないと、つらいと思います。

 

■リーダーシップを自分に発揮する


小杉さん:やるべきことをやっているだけだとそこで終わっちゃうんですね。いかにそこから出るか。役割を超えてやる。問題意識を持ってやるということです。「やるべきことをやっている」というのは、どうしても「マネジメント(管理)」なんです。面白くないし受け身になるんです。でもやらなくてもいいところに踏み出すと、「リーダーシップ」が発揮されるんです。自分に向けたパーソナルリーダーシップ、セルフリーダーシップと呼べるものです。これを持てる人は、本当にやりたいことをやっている人です。やるべきことにとどまっていると、マネジメントになってしまいます。ですから、リーダーシップを自分に発揮するのが第一歩です。会社の中の役職にかかわらず、求められることをやるのがマネージャーです。会社の中の役割を超えて固有名詞で仕事をするのがリーダーなんです。

■やりたいことをやらないリスクを認識する


高橋さん:会社に言われたことをやっていれば安泰だというのは、幻想だと思うんです。むしろ安泰だと思っているのがリスクです。やりたいことをやらないと生き残っていけない。そういう幻想は早めに捨てた方がいいです。

刈内さんの話を聞いていて思ったのは、やりたいことやると絶対に失敗するんですね。でも、批判されないためにやるわけじゃないし、失敗しないことが目的じゃない。選択肢は「やる」しかないんじゃないかと思います。


小杉さん:組織と個人の関係は、横並びなんです。個人も自己投資をして、そこでどうやって貢献していけるか考えていかないといけない。それが多くの大企業の実態じゃないですか。だから、人材市場が出来上がって、組織と個人が対等な関係のなかで働いているということを意識した方がいい。そうじゃないと、会社が外資系に合併されたりしたときに、いらない人材になっちゃうんです。将来の予測ができないなかで、「君が欲しい」と言われるような人材であるためには、自分で好きなことをやって、自分で自分を高めていないと、それこそリスクじゃないですか。

プログラムを通じて、会社に勤めているからこそやりたいことができる、ということが見えてきました。そして登壇者の皆さんがとくに強調していたのは、「アクションを起こす」ということの大切さ。会社に仕えて、自分の価値を高めることができないリスクを負うのか、会社を使って自分の価値を高めていき、やりたいことを実現していけるのか。両者を分けるのは、「アクションを起こせるか」ということだといえるのかもしれません。


※この記事は2014/12/17にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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