ストレスが最大の原因。うつ病と似て非なる「適応障害」とは?【はたらく人の健康 #5】

忙しい日々を送っていると、いつのまにかワークライフバランスが崩れ、メンタルヘルスに変調を来たしてしまうことがあります。ビジネスパーソンなら誰でもかかる可能性のある病気の一つ「適応障害」について産業医の尾林 誉史医師に教えていただきました。

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「うつ病」と似て非なる「適応障害」。その原因は?

ある特定の状態下においてストレスを受け、抑うつ状態や身体的な不定愁訴が現れる病気「適応障害」。抑うつ状態、不安感、不眠、動悸、吐き気、倦怠感など、症状としては「うつ病」とよく似た病気ですが、うつ病と違ってストレス原因がはっきりしているため、その原因を取り除けば、症状が改善していくのが「適応障害」です。たとえば、ある人間関係にストレスを感じていた場合、その原因となる人との接触がなくなれば、症状は改善していきます。また、業務内容にストレスを感じていた場合、その業務の担当を離れれば症状は改善していきます。

3カ月以内に何か大きなストレスはなかったか? ストレス要因を生活から取り除こう

適応障害の症状は、人によってそれぞれ違います。しかし、「仕事へ行くのがつらい」「なぜか不安を感じイライラする」などの症状が続く場合、適応障害やうつ病の可能性が考えられます。適応障害はそのストレス要因が発生してから3カ月以内に発症すると言われています。3カ月の内に、何かつらいことがなかったか? またその期間に仕事などでストレスを感じ始めていないか、できる限り要因を特定してみましょう。

もし特定できたら、そのストレス要因を生活から取り除いてみましょう。それで症状が軽くなったら適応障害の可能性が高いといえます。ストレス要因を取り除いた後も抑うつ状態のままであれば、うつ病の可能性が考えられます。

とはいえ、ストレス要因を取り除くというのも簡単なことではありません。ストレス要因が仕事にある場合、仕事のどの部分にストレスを感じているかも特定する必要があります。長時間労働にストレスを感じているのか、自分の適性に向いていない仕事内容にストレスを感じているのか、ソリの合わない上司や同僚にストレスを感じているのか、それらが複合的に絡み合っているのか…。仕事の量、仕事の質、環境要因、その3点からストレス要因を探り、そのストレス要因を取り除くのにも、産業医や医師が頼りになるはずです。

「適応障害」は甘え? いいえ、適切なサポートが必要な病気です

仕事仲間が適応障害になった場合、そのストレス要因を取り除くことで、症状が改善していくことが考えられます。時間外労働が多いのであればそれを減らすための協力を、仕事の適性が合っていないようであれば適性に合った業務につけるように協力を、人間関係にストレスを感じているようであれば人間関係がうまくいくようにサポートしてあげる、などが考えられます。

また仕事がストレス要因となっている適応障害の患者は、仕事を離れたプライベートの時にはあまりその症状を感じさせず、一見元気そうということもあります。そういった状態を見ると「アイツは甘えている」などと思ってしまうかもしれませんが、決してそうではありません。「適応障害」という病気を理解し、ストレスを取り除き、その人が持っている能力を十分に発揮できるよう、サポートしてあげることが必要です。

ストレス要因の排除や認知行動療法で治る病気だが、注意も必要

適応障害の治療には、ストレス要因を取り除くことがもっとも有効です。仕事のどの部分にストレスを感じているか原因を特定し、その状況に対処しましょう。しかし、どうしてもその要因を取り除くのが難しい場合もあります。その場合はストレス要因に対した時の適応力を高めていく必要があるでしょう。医師と相談しながら、「認知行動療法」などのものごとの捉え方を柔軟にするトレーニングを行っていきましょう。症状に応じては、抗不安薬、睡眠導入薬などの薬物治療が有効な場合もあります。薬物治療を行う場合は、医師のアドバイスに従って、適切な薬を処方してもらいましょう。

適応障害は、ストレス要因から離れて楽しいことがあると一見元気そうだったりするため、誤解を受けることもある病気です。しかし、抑うつ状態が長期化した場合、うつ病に発展していくこともあるのです。ストレス耐性の問題と軽く見ずに、早めに医師に相談し、適切な処置が受けられるよう対処していきましょう。

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【監修】
尾林誉史
「VISION PARTNER メンタルクリニック四谷」院長/VISIONER
精神保健指定医。日本医師会認定産業医。
東京大学理学部化学科卒業後、大手人材会社に入社。退職後、弘前大学医学部医学科に学士編入し、東京都立松沢病院にて臨床初期研修修了後、東京大学医学部附属病院精神神経科に所属。現在、10社の企業にて産業医およびカウンセリング業務を務める他、メディアでも精力的に発信を行っている。

文=松村 知恵美
編集=五十嵐大+TAPE

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