AIの時代。はたらく私たちに必要なこととは? 27歳のAIビジネス経営者が語る未来

冒頭の写真に写る6人の女性。実はこの6人は実在しない女性たちなんです。彼女たちはAIが生み出したもの。このサービスを開発したのが京都大学発のベンチャー企業、株式会社データグリッド。代表の岡田侑貴さんは27歳(2020年7月時点)ながらAIの開発とビジネスを進めています。そんな若き経営者にAIが発展した未来において、ビジネスパーソンは何をスキルアップさせればいいのかを教えていただきました。岡田さんの想像する未来予想図とは⁉

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マニュアル化できる仕事はAIが担当する未来が来る⁉

――「クリエイティブAI」というサービスを展開しているそうですが、「クリエイティブAI」とは何でしょうか?

「これまでのAIの使われ方を抽象化して考えると2つしかないんです。一つ目は『予測』。例えばAIを使って明日の株価を予測するといった使い方があります。二つ目は『認識』すること。自動運転は、AIが信号は赤か青か、自動車の前を通過している人がいる、など画像を通して状況を認識することで車が動く、という原理なんです。弊社の『クリエイティブAI』は第三のAIの使い方を提案しています。それがAIがクリエイト(=創造)するということ」

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アイドル生成AI

――具体的に何を作っているんでしょうか?

「分かりやすいものですと、バーチャルアイドル(=アイドル生成AI)があります。AIにアイドルの顔画像を学習させ、架空のアイドルを高解像度・高品質で自動生成しているんです」

――架空の人物を作り出すことで、ビジネスとしてどんな展開ができるんでしょうか?

「バーチャルアイドルと同様の原理で、実在しない人物の全身画像であるバーチャルモデル(=全身モデル生成AI)も開発しており、これを使えばチラシやカタログなどの制作費が安く抑えられます。実在のモデルを採用する場合、モデルのキャスティング費、撮影費やスタジオ代やメイク代などかかりますが、バーチャルモデルを使えばこれらの費用はゼロに。かかる費用はバーチャルモデルの制作費だけです」

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全身モデル生成AI

――データグリッドでは、AIを使って主に人物を作っているのですか?

「人物だけではないですよ。データになるなら理論上、すべてが作れます。例えば、音楽はデータになりますし、文章だってデータになりますよね。なのでインタビュー記事だってAIで作れる時がくるかもしれません」

――えっ! そうなると私の仕事が奪われるのですが…。

「インタビューはインタビューでもただ単に『聞き手が決められた質問を聞く、話し手がその質問に回答する』というパターンが決まった単純作業なら、AIにもできます。でも『予定にない追加質問をする』『回答の深堀りをする』という予定不調和な作業はAIにはできません。もし予定不調和なこともするインタビューをされているなら、AIに仕事を奪われることはありません。大丈夫ですよ、おそらく(笑)」

――(ホッ)よかったです。数年後にはAIが人間の仕事を奪うと言われていますよね。どんな仕事が奪われると予想されますか?

「マニュアル化できる仕事はAIが担うと思います。例えばアメリカのメジャーリーグの速報記事はAIが書いているんですが、なぜAIが書けるかというと『〇回裏に選手がヒットを打って、〇回表に三振を奪って』と文章の型があるからです」

自分の理想像を描き続けることで未来を切り開く

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代表取締役社長の岡田侑貴さんは1993年6月30日生まれ27歳

――AIにできなくて人間にできる仕事とは?

「あるべき姿を描く想像力と0から1を作る創造力が求められる仕事は人間にしかできません。AIが漫画家・手塚治虫さんの漫画を再現するプロジェクトが話題になりましたが、手塚治虫さんはゼロからストーリーを創造し漫画を描きました。一方、AIは手塚治虫さんの漫画を再現できても、ゼロから漫画を描くことはできない」

――近い将来、AIがマニュアル化された仕事を担うのなら、人間は創造力・想像力を培う必要がありますよね。そのためにどんなことをする必要がありますか?

「自分のなりたい姿は何なのか? 自分がどういう状態であれば幸せなのか? という問いを自分に投げかけ続けることが必要だと思います。その問いを続けることで理想的な未来を想像し、その未来を創造することができます。その作業はAIには不可能です」

――自分自身に問いかけ続けるのは、辛くないですか?

「しんどいですが、価値があると思っています。10年後、20年後には、AIが今よりももっと賢くなるので、人間の創造性・想像性がより重要になる。計算の速さや情報処理の速さを鍛えてもAIには勝てないですから、AIができない部分を鍛える必要があります」

――その未来はいつ訪れるのでしょうか?

「段階的に進んでいくのではっきりとは言えないのですが、直近5~10年はマニュアル化した仕事にも求人はあると思います。ただ20年~30年後にはマニュアル化した仕事はAIに奪われているかもしれませんね」

――十年後の未来で失業しないためにも創造性・想像性を鍛える必要がありますね。

「そうですね。まずは自分の理想とするキャリアを考えるのがいいのかもしれません」

取材協力=株式会社データグリッド
取材・文=野田綾子
編集=TAPE 

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