忙し過ぎる上司に不満。相談もできないとき、部下はどう立ち回るべきか

変化が激しい昨今のビジネス環境下で組織をまとめる上司たち。管理業務だけでなく、プレイングマネジャーという言葉が示すように、多様な業務が求められ、「とにかく忙し過ぎる」と嘆く上司がいます。部下としても仕事のやりにくさを感じて困ることもあるでしょう。さまざまなタイプの上司がいる中で、今回は「忙し過ぎる上司」への対処法を、人事コンサルタントの小笠原隆夫さんに教えていただきます。

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なぜ上司たちは忙しいのか

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最近は管理職になることを希望しない若手社員が増えているといいます。上司の仕事ぶりがあまりにも大変そうに見えることも一因のようですが、なぜ今の上司たちはそんなに忙しいのでしょうか。

一つには会社全体の人員体制の問題があります。効率化のために人員が削減され、人員の余力がとても少なくなっているのです。IT化をはじめとした業務見直しによる効率化は当然行われていますが、そこでできるのは定型的な手続きの自動化や、コミュニケーション手段の多様化・効率化といったことが中心となります。

しかし、環境変化が激しいことから、この範囲では対応しきれないことがいろいろ起こります。ギリギリの人員体制で仕事をしている中での突発的な事象は、まず管理職である上司自身が対応するしかありません。任せたい気持ちはあったとしても任せられる人がいないとなれば、結果としてその仕事は自分でやるしかありません。

また、今の上司のほとんどは、プレイングマネジャーとして現場の実務も担っています。部下より多くのノルマを引き受けていることもあります。少なくはない自分の仕事に合わせて、部下それぞれの仕事も見ていくのは簡単なことではありません。

「忙し過ぎる上司」に、本人の能力や努力の不足があったとしても、様々な形で仕事量が増え、環境変化によってビジネスの難易度が高まっていることは間違いありません。今の上司は、本人だけでは解決できない忙しさがどんどん増えています。

 

上司が忙し過ぎることの悪影響とは

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「忙し過ぎる上司」の部下には、いったいどんな影響があるでしょうか。

まず、自分が「忙し過ぎる」という状態を想像したとき、とにかく時間と気持ちの余裕がなくなることは理解できるでしょう。目の前のことだけに集中せざるを得なくなり、全体に目が届かなくなります。仕事上の漏れやミスが増え、他人に気配りをする余裕がなくなって、人間関係もギスギスしがちになります。

「忙し過ぎる上司」の場合も、基本的にはこれと同じことが起こります。ここで最も大きな問題は、上司という立場ゆえに、部門やチーム全体に関わる様々な重要事項が「遅れがちになる」ということです。指示、判断、意見調整、クレームなどの顧客対応、その他すべてのことがタイミングを逸したり遅れたりしていきます。やらなければならないことがたくさんあり過ぎて、追いついていかないのです。

これを部下の立場から見ると、全体状況が見えていないのに、タイミングが遅れたり中身がずれていたりする指示が突然出てきますから、急な手戻りが増えたり改めて状況説明をしなければならなかったりします。

忙し過ぎる原因に上司自身の問題が大きかったとしても、それをそのままにしていると全体の仕事に悪影響を及ぼします。それは遅れ、漏れ、不手際といったことから始まり、やがて部門やチーム全体が周りからの信頼を失うことにもなりかねません。それは部下である自分自身にも直接降りかかってくるということを認識しなければなりません。

 

不満があっても突き放さず仕事仲間として寄り添う

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こんな「忙し過ぎる上司」に対して、部下の立場で必要な姿勢は、あくまで仕事上の仲間として寄り添い、その忙しさを少しでも軽減するようにサポートすることです。「忙し過ぎる上司」の場当たり的な対応による不満など、突き放したくなる気持ちも分からなくはありませんが、それは結局自分自身に仕事上の不利益となって返ってきます。

また上司自身も忙し過ぎることで、指示しなければならないと思っても、それが頭の中でまとめられなかったり、「自分がやらなければならない」と思い込んでいたりする場合があります。

このような上司には、部下が自ら積極的に、「その仕事は自分がやります」などと寄り添うことが大切です。それでも「任せられない」と突っぱねるなど、寄り添う気持ちを害するような態度をとる上司もいるでしょう。しかし、それをそのまま放置したところで、部下にとって良いことは何もありません。

上司も一人の人間であり、同じ会社で働く仲間です。部下から支援する働きかけを続けていくことでお互いの信頼関係が増します。全体の仕事も効率よく回すために、同じ仕事仲間として積極的にフォローしていくことを心掛けてみましょう。

 

文=小笠原隆夫
編集=矢澤拓

【プロフィール】
小笠原隆夫
人事コンサルタント。IT企業で開発SE職を務めた後、同社で新卒中途の採用活動、人事制度構築と運用、ほか人事マネージャー職などに従事。二度のM&Aでは責任者として制度や組織統合を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表に。以降、人事コンサルタントとして、組織特性を見据えた人事戦略や人事制度策定、採用支援、CHRO(最高人事責任者)支援など、人事・組織の課題解決に向けたコンサルティングをさまざまな企業に実施。2012年3月より「BIP株式会社」にパートナーとして参画し、2013年3月より同社取締役、2017年2月より同社代表取締役社長。

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