燃え尽き症候群とは? なりやすい人の特徴や原因、予防策を公認心理師が解説

仕事へのモチベーションが立ち消える「燃え尽き症候群」。それに陥ってしまう原因とは? どうすれば燃え尽き症候群にならずに済むのか。仕事への情熱を失わずに済むコツを、公認心理師の大美賀直子さんにお聞きしました。

燃え尽き症候群とは

以前はとても熱心に活動に取り組んでいたのに、情熱の炎が燃え尽きたかのように意欲を失ってしまう状態のことを「燃え尽き症候群」(バーンアウト・シンドローム)と呼びます。仕事に精力を注ぎ、休憩や休養も忘れてのめり込んでいると、いずれは心身のエネルギーが枯渇して、燃え尽き症候群の症状が表れてしまうことがあります。

燃え尽き症候群の症状とは?

燃え尽き症候群の症状には、いくつかの特徴があります。中でもアメリカの社会心理学者、クリスティーナ・マスラックが考案した「MBI」(Maslach Burnout Inventory)という測定尺度で定義されている、次の三つの症状が有名です。下記に各症状の特徴を紹介します。

燃え尽き症候群の症状:①情緒的消耗感

心が疲弊して、感情が摩耗しているように感じる状態です。それまで情熱を傾けていた仕事に関心を失い、意欲も感動する気持ちも持てなくなります。精魂が尽き果ててエネルギーが枯渇してしまった状態で、何を見ても何をしても心が動かず、楽しめなくなるのです。

燃え尽き症候群の症状:②脱人格化

積極的に人に関わっていくこと、相手の心情を考えて細やかに配慮することへの意欲を持てなくなってしまいます。以前はとても親切で、人の役に立ちたいと思っていた人でも、他者のことを人格のある存在だと見なすことができなくなり、心の込もっていない機械的な態度で接してしまいます。

燃え尽き症候群の症状:③個人的達成感の低下

仕事など活動の目標を見出すことができず、何のために頑張っているのか分からなくなってしまいます。そのため、はたらく意味や意義を感じられなくなり、成長や努力への関心も失ってしまいます。これまで成し遂げてきたことについても、「どうでもいい」と感じるようになります。

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燃え尽き症候群になりやすい人とは?

仕事をする中で燃え尽き症候群になりやすい人には、次の二つの傾向があると考えられます。それぞれの傾向について解説します。

仕事熱心で使命感の強い人

  • いつも情熱を燃やし、思い入れを持って業務に取り組んでいる
  • 使命感が強く、高い意識を持って業務に励んでいる
  • 常に仕事のことを考え、仕事に関わる作業や情報収集をしている。

これらは仕事を通じて成長する人に共通する特性ですが、これらの姿勢がともすると自分を追い込み、燃え尽き症候群を招いてしまうことがあります。

感情労働に従事している

感情の統制を強く求められる仕事を「感情労働」と呼びます。医療職、指導職、福祉関連職をはじめとし、広い範囲では営業職や対人サービス職なども感情労働に含まれます。感情労働に従事する人は、常に明るく、模範的な態度で人と接することを求められるため、精神的エネルギーが消耗しやすく、燃え尽き症候群になるリスクが高いと言われています。

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燃え尽き症候群の原因とは?

燃え尽き症候群の原因は多岐にわたりますが、中でも次の三つは燃え尽き症候群に悩む多くの人に共通する特性です。

仕事の負担を常に抱えている

業務量がとても多く、毎日のように長時間残業が続いている。解決の難しい仕事や負荷の大きな仕事を、一人で行っている。プライベートの時間にも、仕事が頭から離れない。このような状態が長く続くと、その仕事が大好きでやりがいを感じていても、いずれはエネルギーが枯渇し、燃え尽き症候群になる可能性があります。

努力に見合った評価が得られない

人一倍頑張っているのに、その努力が上司や周囲に認められない。いくら精力を注ぎ込み、業務に励んでも、目立った成果を得られない。長くこのような状況に置かれると、積み重ねてきた努力が報われない状態が続いてしまいます。その結果疲弊し、燃え尽き症候群になりやすくなってしまいます。

他人に気を使い過ぎる

感情労働に従事する人だけでなく、常に他者に配慮して過剰に気を遣っている場合には、精神的エネルギーが大きく消耗してしまいます。他者を思いやることはとても大切ですが、疲れるまで配慮し続けていると、燃え尽き症候群のリスクを高めてしまうことも認識しておきましょう。

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燃え尽き症候群の予防策は?

燃え尽き症候群は、意識の持ち方によって予防することができます。仕事が楽しく、やりがいを感じているときにこそ、燃え尽き症候群になるリスクは高まります。下記の三つの予防策を実践することで、ほどよいはたらき方になるように調整していきましょう。

オーバーワークになっていないか点検する

仕事が多過ぎて、毎日のように長時間残業が続いている場合、業務量の軽減について上司や発注者と話し合うことが必要です。また仕事を断れずに、自らオーバーワークを招いていないかを振り返ることも大切です。気力と体力には限界があると自覚し、疲弊しない程度の業務量をキープできるように調整していきましょう。

仕事とプライベートのメリハリをつける

プライベートの時間にも仕事のことばかり考え続けていると、実質的には休みなく仕事が続いていることになります。オフの時間には仕事から意識を切り離し、心身を休ませましょう。しっかり休めば趣味やレジャーを心から楽しむゆとりも得られ、心身が活性化します。「休むのも仕事のうち」と心得ましょう。

難しい仕事は一人で抱えない

解決の難しい仕事や負担の大きな仕事を一人で抱えていると、問題を深刻に考え過ぎてしまい、出口を見失ってしまうことがあります。これが、燃え尽き症候群を招く原因になります。周囲の人に相談すると、思いがけない解決策が見つかり、ストレスを和らげるヒントも得られるでしょう。困難を感じたときこそ一人きりで抱えず、周囲の人によく相談しましょう。

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燃え尽き症候群になりづらいマインドセット

燃え尽き症候群にならないためには、「頑張り過ぎない」というマインドセットを維持することが大切です。仕事は毎日、数十年かけて続けていく活動です。

  • ハード過ぎる目標を掲げて自分を追い込まない
  • 業務量を増やし過ぎない
  • 休憩と休養をしっかり取る

これらのことを意識して「頑張り過ぎないマインドセット」を維持していきましょう。

燃え尽き症候群になってしまったら

燃え尽き症候群はそのまま放置していると、適応障害やうつ病などの心の病に移行してしまうことがあります。

  • 強い憂うつが毎日続いている
  • 何をしても気が晴れない
  • よく眠れない
  • 食欲が湧かない

こういった症状が目立つようになったら、早めに心の専門医を受診し、医療的な解決方法について相談しましょう。

まとめ

仕事を通じて成長するためには、熱意をもって仕事に取り組み、困難な課題にもチャレンジしていくことが重要です。ですが「その意識が燃え尽き症候群のリスクにつながってしまうことがある」と認識しておくことも非常に大切です。仕事への情熱を失わないためにも、いつも心に「頑張り過ぎない」という言葉をインプットし、無理のない範囲で前進していきましょう。

【プロフィール】
大美賀 直子(おおみか なおこ)
メンタルケア・コンサルタント。公認心理師、精神保健福祉士(以上、国家資格)、産業カウンセラーの資格を持つ。「こころと人生と人間関係のベストバランス」をテーマに、カウンセリング、講演、執筆活動を行う。働く人のメンタルケアに関する造詣も深く、テレビ、新聞、雑誌、インターネットを中心に情報を発信。企業研修でも好評を得ている。『なぜあの人の働き方は「強くて美しい」のか?』『サイボーグを目指さないことにした働く私の「自分時間」』(アスカビジネス)、『どうして会社に行くのが嫌なのか?』(アスキー新書)などの仕事に関する著書も出版。
大美賀直子|メンタルケア・コンサルタントーこころと人生と人間関係のベストバランスを提案 - 大美賀直子(メンタルケア・コンサルタント)の公式HP (mentalcare555.com)

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