嫌なことを気にしない方法は?職場で役立つマインドセットを手に入れよう

日々の仕事の中で人から言われたことや人との比較、評価などが気になってしまうことがあるかと思います。今回は、職場で周りのことを気にしない方法について、メンタルケア・コンサルタントの大美賀直子さんが解説します。

職場で周りのことを気にし過ぎてしまう原因

「気にし過ぎる」といっても例えば「業務における細かいことが気になる」「他人にどう言われているか気になる」「上司からの評価が気になる」など人によって多種多様な「気になる」があります。その多くは、実は「失敗に対する恐怖心が強い」こと、そして「自己評価が低く、他人と自分を比較してしまう」という考え方の癖にとらわれていることが多いものです。この二つの考え方を引き起こす原因について考えてみましょう。

失敗に対する恐怖心がある

やりたかった仕事に抜てきされても、「自分にはまだムリなのではないか」という思いが頭をよぎり、挑戦する前に諦めてしまう。人前に出ると「うまく話せないのではないか」「上司からの評価が下がってしまうのではないか」ということが気になってしまい、プレゼンテーションのチャンスを断ってしまう……。このようなことが続くと「失敗に対する恐怖心」により、普段は気にしないようなことまで気になってしまうこともあります。

経験のない仕事や慣れていない仕事が与えられると、「成功するイメージ」より先に「失敗するイメージ」を思い描いてしまうため、失敗することがとても怖くなり、仕事を引き受けられなくなったり、周りの意見や細かい業務の進行状況が気になってしまうようになることがあります。

自己評価が低く、他人と自分を比較してしまう

仕事が極端にできないわけではないのに「自分には大した実力はない」と思い込み、自信をなくしてしまう。周りに大きな成果を出した人がいると「自分にはあのような実力は出せない」と思い込み、この先、成長する見込みはないと決めつけてしまう……。このような場合「自己評価が極端に低くなり、他人と自分を比較してしまう」という現象に陥っているかもしれません。

このような状況に陥ると、「自分は仕事ができないと思われている」「あの人より劣っている」「同僚に言われたことが気になって眠れない」というように他人のことが気になってしまうようになります。

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職場で周りのことを気にしないようにする方法は?

職場には、手際よく仕事を進めていく人もいれば、じっくりと粘り強く進めていく人もいます。得意や苦手も人それぞれであり、短期的な成果で優劣が決まるわけではありません。周りのことを気にしないようにするには、失敗に対する恐怖心を克服すること、そして自己評価を高める努力をすることが必要です。それぞれの具体的な取り組み方について理解しておきましょう。

気にしない方法:失敗に対する恐怖心を克服する

失敗に対する恐怖心を克服するには、具体的に行動を変えていくことが必要です。その方法として「失敗しそうな原因を特定して改善する」「物事を楽観的にとらえる」「信頼できる人に相談する」「思い切ってトライする」という4つの取り組み方について紹介します。

1:失敗しそうな原因を特定して改善する

失敗を恐れる人の多くは、「きっと失敗してしまう!」と最初から思い込んでいることが多いものですが、その失敗しそうな原因を探ってみると、十分に改善可能であることが少なくありません。

例えば、人前で話すことに苦手意識を持つ人の場合、緊張するのは性格的なものであり、改善は難しいと決めつけてしまいがちです。しかし、プレゼンの回数を重ね、経験不足を克服していけば、日を追うごとにプレゼンへの苦手意識は軽減していくのです。原因が特定でき、改善方法が分かれば、細かい不安要素を気にしないで前に進むことができるようになります。

2:物事を楽観的にとらえる

失敗を恐れてばかりいると、とても悲観的になってしまい、周りの人の意見や仕事の細かい部分が気になってしまいます。成功するには、楽観的な考え方を身に付けることが必要なのですが、そのためにはまず「成功イメージ」を明確にすることが必要です。

任された仕事を成功させ、周りの人と喜び合っている自分の様子を想像してみてください。仕事の成功を重ねた上で、自分がどんなポジションにつき、どんな生活をしているか、具体的にイメージしてみましょう。こうした成功イメージを明確にすることで、「初めての挑戦だけど、きっとできる!」というポジティブな思考が生まれ、周りのことを気にせずに仕事にまい進できるようになります。

3:信頼できる人に相談する

一人きりで悩み続けていると、「失敗したらどうしよう→きっと失敗する→失敗したら自分の価値はゼロだ」というように、底なし沼の悲観のわなに落ちてしまいます。だからこそ、不安や恐怖の感情を覚えたときには、信頼できる人に相談することが大切です。自分の思いを聞いてもらうだけで、鬱屈(うっくつ)した気持ちが解消します。さらに客観的な立場から意見をもらうことで、一人では気づけないアイデアが湧き出してきます。上司、同僚など、周囲に相談できる人を見つけ、悲観のわなに落ちる前に早めに相談するようにしましょう。

4:思い切ってトライする

「失敗するかもしれない」と弱気になったときにこそ、ぜひ一歩進んでトライしてみましょう。心理学には「恐怖突入」という言葉があります。「怖い」という気持ちが浮かんだときには、あえてその恐怖を感じる対象の中へ突進していくことによって、恐怖心を克服できることがあります。実際に恐怖に感じるものの中に突入してしまえば、強く感じていた恐怖が取り越し苦労であったと気づくことが多いものです。そして、恐怖を感じながらも何かを最後までやり遂げることができれば、大きな自信が生まれます。この自信の積み重ねが、意志を強く持ち続ける原動力になります。

気にしない方法:自己評価を高める

自己評価を高めるには、普段の考え方と行動を変えていくことが必要です。なかでも「他人と自分は違うことを理解する」「小さい目標を設定し、達成していく」「自分の強みを見つけ、自信をつける」「余暇を充実させる」という4つの方法は重要です。それぞれの取り組み方について解説します。

1:他人と自分は違うことを理解する

仕事の進め方、スピード、得意分野は人それぞれに異なります。たとえ他人が自分より早く仕事の成果を上げ、早く昇進をしたとしても、気にしすぎないことです。その人と同じように実践してみても、その手法が自分に合わなければ、成果を上げられなくなってしまいます。

人はそれぞれの個性に合ったやり方で、無理なく仕事を進めていけばよいのです。他人と比較して「あの人のようにやらなければ」と気にしすぎてしまうと、うまくいかなくなってしまいます。人と比べるのではなく、人のやり方から自分に合うものを取り入れて、個性に合った仕事の仕方を見つけることを意識しましょう。

2:小さい目標を設定し、達成していく

成長するには「高い目標」を設定し、努力を続けていくことが必要ですが、高い目標に向けて頑張っているのに一向に成功せず、自己評価が低くなっていく場合は、目の前の「小さい目標」を設定していないことが考えられます。

「小さい目標」とは、半年から1年程度で達成できそうな目標です。例えば「半年後には、この仕事を一人で担当できるようになる」「1年後には○○の試験に合格する」というように、日々の業務や生活を通じて無理なく達成できそうな「小さい目標」を掲げ、コツコツ努力していきましょう。

3:自分の強みを見つけ、自信をつける

「自分には何の取りえもない」と思い込んでいる人にも、必ずその人ならではの「強み」があります。例えば、引っ込み思案で控えめなタイプの人は、いつも陽気で誰とでも話せるタイプの人と自分を比べ、劣等感を抱えがちになるものです。そういうときにこそ、自分が「欠点」と感じる個性を別の角度から捉えてみましょう。これを心理学では「リフレーミング」と呼びます。

「引っ込み思案」という「欠点」を逆方向からリフレーミングすると、「謙虚」「よく考えてから行動する」といった「強み」になります。リフレーミングで欠点を強みに転換し、自分の個性を活かしていきましょう。

4:余暇の時間を充実させる

自己評価の高い人は、仕事を含めた人生をトータルに楽しむことを大切にしています。たとえ毎日忙しくても、ほんの少しでも趣味に没頭する時間を持ち、仕事で疲れた心をメンテナンスしているのです。趣味に没頭すると気分がリフレッシュし、エネルギーを十分にチャージすることができます。趣味がないと思っている人も「これをすると時間を忘れる」と思えることを思い出してみてください。

コーヒーを入れて飲む、靴磨きをする、観葉植物を育てる……そんな時間こそ、大切にしたい趣味です。ぜひ、気持ちを豊かにする時間を少しずつ増やしていきましょう。

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受け流す力(スルースキル)を身に着けることも大切

仕事で受ける批判や叱責には、自分が改めるべき重要なメッセージが含まれています。そうしたメッセージは素直に受け取り、業務改善に役立てていきましょう。ですが、決めつけで失礼なことを言われたり、希望をくじかれるようなことを言われたりする場合、上手に受け流すことも必要です。これを「スルースキル」と呼びます。

スルーするかどうか、判断の基準は「根拠」です。例えば「あなたってこういう人だよね」と言われたときに、根拠がなく言われていると感じるなら、適当に受け流してスルーしましょう。このスルースキルを発揮できれば、いわれのない中傷から自分を守り、自尊心を高めることができます。すると、結果的に自己評価を高めることができます。職場でいろんな周りの意見や目を気にしないようにするためにスルースキルを身につけることはとても大切です。

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まとめ

職場で周りのことが気になってしまうと、自分に自信がなくなり、仕事に集中できなくなってしまうものです。しかし本来、仕事において重要なのは「周りにどう思われるか」ではなく、「業務の精度を上げているか」どうかではないでしょうか。つまり、他人のことを気にする以前に、目の前の仕事に全力で打ち込み、質の高い仕事を完成させることが重要です。日々頑張っている自分の実力、これまで培ってきた仕事の実績を信じて、前進していきましょう。一年、一年と地道に仕事を続けていけば、必ず自信がついていき、周りのことは気にならなくなるでしょう。

【プロフィール】
大美賀 直子(おおみか なおこ)
メンタルケア・コンサルタント。公認心理師、精神保健福祉士(以上、国家資格)、産業カウンセラーの資格を持つ。「こころと人生と人間関係のベストバランス」をテーマに、カウンセリング、講演、執筆活動を行う。働く人のメンタルケアに関する造詣も深く、テレビ、新聞、雑誌、インターネットを中心に情報を発信。企業研修でも好評を得ている。『なぜあの人の働き方は「強くて美しい」のか?』『サイボーグを目指さないことにした働く私の「自分時間」』(アスカビジネス)、『どうして会社に行くのが嫌なのか?』(アスキー新書)などの仕事に関する著書も出版。
大美賀直子|メンタルケア・コンサルタントーこころと人生と人間関係のベストバランスを提案 - 大美賀直子(メンタルケア・コンサルタント)の公式HP (mentalcare555.com)

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