リーダーシップとは? ビジネスにおけるリーダーシップの在り方と鍛え方

ビジネスパーソンが身につけておきたいスキルの一つ「リーダーシップ」。単に管理職になるということだけでなく、プロジェクトを責任を持って推進したり、部署内の若手の育成役になったりと、リーダーシップが必要とされる場面は多くあります。この記事では「リーダー」とは何か、そしてリーダーシップをとるためにどのようなスキルが求められるのかを、ワーク・ライフバランス執行役員の松久さんにご解説いただきます。

リーダーシップとは? 定義を解説

「リーダーシップ」とは、一人では到達することのできない目的地に向けて、周囲に働きかけ、協力を仰ぎながら、共に目的地に到達する力のことを言います。リーダーシップと聞くと「おれについてこい」と背中を見せながら、ぐいぐいとメンバーを統率していくようなイメージを持たれるかもしれませんが、それはあくまで一つの方法であり、リーダーシップのすべてではありません。

そして、リーダーシップを考えるとき忘れがちなのが、「一人ひとりに声をかけながら協力を仰いでいく」というポイントです。自分ひとりで目的地に到達するのではなく、それよりも早く・遠くの目的地にみんなでたどり着こうとするときに必要なスキルなのです。

また、「私はリーダーになるのがどうも苦手で…」とおっしゃるビジネスパーソンもいらっしゃいますが、リーダーシップとは生まれ持った素質ではなく、人生の経験を重ねながら誰もが磨くことのできるスキルであると筆者は考えています。

リーダーシップが今求められている理由

リーダーシップはいま、社会全体で強く求められているスキルの一つです。その背景には、多様性に富んだ社会があります。私たちが働き・暮らす社会はダイバーシティ(多様性)に富んでおり、一人ひとりが異なる価値観・人生観を持っています。

そうした一人ひとりの力をチームワークにつなげ、会社・組織・社会で力を合わせながら事業を進め、社会生活を営んでいく必要があるのです。このとき、チームをワークさせるスキル、リーダーシップがより一層求められるようになってきています。

フォロワーシップ(メンバーシップ)とは?

リーダーシップと対になる言葉として「フォロワーシップ」があります。フォロワーシップとは、リーダーの言動に対し建設的な批判をし、自発的で担当業務以上の仕事をすることと定義されています。

リーダーは常に完璧とは限らないと考え、「もっとこうしてはどうだろうか?」「こんな懸念があるのではないだろうか?」と提言しながら、リーダーとともにチーム全体の成果を最大化させるよう、積極的にチームに関わっていくことを言います。

それぞれの持つ専門性、スキル、経験を最大限に発揮し、チームで仕事の成果を最大化させるために、リーダーシップはもちろんのこと、フォロワーシップも欠かせません。この二つの言葉は上下・優劣の関係ではなく、チームのパフォーマンスに欠かせない並列の関係であると捉えられます。

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リーダー=管理職? リーダーシップが求められる場面

能力の高い若手のビジネスパーソンほど、「自分一人で仕事の成果を導く」と考える傾向を強く持っていると感じます。仕事の評価は、売上・利益といった規模(金額)や社会的な影響力で測られます。すると、「一人で成し遂げたこと」よりも、「チームで成し遂げたこと」の方が大きなインパクトを持っているため、有能であるにも関わらず、大きな成果を出せず、評価されていないといったケースも散見されます。

入社してすぐに求められるリーダーシップ

実は、役職としてリーダーや管理職に着任するもっと前からリーダーシップは求められています。ビジョンや方向性を示し、関係する人たちに声をかけて協力を仰ぎ、枠組みや目標、期限を定めて、進むべき道を示し意思決定することは、多くのビジネスパーソンにとって日常的に求められる重要なスキルなのです。

読者のみなさんも、いま着手している仕事に目を向けてみてください。その仕事の成果をより大きくしたり、もっと短期間で、少ない資源投下で成し遂げたりするためには「誰の・どんな協力が必要」でしょうか。その協力を得るために取る行動こそが、まさにリーダーシップの発揮なのです。

管理職やプロジェクトのリーダーになったとき

入社してすぐに求められるリーダーシップをスキルと捉え、経験を通じて磨き続けていると、管理職やプロジェクトのリーダーとなったときにもスムーズに能力を発揮することができます。本来であれば管理職はチームのマネジメント力やリーダーシップを評価されて着任すべきですが、まだ多くの組織で「プレイヤーとしての成果が大きい」など、功労に向けた褒賞としてのポジションとなっているケースがあります。

このようなケースでは、プレイヤーとしてではなく、マネージャーとしての役割や機能が求められる、といった変化に注目し、自らの働きを変化させていくことが欠かせません。この転換ができないと、プレイヤーとしての個人の成果を今までと同様に追いかけながら、チームでの成果最大化にも注力しなければならなくなり、労働時間は長くなり、疲弊していってしまいます。いうまでもなく、プレイヤーとしてもチームとしても、成果が最大化できているとは言えない状態に陥ります。

リーダーシップの定義でご紹介したように、リーダーシップとは他者の協力を仰ぎ、チームで仕事の成果を最大化させることを言います。そのためには、メンバー一人ひとりのスキルや性格に合わせた、個別対応力が欠かせません。一人ひとりの協力を仰ぐには「同じ声のかけ方」ではうまくいかず、メンバーの意欲を高い状態に維持するにも「同じやり方」ではうまくいきません。メンバー一人ひとりの特徴に合わせて、声のかけ方を変え、任せるタスク変えていく必要があります。

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リーダーシップの種類

リーダーシップとは何か一つの型を示すものではなく、一人ひとりに合った(そして最も重要なことは「そのシーンに合った」)アプローチがあると考えます。さらに、リーダー自身も画一的ではなく多様であり、様々な強み、得意な領域、考え方があります。「いま、自分に求められているリーダーシップとは何だろうか」と考えながら「私のチームがもっと大きな成果を手にするには、どんなリーダーシップを磨くとよいのだろうか」と模索することをお勧めします。

その前提に立ち、リーダーシップに関するいくつか種類(型)をご紹介します。アメリカの心理学者であるダニエル・ゴールマンによる6種類のリーダーシップが最も有名な分類の一つです。(ハーバード・ビジネス・レビュー2018年7月に基づく表現でご紹介します)

強圧型(Coercive)

問題が発生し危機的な状況下にあり、直ちに解決しなければならないときに、最も力を発揮するリーダーシップです。メンバーに対して「従う」ことを求めます。一般的なビジネスシーンでは組織風土に対してマイナスの影響をもたらします。

権威主義型(Authoritative)

プロジェクト創始のタイミングで求められるような、新しいビジョンを必要とする・何かを大きく変革していきたいタイミングで力を発揮するリーダーシップです。ビジョンに向けて周囲の人たちを動かしていきます。

親和型(Affiliative)

感情的な絆を深め、チーム全体の調和を重視するリーダーシップです。一人ひとりをやる気にさせる効果があり、人を重視し、共感や関係性の構築に重きを置きます。

民主主義型(Democratic)

全員の参画や合意形成を重視するリーダーシップです。優秀なメンバーの意見を引き出すことや、賛同・合意を得るときに必要なリーダーシップであると考えます。一人ひとりに「あなたはどう考えますか?」と問いかけていくようなスタイルです。

先導型(Pacesetting)

高い基準を設定してリーダー自らが率先して行動し「さぁ、私のやるようにやってみましょう!」と示していくリーダーシップです。早急に成果を導く必要があるときに効果を発揮するスタイルであると考えられますが、組織風土に対しては「強圧型」と同様にマイナスの影響をもたらします。

コーチ型(Coaching)

人材育成にフィットするリーダーシップのスタイルです。中長期的な能力改善や育成に向いており、リーダーが一人ひとりに共感しながら、伴走していくコーチのような存在となります。

場面によって発揮すべきリーダーシップのあり方は異なる

ゴールマンの研究でも、最高の成果を導いているリーダーは、どれか一つのスタイルを保っているのではなく、その状況に応じて最適なリーダーシップのスタイルを選び、絶えず変えていっていることがわかっています。いま、あなたの周辺の環境を見てみると、どのようなリーダーシップが求められているか、見えてくるのではないでしょうか。

あるいは、まだリーダーシップを発揮する機会が多くないというビジネスパーソンの場合には、「あと役職が2つ上だったとしたら」と考えてみることをお勧めします。

もしあなたが、あと2つ上の役職についていたとしたら、あなたはどのようなリーダーシップのスタイルを選びますか。それはなぜでしょうか。そしてそのスタイルは、現在のその役職の方のスタイルと一致しますか? 違うとすればそれはなぜか考えてみてはいかがでしょうか。このシミュレーションは、現在のリーダーの立場や考えを想像し、メンバー一人ひとりの気持ちにも思いが及びます。あなたのリーダーシップを磨く、絶好の訓練となると考えます。

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リーダーシップを発揮するために必要なスキルと鍛え方

リーダーシップを発揮するためにどのようなスキルが必要なのでしょうか? スキルとその鍛え方について解説していきます。

ポジティブな発言と態度、そして笑顔

みなさんのこれまでの社会人経験で、仕事をしやすいと感じ、相互に信頼関係を築くことができ、尊敬できる、そんなリーダーはいらっしゃいましたか。きっとその方は、一緒にいるだけでパワーをもらえるような、エネルギーの高い方なのではないかと思います。リーダーシップを発揮するときに欠かせない一つ目の要素は、ポジティブであるということ。

その逆を考えるとわかりやすいのですが、悲観的で元気がなく、愚痴ばかりこぼし、一緒に話しているだけで消耗するような人が、すばらしいリーダーシップを発揮できるとは考えにくいのではないかと思います(ときおり弱音を吐くような人間らしい様子を見せてくれて、人としての魅力を感じさせてくれるリーダーがいるのも事実ですが、それは「ときおり」であることがポイントです)。

メンバーと過ごすときに、自分自身のエネルギーが高い状態を維持することが、リーダーシップの第一歩であると考えます。そのためには、心身の健康が何より欠かせず、タスクに追われて余裕のない状態や睡眠不足、お酒の飲みすぎによる体調不良などがないように心がけましょう。そして能動的で悲観的にものごとをとらえるのではなく、主体的で楽観的かつ論理的にものごとをとらえる訓練をしておきましょう。

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メンバーを観察する力

優れたリーダーは、その対象がメンバーであろうとクライアントであろうと、相手のことをよく観察しています。話した内容をよく覚えていて、子どもの名前、最近観た映画、いま注力している仕事やプロジェクトのことなどがふとした会話のなかで出てくるものです。

意図している/していないかに関わらず、こういった観察する力を持っているリーダーは、メンバーに対して「あなたのことを見ていますよ」「応援していますよ」「困ったことがあったらいつでも相談にのりますよ」というメッセージを、日常的なコミュニケーションを通じて伝えることができています。

この「観察する力」を磨くためにできることは、思い込みを捨て、相手に好奇心を持つことです。筆者の大好きなエイブラハム・リンカーンの名言をご紹介します。

「私はあの男のことがあまり好きではない。だから私はもっと彼のことをよく知る必要があるのだ」

人は多くの場合、「あの人はこういう人」とラベルを貼ってしまい、一度貼ったラベルを見直すことはめったにありません。「なぜこういう行動なのだろう? 態度なのだろう?」と相手に好奇心を持ってみると、もっと多くのことを観察できるはずです。

プレゼンテーション力

リーダーシップの重要な行動のひとつが「他者の協力を仰ぐこと」です。優れたリーダーは人を誘うのがとても上手です。プレゼンテーションと表現すると「多くの人の前でスピーチをする」といったイメージを持つかもしれませんが、決してそれだけではありません。1対1のコミュニケーションでも、1対大人数の「プレゼン」でも、プレゼンテーションです。プレゼンテーションとは、相手に端的に伝え、相手を動かすスキルのことを言います。「わかりやすく話す」だけでは不十分であり「相手を動かす」ことができてこそ、なのです。当然のことながら、エレベーターホールでのちょっとした会話、友人や家族とのやりとりであっても、プレゼンテーション力が求められているシーンがあります。

すぐにできる訓練の方法は「人を誘う」です。どんな些細なことでもかまいません。「一緒にコーヒーを取りにいかない?」「ランチに行こうよ」など、「誘うことに慣れる」から始めましょう。

次にプレゼンテーションスキルを磨きましょう。ビジネスシーンだけではなく、プライベートな時間でも「端的に伝えて相手を動かす」ことは練習が可能です。このときのコツは「相手の課題を解決する」に意識を向けることです。相手のことをよく知っていないとできないということもお分かりいただけるかと思います。

リーダーシップを高める近道は、フィードバックをもらうこと

「リーダーシップ」とは、どのような仕事をされている方でもよく聞く言葉であり、よく使われる言葉の一つなのではないかと思います。ただ「その定義」については、人によって異なるものであり、いつの間にか「得意・苦手」といった種類に分類されていたりもする言葉です。

リーダーシップとは後天的に身につけることのできるスキルであり、そのスタイルは6種類もあり、状況に応じて使い分けていくことが、チームの仕事の最大化につながる、といった考え方をご紹介しました。

あなたはこれから、どんなリーダーシップを発揮していきますか? それはどのような成果を手にしたいからでしょうか。ぜひこのあと、具体的な一歩を踏み出してみてください。

そのときお勧めの方法は、周囲からフィードバックをもらうこと・常にもらえるようにしておくことです。筆者自身もリーダーシップについて、もっと磨く必要があると感じているビジネスパーソンの一人です。うまく使い分けることができなかったり、意図せずメンバーの意欲をそいでしまったりすることが、ときにはあります。ただ、そのときに「松久さん、そのやり方は私の意欲をそぎます」とメンバーが教えてくれる関係性を作っておくことが、何より重要であると考えています。

ぜひあなたも、自分自身のリーダーシップのあり方について振り返りながら、周囲の人たちからもフィードバックをもらい、優れたリーダーシップを手に入れましょう。

【プロフィール】
松久晃士(まつひさ こうじ)
株式会社ワーク・ライフバランス執行役員。二児の父。1万5千名以上のビジネスパーソンに働き方改革のアドバイスを提供。中央省庁・自治体・警察組織・研究機関など特殊性の高い業種・職種における働き方改革の支援にも定評がある。2016年から静岡県三島市に移住し、家族4人で地域活動などにも積極的に参加する。在宅勤務と長距離通勤を織り交ぜながら自らのワーク・ライフバランスを整え、累計10カ月にわたる育児休業経験もあるため、働き方改革に関して独自の目線と実体験を有する。
松久晃士|ワーク・ライフバランス公式プロフィールページ

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