情報収集力を高めるコツは? 仕事での活用術や注意点を解説

ビジネスにおける情報収集は、仕事で成果を出すための仮説立てや検証に必要です。効果的な情報収集を行うために、その手順やコツ、情報収集スキルを鍛える方法について解説します。

情報収集力を高めるコツは? 仕事での活用術や注意点を解説

企画提案の参考になりそうな情報を集めたり、会議で相手を十分に説得するための根拠となる情報が必要になったりと、ビジネスを円滑に進めるには情報収集が必要になります。今回は、人材育成事業会社で代表取締役を務める高田貴久さん監修のもと、情報収集の重要性をはじめ、その手順やコツ、情報収集スキルを鍛える方法について解説します。

ビジネスにおける情報収集の重要性とは?

ビジネスにおける情報収集の重要性とは?

ビジネスでは「成果」が求められ、成果を出せない企業は淘汰されてしまいます。ビジネスでの情報収集は、日常的に行っている情報収集と異なり、成果を出すために情報収集の目的を明確に設定することが重要になります。その目的とは主に「仮説を立てるため」と「出た仮説を検証するため」の2種類です。それぞれの詳細について見ていきましょう。

ビジネスにおける情報収集の目的①仮説を立てるため

ビジネスを円滑に進めていくためには、仮説を立てる必要があります。ここでいう仮説とは「たぶん、こうじゃないかな」という自分なりの考えのことで、仮説を多く立てられると自分が携わっている商材やサービス・業務の改善に役立つため、結果的に仕事の成果アップにもつながります。

ビジネスでは仮説を立てるシーンが多いですが、仮説は情報収集によって立てることができます。例えば、商品開発なら他社のヒット商品の傾向をもとに「どのような新商品を売るべきか」を考えたり、社内であれば日頃の会話をもとに「上司はこの提案なら聞いてくれるはずだ」と考える場合などです。しかし、情報が集まっていない状態では、仮説ではなく「当てずっぽう」になってしまうので、仮説を立てるために情報収集を行う必要があるのです。

仮説を立てるための情報収集を行う際には、アンテナを高く持ち、情報への感度を高め、役立ちそうな情報を敏感に集めるようにしましょう。加えて、「どんな人が、こんなときに、どうしたいのか」といった目線から考えられると、自分なりの仮説が立てられるようになります。

ビジネスにおける情報収集の目的②出た仮説を検証するため

仮説を立てたあと、その内容が正しいかどうかを確かめるために「検証」を行います。検証の方法は、仮説の内容を事前に下調べをして、本当にそのような仮説が実現できるかを確かめなければなりません。なので、仮説を検証するための情報収集が必要になるのです。

例えば、先述したような商品開発の場合で「この新商品を売るべき」と仮説を立てて社内で提案を行う際、試作品に対する顧客のアンケート結果や製造コストの情報など「本当にそう言えるのか」という情報が必要になります。この情報がなければ、仮説の正当性を伝えることができません。「どうしてこの新商品は売れるのか」「この新商品が売れるとどのくらいの利益がでるのか」など、検証するためには仮説を立てた時よりも、もっと広く緻密な情報収集が必要になるでしょう。

仮説検証の具体的な方法としては、自分が立てた仮説をテスト実施したり、アンケートやインタビューでニーズ調査やヒアリングを行う方法などが挙げられます。

情報には種類がある

情報には種類がある

情報収集によって得られる情報は4種類に分類できます。それぞれの特徴とメリット・デメリットについて見ていきましょう。

定量情報

生産数や販売数、アナリティクスなどの数字で表せる情報をさし、情報の大小や増減を説明する場合に説得力を持たせられるという特徴があります。しかし、定量情報を使用して「満足と答えたお客さまは97%」という説明をすると、「どう満足しているのか」がわからず、臨場感や現場感が伝わらないというデメリットもあります。ただし、数字は解釈がブレにくいので、相手を説得する場面に適した情報です。

定性情報

数値化ができる定量情報以外の文字や画像、映像などで表せる情報のことで、数字では表わせられないイメージを相手に伝えることができます。ただし、例えば「多くのお客さまから肌のはりが良くなったとコメントをいただいています」と聞いても人数や効果の度合いがわかりにくいというように、イメージのみで具体性がないというデメリットがあります。定性情報は臨場感を伝えて、感性に訴える場面や仮説を立てていく際に有効な情報です。

一次情報

アンケートやインタビュー調査など、自分の足で調査し、直接取ってきた情報のことです。自ら取った情報なので説得力があり、欲しい情報を手にしやすいのが特徴です。一方で、手間がかかり、自分に知見がなければ入手できないというデメリットもあります。一次情報はほかと差別化したい場合や仮説の検証のために不可欠な情報を集める際に適した情報です。

二次情報

テレビや新聞などのマスコミ、インターネットなど、一次情報をまとめ直した情報のことです。手軽に入手できる一方で、間接的な情報のため、恣意性が入っている可能性もあり、信ぴょう性が薄いというデメリットもあります。二次情報は迅速に調べたい場合や概要をつかみたい場合に向いている情報です。

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ビジネスにおける情報収集の手順

ビジネスにおける情報収集の手順

ビジネスにおける情報収集はどのように行えばよいのでしょうか。ここでは、情報収集の基本の手順について紹介していきます。

STEP①情報をもれなくだぶりなく集める

ビジネスにおける情報収集では、情報を「もれ」や「だぶり」なく集めることが重要です。情報を収集する際にもれが生じると、間違った答えを導いてしまったり、説得力が弱くなったりする可能性があります。

例えば営業の場合、顧客や商品の情報を完璧に押さえられていても、景気や競合の動向が押さえられていなければ、ニーズを測ることができず、思うような成果になかなかつながらない場合があります。

また、情報収集の際に同じような情報に当たってしまう、情報のだぶりが起こると、必要以上に情報の量が増えてしまい、どれが有用な情報なのかわかりづらくなって余計に収集に時間がかかったり、情報を読み間違えたりしてしまいます。情報は集め出すとキリがないので、集めた情報をどのように活用するのか、より具体的な目的を持ったうえで、もれなくだぶりなく集めるようにしましょう。

STEP②集めたなかから「強い情報」を探す

情報をもれなく、だぶりなく集めたあとは、そのなかから「強い情報」を探しましょう。強い情報とは、信ぴょう性の高い情報のことをいいます。強い情報の代表例としては、数字で表す「定量情報」や自ら実証した「一次情報」、権威のある人や専門家が提供する「権威者情報」などが挙げられます。

ただし、強い情報は常に集められるわけではありません。その場合、一つでは弱い情報でも複数を組み合わせて強くすることができます。例えば、店舗に営業をかける際の情報収集で、店舗のホームページ情報(定性・二次情報)だけではそこまで強い情報とはなりません。しかし、その店舗の財務情報(定量・二次情報)や、店長への直接のインタビュー結果(定性・一次情報)を加えると情報の裏付けがなされ、強化されるので、商談が成功につながりやすくなるのです。

STEP③どんな情報源にあたったのか明確にしておく

収集した情報は、情報源を明確にしておくことが大切です。その情報がどこからとったものなのかはっきりしていなければ、立てた仮説の信ぴょう性が確保できません。情報源を明確にすることで、収集した情報で組み立てた仮説をより強固なものにできるでしょう。

また、ビジネスでは顧客や上司に情報を求められて情報収集をした際に「情報がない」というケースも多々あります。その場合、情報源や検索で使用したキーワードなどを提示して「情報がない」という証明ができないと、「調べ方が悪い」と思われてしまう可能性があります。このケースでは、調べ方の観点のアドバイスや意見をもらうためにも、どんな情報源にあたったのかを明確にし、顧客や上司に提示できた方がいいでしょう。

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ビジネスで情報収集が必要な場面は?

ビジネスで情報収集が必要な場面は?

ビジネスにおいて情報収集はどのような場面で必要となるのでしょうか。ここでは3つの場面を紹介します。

自分なりの仮説をつくる場面

ビジネスでは自分で仮説を立て、上司や顧客に提案を行う場面がありますが、情報収集ができていなければ、仮説を立てることが難しくなります。仮説を立てる際には情報収集が必須であり、アンテナや感度を高めて集められると、仮説のもととなる発想が生まれやすくなります。仮説がたくさん立てられるようになれば、仕事の成果に結びつきやすくなるでしょう。

行動に移す前に確かめる場面

仮説を立てたあと、上司や顧客へ提案する前に相手が本当に納得してくれるのかどうか、事前の検証をするのに情報収集が必要です。仮説に対して周囲の意見を聞いたり、過去の提案内容に目を通したりといった方法で情報を集めましょう。検証を行うことによって、仮説が当たる確率が上がり、ぶっつけ本番での失敗を防止できます。

他人を説得する場面

ビジネスで自分の意見を通して仕事を進めたい場合、強い情報を収集し、それらを組み合わせて相手を説得する必要があります。自分の意見だけでなく、社員から収集した多くの情報や、経営陣の意見、現場のヒアリングなどを組み合わせ、情報をより強化していきましょう。

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情報収集に使える主な情報源

情報収集に使える主な情報源

情報はさまざまな情報源から収集します。情報源にはそれぞれ特徴があるため、状況に応じて使い分けることが大切です。主な情報源の特徴について見ていきましょう。

インターネットで検索する

インターネットは手軽かつ迅速に情報を集められます。口コミのようなサンプルの多い情報や最新の情報が手に入る一方で、古い情報も混在しているため、情報の鮮度に差があるのが特徴です。加えて、インターネットではその情報が信頼できるものなのかどうか、情報ソースを確認する必要もあります。

マスメディア(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ)で最新情報を得る

マスメディアからはある程度信ぴょう性の高い情報をまとめて入手できますが、情報が切り取られて報道されるなど、メディアの恣意性が入っている場合があります。加えて、それぞれのメディアの観点でまとめられた情報なので、自分が欲しい切り口の情報が得られないこともあるでしょう。

書籍を読む

書籍は一定分野の情報に特化した著者によって執筆されているので、情報量や密度の濃い情報がまとめられているという特徴があります。その一方で、書籍のボリュームにもよりますが、情報の取得に時間がかかったり、本の出版には一定時間を要するため情報の鮮度が古くなってしまったりなどのデメリットもあります。

公的機関の公開資料を読む

国や自治体などの公的機関の出した情報は、信ぴょう性が高く、広範囲かつ定量的で、継続的な情報が手に入ります。しかし、情報だけで示唆がないことが多いので、自分なりに読み解く必要があります。

SNSを活用する

インターネットユーザーの一部を切り取った情報源であるSNSは、投稿のしやすさから、鮮度の高い情報が得られます。一般人が広く活用しているため、生の声が得られやすい一方で、フェイクニュースなどの誤った情報も混ざっており、信ぴょう性が低いという特徴があります。また、SNSでは似た考えを持った人の情報が集まりやすいことにも注意しなければなりません。

生成AIを使う

生成AIは、質問に対してインターネット上の膨大な情報をまとめ直して回答してくれるものです。自分で検索するよりも効率的に情報を収集できますが、質問が的確でなければ、ほしい情報が得られなかったり、誤った情報が出てきたりする可能性があります。さらに、機械学習がベースになっているため、目新しい情報が得られにくい点もデメリットに挙げられます。

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情報収集をする際のコツは?

情報収集をする際のコツは?

ビジネスにおいて情報収集をうまく行うには、どのようなことを意識すればいいのでしょうか。それぞれ詳しく見ていきましょう。

目的意識を明確に持っておく

情報収集を行う際、目的を明確にしなければ、必要な情報がどれなのかわからなくなってしまいます。無目的な情報収集は、有用な情報を見逃してしまう状況にもなりかねません。目的意識を持つことで情報感度を高められ、有用な情報に反応しやすくなります。

自分が使える情報源を知っておく

日常的にパソコンやスマホに触れていると、インターネットやメディア、SNSが身近な情報源に感じるかもしれません。しかし、官公庁の統計資料や業界の専門雑誌、調査会社のレポートなど、普段触れる機会のない情報源についても知っておくと、ビジネスにおいて差別化が図れ、同僚などと差をつけることができるでしょう。

より強い情報を集め続ける

ビジネスで仮説や主張をより強くするには、強い情報をいくつか組み合わせる必要があります。はじめは身近で手に入りやすい情報から集めていくことになるかもしれませんが、そこで終わりにせず、さまざまな情報源にあたって強い情報を集め続けましょう。複数の強い情報を集め続けることは、あらゆるビジネスにおいて、多くの場合、課題解決のヒントになるケースもあります。

最初から手間をかけすぎない

インタビューやアンケートなど自ら情報を取る一次情報は、仮説を検証するために有効ですが、調査票の作成には多くの時間やリソースがかかってしまいます。一次情報を取りにいく前に、まずは二次情報を収集し仮説を立てるようにしましょう。一次情報は、二次情報の検証をするために収集するという意識をしておくことが大切です。

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情報収集がうまい人の特徴

情報収集がうまい人の特徴

情報収集をうまく行う人にはどのような特徴があるのでしょうか。ここでは主だったものを3つ解説します。

仕事を楽しみながら積極的に取り組んでいる人

働いていると、やりたくない仕事や面倒な仕事を担当することもあるでしょう。「やらされている」と思いながら漫然と仕事をしていると、目的意識が芽生えにくく、情報感度が低くなってしまいます。この状態では、自分なりの仮説が立てられず、仕事の成果にもつながりません。その点、前向きに考えて仕事を楽しみ、積極的に取り組める人ほど、情報感度が高い状態を維持できるため、効率的な情報収集ができるのです。

交流範囲が広く多様な価値観に触れている人

同世代や仲のいい人のみと付き合ったり、SNSでのみ情報収集を行ったりしていると、考え方が偏って限られた情報のなかで判断・行動してしまう可能性が高まります。世代や価値観が異なる人と広く交流したり、あえて本や雑誌、新聞といった多様な価値観に触れたりしている人ほど、より広く、うまく情報収集ができています。

いろいろな角度から常に考え続けている人

情報収集によって集まった情報は、仮説を立てるために必要な素材となります。そのため、情報は集めたあとが肝心なのです。情報収集をして集まった情報や、組み立てた仮説の「情報は正しいのか」「仮説は本当にそうなるのか」「もっと違う角度はないか」といろいろな角度から常に考え続けている人は、より広く多角的な情報を手に入れることができます。

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情報収集スキルを鍛える方法

情報収集スキルを鍛える方法

情報収集スキルは、仕事や生活における意識の持ち方で鍛えられます。実際にどのようなことを意識すればいいのか、それぞれ見ていきましょう。

将来を想像し情報感度を高める

情報収集を行う際、情報感度が落ちてしまうことを避けなければなりません。特に若手のビジネスパーソンの場合、仕事が忙しかったり、仕事に慣れるまでは受け身で働いてしまう時期があることで、どうしても情報感度が落ちてしまいがちです。まずは、長い時間軸で将来どのようなことを達成したいのか、何に興味をもっているのかを考えてみましょう。自分のめざす将来が見えてくると、そのためのアンテナが立つので、情報も集まりやすくなります。前向きに仕事に取り組み、情報感度を高められるよう意識しましょう。

積極的に「反対意見」に耳を傾ける

自分と同じ意見の人の話だけを聞いていると、価値観が固まってしまいます。「みんなそう思っているはず」「賛成のはず」という考えは、自ら情報収集をしなくなったり、反対意見が出た際に、説得力のある発言ができなくなることにつながります。あえて反対意見をはじめとした異なる価値観に触れることで、その意見を説得するために必要な情報に気がつけるようになります。そのため、世代の違う人や社外の人と交流するなど、積極的に反対意見に耳を傾けるようにしましょう。

報道内容や記事が正しいのかしっかりと検証する

新聞や雑誌、インターネットから得られる情報は、誰かが恣意的にまとめていることもあります。そのため、メディアから集めた情報をすべて鵜呑みにして信用するのではなく、ときには「本当に正しいのか」と疑う視点を持ち、異なる考え方や別の側面からも情報を収集し、その内容について検証してみましょう。自分なりに考えて、真偽を確かめることが情報収集のスキル向上にもつながります。

情報収集はあらゆるビジネスの場面で活用できる

ビジネスにおいて情報収集は、仕事の成果を大きく左右する重要な能力であり、集めた情報は、自分のキャリアを切り拓くための武器になり得ます。これまで解説してきたように、さまざまな情報源のなかからもれやだぶりなく情報を効率的に収集し、集めた情報を客観的に整理してうまく組み合わせ、目的を達成するための武器として活用しましょう。情報収集のスキルはあらゆるビジネスの場面に通用します。活躍できれば、多くの信頼を得ることにもつながるでしょう。

監修:株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズ 代表取締役CEO 高田貴久
東京大学理科1類中退・京都大学法学部卒業後、戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトル(ジャパン)でプロジェクトリーダー・教育担当・採用担当を務める。その後マブチモーター株式会社へ転職し、経営企画部員・事業基盤改革推進本部 本部長補佐として改革を推進。ボストン・コンサルティング・グループを経て、2006年に起業。現在は約100名の社員とともにトヨタ自動車をはじめとした幅広い企業で人材育成を手掛けている。

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