洞察力とは? 身につけると見えてくる新たなビジネスフェーズ

ビジネスにおいて、いかなるときも「目」に見えているものがすべてではありません。顧客の潜在的なニーズや、メンバー間のやりとりにおいても、目に見えない物事を捉えるには「洞察力」が必要です。では、どうやって洞察力を身に付けることができるのでしょうか。公認心理師の大美賀直子さんにお聞きしました。

洞察力とは

ビジネスでは質の高い仕事の成果を残すために、洞察力を活用することが求められています。洞察力とは、「物事の本質を深く見通す力」のことです。洞察力を高めると物事の本質を読み解くことができるため、問題を根本から解決したり、人々が心から欲しているものを見抜くことができます。

ある物事の中から本質の理解につながるサインを捉えて、その意味を読み解くこと。ある現象に潜む重要な意味を見出し、それらを説明できること。そうした力を発揮すると、「洞察力の高い人」であると評価されます。

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洞察力と観察力・分析力の違いは?

洞察力と似た言葉に「観察力」と「分析力」があります。観察力とは、目に見えるものをありのままに捉える力のことです。例えば、人がいつ、どこで、何をしていたのか、ある現象がいつ起こり、どのように推移していくのかを、細やかに見ていく力のことを「観察力」と呼びます。

分析力とは、ある物事や現象を構成する要素を見出し、それらの要素がどのように作用しながら物事や現象が成り立っているのかを明らかにする力のことです。分析の際に用いるのは、取材や調査などの客観的に把握できる事実によって導き出された情報やデータであり、それらをもとにして物事や現象を説明、解釈できる力のことを、「分析力」と呼びます。

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洞察力があるとなぜビジネスに役立つのか

洞察力はビジネスにおいてなぜ求められ、どのように役に立っているのでしょう。ビジネスにおいて、洞察力を磨くメリットを三つの点から解説します。

洞察力を身に付けるメリット①:顧客のニーズを深く読み取れる

顧客は自分が何を欲しているのか、はっきり理解できているわけではありません。心の中には自分にも気付かない潜在的なニーズがあり、それに符合したものに出合えたときに、初めて自分が心から欲していたものに気付けることも多いのです。

そのため、サービスを提供する側が顧客の心情を洞察し、真の、潜在的なニーズを満たすものを提示したり具現化したりすることができると、顧客満足度の高いサービスを提供することができます。

洞察力を身に付けるメリット②:物事の背景を捉え的確な現状把握ができる

例えば、現在流行しているものには、それが人々の心を動かすまでの経緯や社会的、心理的な背景があります。こうした流行などの現象が人々に支持される経緯や背景について深く考え、なぜその現象が起きているのかを洞察できると、今、人々に求められているものを的確に把握することができます。

洞察力を身につけるメリット③:高いレベルの問題解決ができる

トラブル発生後に表面的な解決だけで終了してしまうと、しばしば同じようなトラブルが繰り返されてしまいます。例えば、人間関係の衝突が起こったときに、表面的な和解だけで解決済みと判断していると、似たような衝突が再発してしまいます。

表面的には和解しているように見えていても、お互いに本心ではどう思っているのか、根本的な解決には何が必要なのかを洞察できると、トラブルの再発を未然に防ぐことができます。

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洞察力がないのはなぜ? 低い人の特徴とは

仕事をする上で洞察力を活用できないと、進むべき方向を見失い、間違った判断をしてしまうことがあります。洞察力の低い人がとりやすい行動とその理由を解説します。

自分に都合よく解釈してしまうから

問題を解決する際に、どのような理由によってその問題が生じたのかを考える習慣がない人は、洞察力が育っていきません。そのままでいると、例えばミスをしたときに、原因に向き合って反省することもなくなり、しばしば「たまたま運が悪かったから」「注意してくれる人がいなかったから」などと状況や他人のせいにしてしまいます。このようにして自分に都合よく解釈していると、同じようなミスが繰り返されてしまいます。

相手の立場に立って考える習慣がないから

人の行動には何らかの理由がありますが、洞察力の低い人はその理由について目を向け、深く考えることを怠ってしまいます。そのため、何かの不具合が発生したときに、当事者の立場や心情を洞察せずに、一方的に非難してしまうことがしばしば起こります。

例えば部下が担当する現場で不具合が生じたときに、それに気付けなかったのはなぜか、部下の立場に立って考えることを怠って「気がゆるんでいたせいだ」「たるんでいるからだ」などと短絡的に思い込んでしまったりします。

人の意見を聞かず参考にしないから

洞察力の低い人は、物事を判断する際に他人の意見に耳を傾けず、自分の価値観だけを頼りに進めてしまう傾向があります。

自分がこれで良いと思ったものに対して周囲の人が難色を示したときには、その意見を参考に進むべき方向について洞察することが重要です。自分の価値観だけで進めてしまうことによって、正しい方向からどんどんずれていき、取り返しのつかないことになってしまうことがあります。

洞察力が鋭い人の特徴は?

続いてビジネスにおいて、洞察力の鋭い人によく見られる二つの言動を紹介します。

洞察力が鋭い人の特徴①決断までに十分な時間をかける

雰囲気や感情に流されて物事を判断せず、あらゆる可能性について多角的な方向から検討するのが、洞察力が鋭い人の特徴です。多数派の意見や場の流れにしたがって早計に決断を下さず、物事を一歩引いた目で捉え、十分に考える時間をとっています。そのため、決断までには比較的時間がかかりますが、その分、ミスの少ない的確な行動をとることができます。

洞察力が鋭い人の特徴②冷静な判断によって周囲の信頼を得ている

洞察力が鋭い人は物事を多角的な方向から検討し、冷静に判断することができるため、周囲の信頼を得ています。「これが人気なので、お勧めです」などと流行などの現象だけを捉えて安易に勧めることはせず、「こういう理由から、お客様には○○の方をお勧めします」というように洞察により得られた理由を示して説明するため、顧客や消費者も信頼して商品やサービスを利用することができます。

洞察力の鍛え方

洞察力は、特別な人だけに備わった才能ではありません。意識次第で、誰でも洞察力を高めることができるのです。洞察力を鍛えるために、今日からできる三つの自己研鑽のポイントを解説します。

洞察力の鍛え方①:実際に目で見て、肌で感じてサインを感じ取る

人間の態度や行動の中から微細なサインを読み取りながら、まだ言葉にされていない真のニーズをつかんでいくことが洞察力を磨くためには必要です。そのためにも、サービスを提供する前には顧客と顔を合わせ、商品を開発する前にはモニターと直接会って、相手の反応の中から本音を探っていくことが大切です。

洞察力の鍛え方②:起こっている現象の背景に目を向ける

何らかの問題が生じたときに、担当者だけを責めていても洞察力は磨かれません。問題が生じた経緯についてあらゆる方向から考えること、つまり、起こっている現象の背景にあるものに目を向けていくと、問題の原因について深く洞察し、問題を根本から解決する力を伸ばすことができます。

洞察力の鍛え方③:「なぜそうなるのか」という問いを重視する

批判や注意を受けたときに、その指摘を疑いもなく受け入れたり、指摘した相手を恨んだりせず、「なぜそう言われたのだろう」と自分に問いかけて自分の行動を振り返っていくと、洞察力は磨かれていきます。耳の痛い言葉こそ、逃げずにしっかりと向き合い、そのように言われた理由について深く考えていくのが洞察力を高めるポイントです。

洞察力を磨くとミスの少ない確実な仕事が身に付く

洞察力を磨いていくと物事の判断が的確になり、ミスの少ない確実な仕事ができるようになります。冷静な仕事ぶりや含蓄のある説明、質の高い仕事の成果によって周囲の人にも信頼され、挑戦しがいのある仕事を任せてもらえるようになるでしょう。顧客や消費者の真意をつかみ、人々が心から求める商品やサービスを提供できるようになるためにも、日々の業務を通じて着実に洞察力を鍛えていきましょう。

【プロフィール】
大美賀 直子(おおみか なおこ)
メンタルケア・コンサルタント。公認心理師、精神保健福祉士(以上、国家資格)、産業カウンセラーの資格を持つ。「こころと人生と人間関係のベストバランス」をテーマに、カウンセリング、講演、執筆活動を行う。働く人のメンタルケアに関する造詣も深く、テレビ、新聞、雑誌、インターネットを中心に情報を発信。企業研修でも好評を得ている。『なぜあの人の働き方は「強くて美しい」のか?』『サイボーグを目指さないことにした働く私の「自分時間」』(アスカビジネス)、『どうして会社に行くのが嫌なのか?』(アスキー新書)などの仕事に関する著書も出版。
大美賀直子|メンタルケア・コンサルタントーこころと人生と人間関係のベストバランスを提案 - 大美賀直子(メンタルケア・コンサルタント)の公式HP (mentalcare555.com)

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