朝活のプロに聞く! 仕事にも将来にもポジティブに向き合うための「モーニングルーティン」

目の前のタスクをこなすだけで時間が過ぎてしまい、毎日同じことの繰り返し……。そんな日々の中で迎える朝って、つらいですよね。そのお悩み、「朝の時間の使い方」で解決できるかもしれません。仕事をスムーズにこなし、将来を見据えたプランまで導き出せる過ごし方について、『「朝1時間」ですべてが変わる モーニングルーティン』(日本実業出版社)の著者、池田千恵さんに伺います。

朝活のプロに聞く! 仕事にも将来にもポジティブに向き合うための「モーニングルーティン」

朝の時間をあなどるなかれ。朝活で現在も未来も変えられる!

朝の時間をあなどるなかれ。朝活で現在も未来も変えられる!

ギリギリまで寝て、鬱屈としたまま仕事をスタートさせる。そんな朝を過ごすビジネスパーソンは多いのではないでしょうか。池田さんのもとにも、さまざまな朝時間のお悩みが届いているそう。

「『早起きしたいけれど眠くて無理』『スマホやテレビをダラダラ見て、意味のない時間を過ごしてしまう』といった声が多いですね。その他、持ち帰った仕事に手を付けて、いわゆる朝残業をするだけの時間になって疲れてしまう、という悩みも聞かれます」(池田千恵さん、以下同)

朝の「タスク整理」で、仕事の効率が格段にアップ!

池田さんは、仕事とポジティブに向き合うために、朝時間の活用を推奨しています。それはなぜなのか、理由を聞いてみました。

「例えば、午前9時には本格的に仕事を始めたい……と思っているとしましょう。9時になってからおもむろにコーヒーを入れたり、テーブルの掃除を始めたりすると、がっつり仕事に取り組めるのは、10時頃からになってしまいますよね。始業後すぐにスタートダッシュできるように、1日の予定を確認してやるべきことを整理しておけば、すぐに仕事に取り掛かれて、効率的です。

これは前日の終業前にやってもいいのですが、さまざまな仕事をこなし、疲弊している時間帯の脳は、何をするにも効率が悪い状態であることが多い、といわれています。以前、精神科医の医師とお仕事で対談した際に聞いたのは、“脳は飽きてしまう”という事実。生産的なことをするには、朝、脳が飽きていない状態の時がベストだと思います」

早起きしなくてもいい! 本格的に仕事を始める前の1時間を確保して

確かに、事前にやるべきことをはっきりとさせておけば、無駄のない時間の使い方ができそうです。でも早起きするとなると、ハードルが高いな……と思う人が多いかもしれません。

「いえ、必ずしも早朝に起きる必要はありませんよ。私が定義している朝活は『本格的に仕事を始める前の1時間を使う』というもの。つまり、お昼の12時からしっかり作業したいのであれば、11時からでも朝活と言っていいんです」

毎朝、未来の自分を思い描いて自己成長につなげる

池田さんは著書の中で、日々の仕事の効率アップだけでなく、「未来への種まき」としても朝の時間を使うことが有効だとおっしゃっています。それは、どのような意味を持っているのでしょうか。

「私が提唱するモーニングルーティンは、その日のタスク整理と、未来への種まきがセットになったもの。目の前の仕事をこなすだけの毎日では、キャリアアップや自己成長について考える暇がありませんよね。それに悩んでいる人、つまりは『モヤキャリ』状態に陥っている人も多いはずです。

20~30代は何かと仕事の悩みを抱えやすい時期ですから、モヤモヤしてしまうのは仕方ありません。でも、何にモヤモヤしているのか、分からないまま過ごし続けるのは良くありません。理由を明らかにして行動を変えて、解決のために動くことが重要です。その行動を変える要素の1つとして、朝の時間を有効に使うことを、私はおすすめしていますね」

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朝活の極意は、1時間を『have to』と『want』の2つに分けること

朝活の極意は、1時間を『have to』と『want』の2つに分けること

では、実際のモーニングルーティンの設定方法について、詳しく見ていきましょう。朝活に必要な時間として池田さんが提唱しているのは、たった1時間です。

「朝1時間」のルーティン化が最適な理由

作業開始前のモーニングルーティンは、なぜ1時間が最適なのでしょうか?

「1時間なら、普段の生活習慣を少し変えれば時間を作ることができますし、集中力を保つことも可能なためです。“25分集中して5分休む”を繰り返すことで、生産性が上がると言われる『ポモドーロ・テクニック』という時間管理術があるのですが、これなら、そこまで長く感じないですよね。理想は1時間ですが、いきなりそんなに頑張れない……という方は、30分でも構いません。

大切なのは、前半を『have to=やらなければならないこと』、後半を『want=やりたいこと』、2つの時間に分けること。『have to』でその日のTO DOを整理し、『want』で将来について考えるのです。

『have to』ばかりやるのは、朝残業と変わりませんし、『want』ばかりやっても、地に足のつかない夢追い人になってしまう。ですから、バランスをとって両輪で時間を使うのがベストです」

目標の解像度を上げつつ、楽しいことから始めてみよう

朝の1時間を確実に確保するためには、どんな工夫をすればいいでしょうか?

「大切なのは、目的を明確にすることと、楽しいことから始めることですね。

まず、“とりあえず早く起きてみるか”といった軽めのモチベーションでは、長く続けるのは難しい可能性があります。『今取り組んでいる仕事で賞をもらう』とか、『TOEICの点数を100点上げる』とか、具体的な目標を定めましょう。

また、しんどいことのためにはなかなか起きられないものです。だから、眠さに負けないくらい、好きなことから取り組み始めるのもおすすめ。いつも夜に見ていた配信ドラマを朝に見るとか、起きられたらちょっと上質なスイーツを食べるとか。自分にご褒美を作るのもいいと思いますよ。

私がよく提案しているのは、『好き100個リスト』を作っておくこと。何でも自分が好きなことを挙げて、リスト化するんです。『やりたいことリスト』だと、どうしても『やらなければいけないこと=have to』に偏ってしまうので、『好き』も一緒に意識するのがポイントですね。まずは『want』の時間にリストを作ることから始めてもいいですし、リストから1つ選んで、朝の時間にやろうと決めて寝る。そうすれば、ワクワクしながら起きられるのではないでしょうか」

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前半30分は、タスクの重要度・緊急度を可視化して効率アップ

前半30分は、タスクの重要度・緊急度を可視化して効率アップ

1時間を30分ずつに分けたうちの、前半30分。『have to』のタスク整理について、詳しく聞きました。

タスクを4分類して、優先順位をつける

漠然とTO DOを書き出すだけではなく、仕分けすることが重要だと、池田さんは語ります。

「書き出したタスクを“緊急度”と“重要度”で4分類して、優先順位をつけます。私の場合、下記のようにまとめていますね。

緊急かつ重要なタスク:『刈り取り:緑』
緊急ではないが重要なタスク:『種まき:赤』
緊急だが重要ではないタスク:『間引き:青』
緊急でも重要でもないタスク:『塩漬け:黒』

このように名前を付けて、色分けしています。なお、ここでタスクをピックアップするとき、仕事とプライベートを分けて考える必要はありません。

ただのTO DOリストだと、数多く消すのが目的になってしまいますが、例えば『塩漬け:黒』をたくさんこなしても、身にはなりません。『刈り取り:緑』や『間引き:青』を効率的にこなし、『塩漬け:黒』はやらない判断をしたり、誰かに任せたりして、『種まき:赤』に時間を割く意識を持つようにしましょう」

大きなタスクは、さらに分解すると取り組みやすい

このようにタスクを仕分けすれば、『間引き:青』や『塩漬け:黒』に追われて、意味のある時間の使い方ができていないなど、反省すべき点が見えてくる、と池田さんは言います。

「青や黒は確かに必須のタスク。でもこれらは効率化、時短化する余地があるものですから、どうすればそれができるか考えましょう。

色分け以外にアドバイスしたいのは、抽象的なタスクを分解して、具体化すること。例えば、『企画書を作る』というタスク設定のままでは、大雑把で何から始めたらいいのかが分かりにくい。これを『企画テーマのキーワードでリサーチする』『リサーチから傾向を探って、要素をまとめる』などの細かなタスクに分けるのです。そうすれば達成度が分かってスケジュールが組みやすくなりますし、達成した実感が湧きやすくなります。それぞれに、どのくらい時間をかけるのかもあらかじめ決めておくと良いでしょう」

後半30分は、なりたい自分を妄想し、やるべきことを構想する

後半30分は、なりたい自分を妄想し、やるべきことを構想する

前半30分の『have to』の時間で、タスクの優先順位をつけた後は、「未来への種まき」の30分です。

半年ほど先を見据えて、戦略的に行動しよう

池田さんいわく、前半30分で可視化した、『種まき:赤』をどう実現するか考えることが、後半の30分では重要なのだそう。

「日々こなさなければならない、緑、青、黒のタスクと向き合っているだけでは、中長期的な計画を立てるのはどうしても難しい。それでは現状は変わりませんから、先を見据えて未来への種まきをすることが大切です。

これには、ガントチャート(時間を横軸に、作業内容を縦軸に配した棒グラフ形式の一覧表)を作るのがおすすめ。『種まき:赤』に仕分けされたタスクに、いつからいつまで取り組むのかを一元化するのです。

まずは、『種まき:赤』のタスクを、自分でできることと、チームや家族など誰かの協力が必要なものに分けます。1人でできることは淡々と遂行すればいいし、協力が必要なものはそのための依頼や根回しをする計画が立てられます。

ポイントは、先ほども少しお話しした通り、仕事とプライベートの両方で考えること。プライベートなイベントもしっかり入れ込むことで、長い目で見て『ここが山だな』『ここは少し手が空くな』といったことが見えてきます」

『種まき:赤』に取り組むための流れを、しっかりと可視化しておくことが重要と言う池田さん。では、どのくらい先まで、見通しを立てておくべきなのでしょうか。

「何年も先のことは考えづらいでしょうから、半年先くらい先までを目安にしましょうか。例えば、“異動をしたい”という『種まき:赤』を抱えているなら、異動制度や条件を調べ、必要な資格を取得したり、異動に有利な経験ができる仕事に就かせてもらえるように上司へ掛け合ったり。少し先のことを、少し戦略的に考えて行動するのが、種まきの役割です」

ワクワクしながら妄想すれば、視点が変わり、道が開ける

最後に、ここまで見てきたモーニングルーティンを継続するコツについて、池田さんに教えてもらいました。

「何よりも楽しむことですね。特に『want』を、私は“妄想タイム”と呼んで楽しんでいるんです。将来の不安を解消するために動くのではなく、価値を生み出す楽しさ、なりたい自分になれる喜びを念頭に置くと、自然とモーニングルーティンは楽しくなってきますよ。妄想を楽しんで、その実現のためにすべきことを構想する。これが大切です」

まとめ

自分が日々やっているあらゆることを、『have to』なのか『want』なのか見極めるクセをつけ、時間の使い方を変える。そして、本当に注力すべき『want』に時間を割き、妄想を実現するために動く。これが、池田さんの提唱するモーニングルーティンです。憂鬱な気持ちを吹き飛ばし、前向きに仕事に取り組むきっかけを、朝の1時間で作っていきましょう!

話を聞いた人:池田千恵 さん
株式会社 朝6時 代表取締役社長・早起きトレーナー・国家資格キャリアコンサルタント。図を活用した思考整理、時間管理手法などを著書や講演、企業研修などで伝えるかたわら、朝時間を有効活用するためのセミナーなどを開催。ベストセラーとなった『「朝4時起き」で、すべてがうまく回りだす!』(マガジンハウス)は、朝4時に起きる「ヨジラー」急増のきっかけに。
X:ikedachie
Instagram:ikedachie

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