- ブレストとは?その概要を分かりやすく解説
- ブレストで得られるメリット
- 理解しておきたい、ブレストを行ううえでのルール
- 効果的なブレストの進め方
- ブレストが失敗してしまうよくある原因とは?
- 機会を見つけて積極的にブレストをしよう
「ブレスト」という言葉を聞いたことがあるものの、具体的なやり方はイメージできないという方もいるのではないでしょうか。本記事では、企業や自治体向けにブレストのワークショップを企画し、進行役としても活躍する北野清晃さんに伺ったお話を基に、ブレストのメリットや効果的な進め方、ありがちな失敗の原因まで分かりやすく解説します。
ブレストとは?その概要を分かりやすく解説
ブレストとは「ブレインストーミング」の略です。その名のとおり、「ブレイン(頭脳)」に「ストーム(嵐)」を呼び起こすという意味に由来しています。
チームなど複数人で集まってアイデアを生み出す方法です。
各メンバーの自由な発想からお互いのブレイン(頭脳)を刺激し合い、より良いアイデアを生み出すことを目的として行います。
具体的な実践方法は下記のとおりです。
①テーマを設定する
②そこから連想されるアイデアを、付箋やホワイトボードに次々と書き出す
③チームでそれらを眺め、アイデアをさらに増やしていく
また近年では、オンライン上で利用できるブレスト用のツールも登場しています。
ブレストはアレックス・F・オズボーンが考案
ブレストの考案者は、米国の実業家、アレックス・F・オズボーンと言われています。彼が広告代理店で実務を行う中で編み出した実務的手法です。
実務的手法ですから、学術的・科学的につくり出された方法ではありません。
しかし、一般用語として使われるくらい社会で広く知られ、多くの企業で採用されており、各界への貢献は絶大と言えそうです。
ブレストで得られるメリット
ビジネスシーンでもよく採用されるブレスト。どのようなメリットがあるのでしょうか。主なものを挙げてみましょう。
1人の脳内を超えた、多様なアイデアが出る
知識や経験といった人の背景はさまざまです。ブレストではそうした「多様な他者」と刺激し合うことで、1人では浮かばないアイデアにたどり着くことが期待できます。
アイデアを組み合わせることで斬新な発想が生まれる
0から新しいアイデアが生まれることはほとんどありません。しかし、ありきたりなアイデアでも、その一部分を変えるだけで「新しいアイデア」になり得ます。
ブレストでは、誰かが出したアイデアの要素を変えたり、組み合わせたりして切り口を変え、新しいアイデアを発想していけます。
アイデアを効率よく蓄積し、可視化できる
雑談のように話し合うよりも、「ブレスト」というフレーム(枠組み)を用いることで、アイデアの発想・整理がしやすくなります。
ホワイトボードや模造紙、付箋、デジタルツールを使い、蓄積したアイデアやプロセスが可視化でき、振り返りがしやすいのもメリットです。
チームビルディングにも役立つ
ブレストは「ファシリテーションの手段」とも言えます。ファシリテーションとは、チームでの議論や対話をスムーズに進めることです。
よって、ブレストが十分に機能すれば、チームビルディングが進む効果もあるのです。
職場であれば、チーム全員にとって望ましい職場文化を醸成するのにも役立つことでしょう。
ブレストにデメリットはある?
正しくブレストをすれば、メリットしか生まれないでしょう。もし、ブレストをした結果、デメリットを感じたなら、それは「運用面での失敗」が原因かもしれません。
例えば、メンバー間で上司と部下など何らかの関係がある場合、その関係性が邪魔をしがちです。
「相手のアイデアに引っ張られてしまう」「アイデアだけ吸い上げられたくないから、言わない」などと、集団思考の罠に陥ってしまうのです。
これでは創造性にフタをしてしまいます。ブレストは正しく運用することが肝心なのです。
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理解しておきたい、ブレストを行ううえでのルール
ブレストを正しく運用するために、押さえておきたい4つのルールがあります。ブレストはオズボーンが考案したと言われていますが、ルールは普及とともに暗黙的に確立されていったようです。今後も実践する人により、改良が進むかもしれません。
ルール①批判は禁止!どんな意見でもポジティブな姿勢で聴く
どんな意見が出ても、まずは肯定的に受け止めましょう。例えば、誰かの発言に対し「そんな予算があるの?」「それは業界のタブーだよ!」などと批判はしないこと。次に発言がしづらくなってしまうからです。
これはいわゆる「傾聴」で、対話では当たり前のことでもあるでしょう。しかし会議では立場や責任が絡み合い、真剣に考えるほど批判したくなることがあるものです。そのため、あえて「批判禁止」と明示しておくことが重要になります。
ルール②自由奔放に!良し悪しの判断は後回し
突飛なアイデアも受け入れ、楽しむようにしましょう。アイデアを聞いて「笑っちゃう」「それは絶対無理」などと感じるなら、それは固定観念や思い込みを超えているからこそです。
こうした固定観念を超えたアイデアは、たとえ採用されなくても重要な意味を持ちます。
メンバーの脳(ブレイン)を揺さぶり、他のアイデア発想につながるかもしれません。また、ほかのメンバーも思い切ったアイデアを出しやすくなるでしょう。
ルール③質より量!アイデアを100個出す勢いで
アイデア発想には「直感的思考」と「論理的思考」があります。
論理的思考は「できるorできない」「予算内or予算外」などと論理的に考えます。そのため、アイデアの質は高まりますが、発想にフタをしやすくなってしまいます。
一方、ブレストは直感的思考による発想法です。アイデアの質は気にせず、とにかく「量」を出します。
アイデアを全員が出し切る、100個まで出すなど、たくさん書くことが重要です。
ルール④便乗OK!誰かのアイデアを統合・改善しよう
会議で出たアイデアは「誰が言ったか」がよく重視されます。しかしブレストでは、アイデアは個人のものではなく、「チームのアイデア」として扱います。
そのため、ほかの人が出した意見に便乗したりアレンジしたり、アイデアを組み合わせたりする「統合改善」がブレストでは推奨されます。
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効果的なブレストの進め方
ブレストを効果的に進めるための手順を、それぞれのコツとともに解説します。
ファシリテーターを決める
ブレストでは、ファシリテーターを必ず決めるようにしましょう。
「ファシリテーター」とは、会議の進行役のことです。メンバーが発言しやすいよう促すなど、会議がスムーズで効果的に行われるよう舵取りをします。
ファシリテーターは進行役と書記役を兼ねることが多いのですが、参加人数などによっては進行役と書記係を分けても良いでしょう。
目的とテーマを明確にしておく
「何のためにブレストをするのか」という目的と、「何についてブレストするのか」というテーマを必ず設定してください。
メンバーにも目的とテーマに同意をもらったうえで進めると良いでしょう。
脳内のアイデアをすべて吐き出す
ありがちな失敗は「だいたいアイデアが出たね」という段階で、なんとなくまとめに入ってしまうこと。
ブレストでは、「もうこれ以上はまったく出ない!」というレベルまでアイデアを出し切るのがコツです。
アイデア量の目標を「20分で100個書く」などと決めるのも良いでしょう。
途中でアイデアをみんなで眺めたり、漏れているカテゴリーがないか整理したり、振り返りながら進めるのがおすすめです。
あらかじめ決めた時間までに終わらせる
「~時まで」「30分間で」と時間的な制限があるほうが、創造性は発揮されやすいと考えられています。
ブレストは長時間だらだらと行うよりも、短時間で数回に分けて行うほうが効果は出やすいでしょう。
論理的に振り返る
ブレストは「直感的思考」で行うものですが、アイデアを出しきったら「論理的思考」で考えましょう。
具体的には、アイデアを出し切ったら全員で振り返り、論理的な切り口で分類するのです。
また、最終アイデアを決める必要がある場合は、指標を考えて各アイデアを評価してみましょう。
ブレストを記録する
記録はデータ化するのも良いのですが、写真がおすすめです。
とくに模造紙やホワイトボードを使った場合は写真を撮っておくと、ブレスト時の雰囲気や臨場感も残せます。
写真には、採用されなかったアイデアや思考の痕跡(消した線、分類した囲み、矢印など)なども残るので、記憶がよみがえりやすいでしょう。
これらが別テーマのブレストに役立つこともよくあります。
ブレストが失敗してしまうよくある原因とは?
メリットが多いブレストですが、失敗に終わることもあります。起こりがちな失敗の原因について考えていきましょう。
ファシリテーションがうまくできていない
ファシリテーターは場を回し、意見を促し、まとめる役割があります。この役がうまくできないとブレストが機能しません。
例えば、前述の「振り返り」をうまく行えなかった場合、結果として「ブレストは楽しかったけど何のためにしたの?」などと疑問だけが残ってしまいます。
心理的安全性が低い
「心理的安全性」とは、意見やアイデアを安心して出せる状態のことを指します。この心理的安全性に最も影響するのが、人間関係です。
例えば、心理的安全性が低く、部下が上司に忖度したり空気を読んだりする場合。
「意見を言いたいけど言えない」「上司にただただ賛同する」といった状態に陥ることがあります。
こうなるとブレストは当たり障りのない雑談で終わってしまうでしょう。
メンバー構成が適切ではない
ブレストのメンバーは、多様性と専門性という2軸に注目して構成できると理想的です。
知識や経験が多様なメンバーであれば、アイデアの「幅」が広がります。各領域の専門性が高いメンバーなら、アイデアに「深さ」が出るでしょう。
もし、本気で革新的なアイデアを出したいのであれば、自分の専門性を磨くとともに、多様性と専門性のあるメンバー構成にしてみると良いでしょう。
機会を見つけて積極的にブレストをしよう
ブレストは、実務にたいへん役立つアイデアの発想方法です。ただし、成果を出すには正しく行うことが肝心です。
最初はうまくできなくて当然。本記事で紹介したようなポイントを踏まえ、トライアンドエラーを繰り返し、少しずつ「ブレストの達人」を目指してみてはいかがでしょうか。
ブレストの達人は、発想力のみならず、リーダーシップやコミュニケーション、チームづくりにも長けた人です。
ブレストはそうした「ビジネスパーソンに必要な力」を統合して発揮していく活動でもあります。
ビジネスパーソンとして自分を鍛えるためにも、ブレストをどんどんやってみてはいかがでしょうか。
監修:株式会社北野商会 代表取締役 北野清晃
ワークショップデザイン研究所 代表。組織の学校 校長。金沢大学大学院を修了後、都市計画コンサル会社に入社。その後、人材育成や組織開発を支援する公益法人にて、研修やワークショップの企画業務に従事する。退職後は、実家の事業承継に取り組みながら、京都大学大学院情報学研究科博士課程にて組織デザイン、ワークショップデザインの研究に取り組み、博士号を取得する。現在は、人・組織・事業に関する実践的知識を学ぶ場づくりを目指し、企業や自治体の研修講師、各種ワークショップのファシリテーターとして活躍している。著書に『組織論から考えるワークショップデザイン』など。
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