Microsoft Excel(以下、Excel)の掛け算には、いくつかの方法があります。Excelの作業を効率よく進めるためには、状況に応じた四則計算(足し算・引き算・掛け算・割り算)方法を選択することがポイントです。今回は、Excelでの掛け算方法と使い分け方をわかりやすく解説します。
Excelで掛け算する方法は3つある
Excelで掛け算処理する方法は、アスタリスク(*)を使用した数式・PRODUCT関数・SUMPRODUCT関数の3つです。それぞれ、以下の数式・関数で計算できます。
ここから、3つの計算方法について、詳しく確認していきましょう。
掛け算の方法①: アスタリスク(*)の数式
アスタリスク(*)を使えば、関数なしで手軽に掛け算ができます。主な手順は以下の通りです。
手順1 入力するセルに「=」を入力する
まず、エクセルで掛け算の計算結果を表示したいと考えているセルをクリックし、「=」を入力します。
手順2 掛け算するひとつ目のセルを選択する
続いて、掛け算しようと考えている数字(掛けられる数)が入力されているセルをクリックします。
手順3 「アスタリスク」を入力する
「=」の後に手順2で指定されたセルの番号が表示されたら、「*」を加えます。
手順4 掛け算するもうひとつのセルを選択する
最後に、掛け算しようとしているもうひとつの数(掛ける数)があるセルを選択して「Enter」キーを押せば、計算結果が表示されます。
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掛け算の方法②:PRODUCT関数
PRODUCT関数とは、指定した数値の積を求められる関数です。PRODUCT関数を用いれば、掛け算の際に何度も「*」を手打ちする手間を省けます。
SUM関数を使用したことがある方なら、PRODUCT関数も理解しやすいです。ここから手順を簡単に解説します。
手順1 入力するセルにPRODUCT関数を入力する
PRODUCT関数は「=PRODUCT(数値1,数値2…)」で定義されます。直接手打ちすることもできますが、計算結果を入力したいセル上で画面上部の「fx」を選択して、「PRODUCT」を見つけた方が便利です。
手順2 掛け算したい箇所のセルを選択する
続いて、数値1や数値2…にあたる部分に、掛け算したい箇所のセルを選択していきます。数値のところは離れたセルを選択してもいいですし、連続しているセルであればドラッグして範囲を指定することも可能です。この作業だけで、以下のように掛け算の結果が表示されました。
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掛け算の方法③:SUMPRODUCT関数
状況次第で、さらに高度な関数であるSUMPRODUCT関数を使うことがあります。SUMPRODUCT関数は、「配列どうしの掛け算をして、その積の合計を計算する関数」です。SUM関数とPRODUCT関数をまとめて処理できる関数とイメージするとよいでしょう。
ここから、SUMPRODUCT関数を利用した計算の手順を解説します。
手順1 入力するセルにSUMPRODUCT関数を入力する
SUMPRODUCT関数は「=SUMPRODUCT(配列1,配列2,…)」で定義されます。PRODUCT関数と同様に直接手打ちすることもできますが、「fx」を選択して、「SUMPRODUCT」を見つけた方が手間はかかりません。
手順2 掛け算したい部分の配列を選択する
続いて、配列1や配列2…にあたる部分に、掛け算したい部分の配列を入力します。PRODUCT関数と異なり、基本的にひとつのセルではなく、まとまりを指定する点に注意しましょう。
下図の例では、B列にある「単価/個」とC列の「ケース入数」、D列「販売ケース数」を掛け算したものを合計するため、配列1の部分に「B2:B10」、配列2に「C2:C10」、配列3に「D2:D10」を指定しています。
ここまでの作業だけで、指定したセルに「B列・C列・D列の掛け算したものを合計した計算結果」を表示できます。
Excel掛け算の方法は目的によって使い分ける
Excelでは、3つの掛け算方法の中でどれがベストというものはありません。業務の効率化を図るためには、シーンに応じた計算方法を都度選ぶことが大切です。ここから、シーン別にExcelの掛け算方法を紹介します。
シンプルな掛け算の場合
例えば、ボールペンの本数と単価をかけるだけのシンプルな掛け算であれば、「アスタリスク」だけで十分対応可能です。
その後、オートフィルをかければ、他の品目も同様に*を使った数式で合計金額を計算できます。
オートフィルについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
<関連記事>【図解付き】エクセルのオートフィルとは?もっと便利なフラッシュフィルも解説
掛ける数の個数が多い場合
下図のようにかける数の個数が多い場合に「アスタリスク」を使うと、手打ちする手間がかかります。また、入力ミスにもつながりかねません。
そこで、掛け算が多い時には、「PRODUCT関数」を利用するとよいでしょう。
各列の積を求めてから合計する場合
下図の合計売上を計算する(各列の積を求めてから合計する)場合は、SUMPRODUCT関数を使った方がよいでしょう。
なぜなら、PRODUCT関数を用いて「合計売上」を計算する場合、列を追加してPRODUCT関数で各行の売上を計算し、SUM関数で列の足し算をしなければならないためです。以下の例では、2つの関数を入力する手間がかかっています。
その点SUMPRODUCT関数なら、「売上の列」追加・売上の計算(PRODUCT関数)・売上の合計(SUM関数)という3STEPを踏まずに、たった1つの式で合計売上を計算可能です。SUMPRODUCT関数で掛け算したい列をそれぞれ指定すれば、自動で各行を掛け算して合計してくれます。
足し算・割り算もExcel関数で計算できる!
足し算や割り算も、「+」や「/」を使わずにExcelで計算できます。それぞれ確認していきましょう。
「+」を使わずに足し算する方法
Excelの足し算では「+(プラス)」を使わず、SUM関数を使用した方が便利なことがあります。例えば、各品目の合計金額を合計する場合は、「=D2+D3+D4+D5・・・」とするよりも、「=SUM(D2:D10)」と入力した方がスムーズです。
また、状況によってSUM関数の派生系の関数を活用した方が業務効率化につながることがあります。そのうちの一つ、SUBTOTAL関数については以下の記事を参考にしてください。
<関連記事>【Excel】小計が含まれる表を計算するときに!SUBTOTAL関数の使い方、活用事例を紹介
SUMIF関数については、以下の記事で解説しています。
<関連記事>【Excel】IF関数を総まとめ!基本の使い方から条件分岐まで紹介
「/」を使わずに割り算する方法
割り算も「/(スラッシュ)」だけでなく、QUOTIENT関数やMOD関数で計算できます。QUOTIENT関数やMOD関数は、割り算の「商」と「余り」を求めることができる関数です。使用頻度はあまり高くないと思いますので、頭の片隅においておく程度でいいかもしれません。
なお、複素数や平方差の場合を除き、単純な引き算の関数は存在しないため、引き算をする場合は「=A1-B1」のように、「-(マイナス)」を使うしかありません。
Excelの掛け算にまつわるQ&A
最後にExcelで掛け算を使うときによく見られる疑問・質問にお答えします。知っておくと得するテクニックばかりなので、こちらもぜひ覚えておきましょう。
Excelの掛け算の疑問①:掛ける数を固定したいときはどうする?
たとえば、上記のように税込みの売り上げを計算したい場合。まず、ボールペンの消費税を計算すべく、E4セルに「=PRODUCT(D4,C1)」(売上×消費税率)と入力します。これをオートフィルでシャーペンや消しゴムにもコピーするのですが、このままでは正しく計算されません。
そこでE4セルに入力する式において、「C1」を絶対参照にすることが必要です。「=PRODUCT(D4,C1)」の式内の「C1」にカーソルを合わせて、「F4」キーを押せばC1が絶対参照となります。これで、オートフィルをかけても、C1セル(消費税率)が固定され、正しく計算できるようになります。
絶対参照やオートフィルに関しては、以下の記事でより詳しく紹介していますので、あわせてチェックしてみてください。
<関連記事>【Excel】数式にエラーが出るのは「絶対参照」をしていないから! 相対参照と複合参照の違いとは?
<関連記事>【図解付き】エクセルのオートフィルとは?もっと便利なフラッシュフィルも解説
Excelの掛け算の疑問②:答えを四捨五入したいときはどうする?
小数を含む掛け算の場合、答えにも小数が含まれることがあります。答えを四捨五入したい場合は、ROUND関数を使いましょう。「=ROUND ( 数値 , 桁数 )」で定義され、数値には「四捨五入したい値」、桁数は小数点第一位を四捨五入する場合に「0」を入力します。
詳しくは、以下の記事で紹介しています。
<関連記事>エクセルの計算は合ってるのに合計が違う? そんなときはROUND関数を使って解決
Excelの掛け算の疑問③:掛け算の答えの切り上げ・切り捨ては?
切り上げをする場合は「ROUNDUP関数」、切り下げをする場合は「ROUNDDOWN関数」を使います。基本的な使い方はROUND関数と同じです。
Excelの掛け算の疑問④:計算式は合っているのに答えが合わない理由は?
「計算式は正しいはずなのに答えが合わない」「Excelの答えと電卓で計算した答えが違う」、そんなときには以下のような理由が考えられます。
- 入力されているデータと見た目が異なる
- 「表示桁数で計算する」にチェックが入っている
- 端数処理の手順がおかしい
上記のように、実際に入力されている数値と表示されている数値が違うと、計算が合わないように見えてしまいます。答えがおかしい場合は、まず「小数点以下がどうなっているか」を疑いましょう。
また、「表示桁数で計算する」にチェックが入っていることで、計算が合わないこともあります。仮にチェックが入っていると、たとえば「入力値が1.3、表示値が1」となっている場合、その値は「1」として扱われてしまいます(表示されている値が優先されてしまう)。
「ファイル」→「オプション」→「詳細設定」→「表示桁数で計算する」で設定ができるので、こちらも確認してみましょう。
Excelの掛け算の疑問⑤:エラー値が表示される理由は?
Excelで掛け算をする際、「#NAME」や「#VALUE」などのエラー値が表示されることがあります。
「#NAME」は、数式や関数の中に定義外のものが入力されている場合に表示されるエラー値です。数式に余計なものを入れていないか、関数のスペルは間違えていないかなどを確認しましょう。
「#VALUE」は、数式や関数で引数(計算の元になる値)が誤っている場合に表示されるエラー値です。例えば、以下のように本来数値を入力すべきセルが、文字列で入力されている場合に「#VALUE」が表示されることがあります。
なお、今回紹介した以外にもExcelにはさまざまなエラー値が存在します。詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
<関連記事>【図解】Excelのエラー表示の徹底対策!エラーの種類と原因も解説
Excelの掛け算は関数・数式を使い分ける
Excelの掛け算には、主に3つの方法があります。ビジネスでは、状況に適した方法を用いることが業務効率化を図る上で大切です。
掛ける数の個数が多いにもかかわらず、Excelで「*(アスタリスク)」を使っていた方は、積極的にPRODUCT関数も活用しましょう。今までよりも、スムーズに処理できるようになるはずです。
PRODUCT関数に限らず、Excelで使える関数を増やしていくと、今後自分の仕事がどんどん楽になりますよ。
【参考記事】
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