仕事に“妥協”していない? 厳しい上司の判断に挫けそうになった時、聞きたい名言【仕事に効く映画の名言#1】

仕事で落ち込んでしまった時、自分自身をどのように鼓舞するかは人それぞれ。でも、中にはうまくポジティブになれない人もいるでしょう。そんなビジネスパーソンに贈りたいのが、「映画の名言」。古今東西、人の心に刺さる名台詞が生み出されてきました。今回はアメリカ版「ヴォーグ」の名物編集長、“氷の女”アナ・ウィンターを追った2009年のドキュメンタリー映画『ファッションが教えてくれること』から、仕事に効くひとことをピックアップします。

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思ったように自分の仕事が評価されず、落ち込んでいる時に

全力を尽くして仕上げた企画案。満を持して上司に提出したところ、あっさりボツに……。そんな経験は誰にでもあるもの。自信を打ち砕かれ、やる気もなくなってしまうことでしょう。

そんな時にオススメしたいのは、この映画。アメリカ版「ヴォーグ」の編集長としてファッション界に長年君臨している唯一無二のファッション・エディター、アナ・ウィンターを追った2009年のドキュメンタリー映画『ファッションが教えてくれること』です。

鬼編集長VSファッション・エディター、プライドをかけた攻防

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映画『プラダを着た悪魔』でメリル・ストリープが演じたファッション誌の鬼編集長、ミランダ・プリーストリーのモデルとなったとも言われているアナ・ウィンター。ボブヘアにサングラスがトレードマーク。ファッションショーでは最前列に陣取り、コレクションを冷ややかに見つめています。

彼女は1988年にアメリカ版「ヴォーグ」の編集長に就任。誰よりも早く“セレブの時代”が来ると予測して「ヴォーグ」誌面を改革し、「ヴォーグ」を世界中で購読される最先端のファッション雑誌へと育て上げました。

この作品では、2007年の9月号が出来上がるまでが描かれています。9月号は秋のファッション特大号として、ヴォーグが一番力を入れている号。女優のシエナ・ミラーを表紙に起用することが決定しており、カラーブロッキング、1920年代風などのさまざまな特集が企画されています。

編集部員たちはテーマに基づいて洋服を選び、創意を凝らしたファッションフォトを撮影していきます。そして、できあがった写真をアナに見せるのですが、アナはその写真を一目見ただけで、どんどんボツにしてしまいます。

渾身の仕事をボツにされた編集者たちは、プライドを打ち砕かれ、どうしたら良いのかと悩み、再撮影の手配に走り回るのです……。

何度ボツにされても、常に最良の選択を目指す編集者の名言

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アナ・ウィンターの冷酷な判断で、せっかくの仕事をボツにされた編集部員たち。予算や締め切りまでの期間も限られており、どうしたらいいのかと途方にくれます。中には、「もういいや」とばかりに適当な案を再提出しようとする編集部員も。

そんな部員に、ファッション・エディターのグレイス・コディントンは声をかけます。

「それが最良の選択かしら? 妥協はダメよ。強くなって。自分の存在を認めさせ、必要とされるようになり、自分のやり方を見つけるの」

グレイスはアナと20年間も一緒に仕事をしている、ベテランエディター。ファッションモデルとしてデビューし、著名なフォトグラファーたちと仕事をしてきました。しかし、交通事故で顔に傷を負ったことをきっかけにモデルを辞め、ファッション・エディターへとキャリアチェンジを果たした女性です。

グレイスがエディターとしてスタイリングした写真の数々は、それは素晴らしいもの。ロマンチックだったり、躍動的だったり。さまざまなテーマに基づき、それぞれの洋服の特徴を生かし、まるでアートのような世界を作り上げていきます。

そんなグレイスが「美の極致よ」と自画自賛していた写真をも、アナは「くどいわ」と一蹴。いくら予算がかかった仕事であろうとも、却下してしまいます。
そしてグレイスは、アナの冷酷な所業にブツブツと文句を言いながらも、ギリギリまで再撮影を重ねていきます。常に妥協せず、最良の選択を目指し続けるのです。

そして、校了の日がやってきます。アナとグレイスの静かな真剣勝負も幕を下ろすのです。出来上がった9月号のファッションページの多くは、グレイスがスタイリングを担当したページでした。アナが最初にボツにしたはずの写真も、いつのまにか採用されていて……。決定した台割りを確認したグレイスは、喜びを押し隠した表情で、「(セレブページ以外は)私の特集号みたいね」と語り、仕事に戻っていきます。

実はアナは、グレイスの能力を高く評価していました。

「グレイスは天才よ。彼女ほどファッションを理解し視覚化できる人はいない。よく対立するけど、長い間にお互いの違いを認め合えるようになったの」

グレイスもアナからの評価と信頼をわかっているからこそ、どんなにボツにされても、常に最高のファッションフォトを目指し、クリエイティブ能力を発揮していけるのでしょう。ボツにもめげず、常に最良の選択を目指し続けたことで、グレイスはアナから信頼され、必要とされる存在になったのです。アナもそれを承知しているからこそ、最良以上のクリエイティブを求め、グレイスの仕事をボツにしているのかもしれません。

自分の存在を認めさせ、必要とされる存在となれ

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自分が最高だと思った仕事をボツにされてもくじけずに、次の撮影に挑むグレイスの姿を見ていると、誇りと自信を持って自分の仕事を進めることの素晴らしさに気付きます。

良いものを作るために部下たちに極限までの努力を強いるアナの姿にクリエイターの孤独と恍惚を見、そのアナの要望にしっかりと応えて素晴らしいクリエイティブを披露するグレイスの姿にプライドを持って仕事に取り組む“プロフェッショナル”の素晴らしさを見ることのできるこの映画。

仕事に悩んだ時にこの作品を見ると、小さなことで悩まずに、ベストなパフォーマンスを出せるよう努力し続けなければと、初心を思い出させてくれます。

「自分はグレイスのように、自分の存在を認めさせ、必要とされるようになれているか?」

上司に自分の仕事ぶりを酷評されたとしても、落ち込んでいる暇はありません。もしかするとその人は、あなたのことを信頼して才能を認めているからこそ、より高い結果を求めて厳しい評価を下しているのかもしれません。

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『ファッションが教えてくれること』(90分/アメリカ/2009年)
DVD好評発売中
価格¥4,000(税抜)
発売元:クロックワークス/デイライト
販売元:アルバトロス
原題:The September Issue
監督:R.J.カトラー
出演:アナ・ウィンター/シエナ・ミラー/カール・ラガーフェルド/タクーン・パニクガル/グレイス・コディントン
(C)2009 A&E Television Networks & Actual Reality Pictures,Inc.All rights Reserved.

文=松村 知恵美
編集=五十嵐 大+TAPE

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