5人に1人いると言われる「HSP」。一緒に働く上で気をつけるべきこととは?

あなたの職場には、周囲から見てもわかるくらい「繊細な人」がいませんか? 機嫌が悪い人の顔色をやたら窺っていたり、細かなミスを気にするあまり作業に時間がかかったり……。もしかしたらその人は、「HSP」かもしれません。HSPって一体どんな人のこと? そんな疑問を持つビジネスパーソンに向けて、HSP専門カウンセラーである武田友紀さんの著書『「繊細さん」の本』を読み解きながら、HSPについての理解を深めます。

HSPとはどんな人のこと?

HSPとは、アメリカの心理学者であるエレイン・アーロン博士が提唱した概念であり、Highly Sensitive Personの頭文字を取った言葉です。ここ最近、日本でもこの概念が浸透しつつあり、「敏感すぎる人」「とても敏感な人」と訳されているそう。そんなHSPの専門カウンセラーとして活躍する武田さんは、親しみを込めてHSPを「繊細さん」と呼んでいます。

では、一体どんな特徴を持つ人が「繊細さん」に当てはまるのでしょうか。武田さんは次のように解説しています。

 

「職場で機嫌の悪い人がいると気になる」
「人と長時間一緒にいると、疲れてしまう」
「小さなミスに気づいて仕事に時間がかかる」
こんなこと、ありませんか?
(中略)
繊細さんは、相手の感情やその場の雰囲気はもちろん、光や音まで、まわりの人が気づかない小さな変化を感じとっているのです。

 

なるほど、よくよく考えてみると、たしかに上記のような特徴を持つ人はいます。けれど、大抵の場合、「気にしすぎる人」「細かい人」と思ってきませんでしたか?

けれど、それは性格や環境によるものなどではなく、生まれ持った気質なのだとか。しかも、繊細さんとそうでない人とでは、脳の神経システムに違いがあることもわかっています。

エレイン・アーロン博士の調査によると、「繊細さん」は、5人に1人の割合で存在するそう。単純計算するならば、100人の従業員が働く会社には、20人の「繊細さん」が存在することになります。これは決して無視できない数字です。この結果だけを見ても、「繊細さん」への理解を深め、正しく配慮することが会社全体のためにもなることがわかります。

 

「繊細さん」と接する上で気をつけたいこと

そんな「繊細さん」と接する上で気をつけたいのが、「繊細さん」の感覚を否定しないこと。たとえば、機嫌の悪い上司のことを常に気にかけ、緊張しっぱなしの「繊細さん」に対し、「気にしすぎだよ」などと言ってしまうのはNG。それが気を紛らわせるための一言だったとしても、「繊細さん」は、小さなことを気にしてしまう自分がおかしいのだろうか……と自分の感覚を疑ってしまいます。そして最終的には、ますます自信を失ってしまうことにもつながりかねません。

 

繊細さんに必要なのは、「気にしない」という言葉ではなく、気づいたことにどう対処したらいいのかという、具体的な対処法なのです。

 

であれば、「気にしすぎだよ」ではなく、「少し離れた場所で作業してみたら?」「ちょっと休憩してきたら?」などと声をかけてあげた方がベターかもしれません。「繊細さん」の感覚を押さえつけるようなアドバイスではなく、あくまでも感受性の強さを尊重してあげること。それが「繊細さん」と働く上でのコツと言えるでしょう。

 

繊細さんには、ひとりでゆっくりと心を休める時間が必要です。

 

また、「繊細さん」を心配するあまり、過剰に声をかけるのも考えもの。どんなに親しい相手でも長時間一緒にいるとストレスを感じやすいため、ときにはそっとしておくことも必要です。感じすぎた刺激を流せるよう、「繊細さん」がひとりの時間を作ろうとしていたら、たとえ声をかけたくともぐっとこらえて見守りましょう。

 

仕事において「繊細さん」はなにが得意なのか

「繊細さん」には得意な仕事スタイルがあります。その代表的な例が、「ひとつの仕事に集中して丁寧に仕上げていくこと」なんだとか。

とはいえ、仕事はしばしば複数のプロジェクトが同時進行し、マルチタスクを求められてしまう場面も少なくありません。けれど、「繊細さん」は――。

 

繊細さんはマルチタスクが苦手な傾向にあります。「一度にあれもこれもと仕事を頼まれるとパニックになりそうになる」と話す人も。繊細さんは、さまざまなことを感じとり、深く考えながら仕事をします。一つひとつの仕事に集中して丁寧に仕上げるのが得意です。

 

では、「繊細さん」に仕事を頼むときにはどんなことに気をつければいいのか。それは「優先順位をつけて、依頼する」ということでしょう。「まずはこれを仕上げてから、余裕があったらこっちもお願いします」。明確に優先順位をつければ、「繊細さん」もパニックにならずに済むはず。もしもこれまで、複数の作業を同時に頼んでしまっていたとしたら、今後は一個ずつお願いするように変更してみるのも手かもしれません。

ただし、ひとつの仕事に集中するという「繊細さん」の仕事スタイルは、マルチタスクが得意な人からすれば「仕事が遅い」とネガティブに評価されがち。「繊細さん」の中には、そう見られていることを気にして自信を失う人もいます。

けれど、本当にそうなのでしょうか?

 

繊細さんの仕事の仕方は、決して「遅い」とは限りません。手戻りが少なかったり、深く考えるおかげで他の人が気づかない効率的な方法を編み出していたりと、トータルで見れば同僚たちと同じスピードか、ときには早いことさえあるのです。

 

たしかに、スピーディではあるものの細かなミスを連発してしまう人よりも、じっくり時間をかけて完成度高めに仕上げる方が結果的には早いと言えます。それを踏まえると、「繊細さん」にはどんな仕事をお願いしたらいいのかも、自然と見えてくるはず。スピード重視のものよりも、クオリティ重視のもの。それをお願いすれば、「繊細さん」も持ち前の特性を発揮し、期待以上の成果を出してくれるはずです。

この他にも、『「繊細さん」の本』には、「繊細さん」たちの特徴が網羅されています。決して珍しい存在ではない彼らのことをきちんと知ることで、「繊細さん」もそうでない人も、互いにサポートし合える職場環境が実現できるのではないでしょうか。

 

『「繊細さん」の本』
武田友紀
飛鳥新社
1204円(税別)

文=五十嵐 大

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