発信力を高める方法とは? 相手ありきの発信は自分の可能性を広げる

多くの人と関わるビジネスシーンでは、発信力は重要なスキルの一つです。発信力を高めるために、どんなことを意識すればよいのでしょうか。今回はビジネスパーソン向けに自己成長・コミュニケーションのコーチをされている井上野乃花さんに話を聞きました。

ビジネスにおける発信力とは

「発信力」とは、自分の意見や考えを分かりやすく伝える能力で、ビジネスにおいて重要なスキルです。

「発信力は、経済産業省が発表した2006年『社会人基礎力』の『チームで働く力』の中で、傾聴力・柔軟性・情況把握力・規律性などと並んで挙げられており、17年も前からその重要性が指摘されていました。

ビジネスでは多くの人と関わるので、信頼される存在になる必要があります。そのため周囲に悪い印象を与えない発信を行うことが重要です」(井上さん、以下同)

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無防備な発信を行わないように注意

周囲からの信頼を勝ち得る発信力ですが、一方で発信の内容次第で簡単に人からの信頼を低下させてしまう可能性もあります。

「意識的にせよ、無意識的にせよ、人は何かしらの発信を毎日行っていますが、多くの人は発信内容を深く考えずについ無防備な発信をしてしまいがちです。

例えばある企業のマネージャーが、社内SNSでスタッフといっしょにいるときの写真を公開したそうです。しかし、アップされた写真は本人の映りだけよくて、いっしょに写っていた社員から顰蹙(ひんしゅく)を買ってしまったそう。会議やプレゼンだけではなく、自分が何気なく発信していることにも注意が必要です」

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なぜ発信力は重要なのか?

なぜ発信力は重要なのでしょうか? 特にビジネスパーソンにとって発信力が重要と考えられている理由を紹介します。

周囲の人々を巻き込んでいくことができる

理由の一つは、ビジネスは多くの人と関わり、協力して仕事を進めていく必要があるからです。

「ある程度、経験を積んで実力のある人も、周囲の協力が得られないと円滑に業務を遂行できません。

よく起こりがちなのは『自分と相手が当然同じ認識をしているはず』と思い込み、認識のズレが生じてしまうこと。そのズレからミスが生じて、リカバリーが大変になるケースがあります。自分の認識や意見を相手に理解してもらえるように発信力を磨く必要があるのです」

リモートワークでも適切なコミュニケーションができる

コロナ禍以降、リモートワークやオンライン会議が一般的になり、発信力の重要性はより高まったと井上さんは言います。

「リモートワークが定着したことで、発信力のある人とない人の差が開いています。なぜならオンライン上のやりとりでは、言葉足らずがゆえに誤解が生じたり、言いたいことがうまく伝わらなかったりするケースが増えたからです。

発信力のある人はメールやチャット、オンライン会議など各コミュニケーション手段の特性を踏まえたうえで、時と場合に合わせた適切なツールを用い、自分の意見を分かりやすく伝えることができます」

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発信力がある人の特徴

発信力のある人とは、どんな人なのでしょうか。その特徴の中から、代表的なものを紹介します。

発信力のある人の特徴①発信の目的やテーマが明確

第一の特徴は、「発信の目的やテーマが明確」だと言います。

「発信力の高い人は、自分の発信したい内容について深く理解しています。発信する内容について自分でもあいまいなままでは、相手にもうまく内容を伝えることは難しいでしょう。また、相手に自分の発信をどう受け取ってほしいか整理できているため、相手を不快にするような無防備な発信も行わずに済むことが多くなります」

発信力のある人の特徴②分かりやすい表現を用いる

二つ目の特徴は、分かりやすい表現を使うことです。

「ビジネスの場には、横文字や難しい表現を多用するタイプの人もいます。しかし誰にでも伝わる表現をしないと、その分野について知識のない人には十分に内容が伝わりません。せっかく優れた内容の発信を行っても、伝わらなければもったいないと思います。

発信力のある人は誰にでも伝わる簡易な表現を使うだけでなく、どのようにしたら相手に伝わるかを考え、伝える相手の目線に立って工夫を行います」

発信力のある人の特徴③相手の理解度を確かめる

三つ目の特徴は、相手が理解しているかを確かめながら伝えること。

「多くの人は、つい発信することに夢中になってしまいがちです。しかし発信は受け手の理解があって成り立つもの。発信力がある人は受け手の反応を確認しながら、どうすれば伝わるかを工夫できます。人は多様性のある生き物ですから、受け取り方もコミュニケーションのタイプもそれぞれ異なります。相手によって発信の仕方を変えるように心掛けましょう」

発信力を高める方法

発信力を高めるためにはどんな方法があるのでしょうか。意識すべきことを紹介します。

発信力を高める方法①発信する機会を増やす

発信力を高める方法の一つは、発信の機会を増やすことです。

「自ら発信する機会を意識的に作って、習慣にしていきましょう。社内で発信する機会はもちろん、自分の興味がある分野でSNSなどでアウトプットして、発信する機会を作ることもおすすめです。発信内容は、日々書き溜めておくことで自分の価値観や大切にしたいものなどを、自分のなかで改めて整理することにもつながります。またアウトプットを前提にしたインプットを行うと、自分の中での理解や考え方が定着するため、伝え方の工夫にも意識が向くようになるはずです」

発信力を高める方法②語彙を意識してストックする

二つ目の方法は、表現のバリエーションを増やすことだと言います。

「表現方法や語彙のバリエーションを増やすことも、発信力を高めるために欠かせません。そのためには、日々のインプットを書き留めておくノートなどを作りましょう。同僚や先輩など、身近に発信力の優れた人がいれば、その人の表現を参考にしながら自分のスタイルを作っていくのもよいと思います」

発信力を高める方法③メンタルを安定した状態にする

自身のメンタルも、発信力を左右する重要な要素だそうです。

「発信力を高めるためには心の安定も重要です。なぜなら心が不安定な状態だと、うまく相手に伝わっているかを気にかけられなかったり、丁寧に意見を伝えることが億劫に感じたりするからです。もし心が疲弊している状況で発信が求められたときは、深呼吸をして自分の心を安定させてから発信するようにします」

発信力を高める方法④第一声を大きくする

発信力を高めるには発信する内容はもちろん、発信する際の態度にも気を使う必要があります。

「人は話をしていると途中から徐々に声が小さくなっていく傾向にあります。だから第一声は声を大きくすることを意識するとよいでしょう。最初に声を大きく出せれば、自信を持って意見を発信していることが伝わると思います」

発信力を高める方法⑤締めを意識する

発信力を高めるために、最後の言葉を意識してみることもよいかもしれません。

「発信の冒頭は意識しやすいですが、終盤は『時間がなくなったから』など、あいまいに終わってしまう人も多いと思います。自分の発信に少し自信が出るようになったら、発信の締め方も意識してみてください。『今日はこれを伝えに来ました』や『疑問点などありますか?』など、発信の終わりをしっかり受け手にも意識してもらうようにします」

自分本位にならない発信を

発信をする際に、意識すべきことは「相手を招き入れる感覚」だと井上さんは言います。自分本位では内容が素晴らしいものでも相手に届きません。どうすれば相手のニーズに応えられる発信ができるか、相手が喜ぶことは何か、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

【プロフィール】

井上野乃花(いのうえ ののか)
イッセイミヤケ、TV-CM制作会社、広告代理店勤務を経て、2001年コーチとして独立。自分が主役の人生をモットーに発信力や思考力の研修やライフシフトをテーマに講座や個人セッションを行っている。著書は『100歳までのしあわせ未来地図 ライフシフトマップ』(主婦の友インフォス)『イタイ人にならない自分☆発信力』(ビジネス社)など。
https://coachthevision.jp/

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