二拠点生活の「成功」は、事前の入念な準備にかかっている【二拠点生活のリアル #2】

北海道と東京。遠く離れた二拠点生活を決意したものの、準備には想像以上の時間がかかりました。スムーズなリモートワークを成立させるために準備した、単なる引っ越しとは異なるところを振り返ります。二拠点生活を前向きに検討している方は、ぜひ読んでみてください。

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“安心の二拠点生活”なんて存在しない

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わたしにぴったりの働き方は二拠点生活。この答えが出てから始めたのは、二拠点生活のシミュレーションです。わたしの場合、空き家になった実家をメインの拠点とすることを決めていたので、サブの拠点となる東京でどう暮らすか考え始めました。二拠点生活を成立させる拠点さえ決まってしまえば、すぐに引っ越せると思っていたから。

手頃なワンルームを借りるか、ホテルに泊まるか。この二択で悩んだら、まず滞在期間を決めなければなりません。これは、二拠点生活の働き方を決めるきっかけにもなります。

東京でしかできない仕事を箇条書きにし、実際のスケジュールに落とし込んでみます。わたしの場合は、月に2~5日間の滞在期間で対応できる算段が立ちました。これならワンルームを借りるより、ホテルに宿泊したほうがコストとセキュリティ上のリスクを軽減できます。

とは言えこれはあくまでシミュレーションなので、実際の取引先の都合によっては滞在期間が延びたり、月に数度の出張が必要になったりするかもしれません。その場合の交通費は、宿泊費は……そういったことを考え始めると、気が重くなります。

そのため、生活費のシミュレーションもなかなか進みません。二拠点生活は拠点や働き方によってそれぞれケースが異なるため、事前に調べようにも不確定要素が多いのです。「本当に生活が維持できるのか」という問いには、最後まで答えが出ませんでした。それでも二拠点生活をあきらめきれず、「やってみるしかない」と覚悟をかためるまでに時間がかかりました。

取引先には十分な説明と信頼関係の構築が必要不可欠

次に、取引先や仕事仲間への報告を進めました。二拠点生活に移行すること、それに伴って急きょ現場に出向かなければならない仕事は請けられなくなることなどを説明します。このとき気をつけたのは、先方にとってのメリットも伝えることです。わたしの場合はライターなので、北海道の取材案件があった場合はコスト削減につながる、北海道から発信できるコンテンツを企画するなど、取引先に合わせた提案をしました。

それでも先方にとってはデメリットのほうが大きいケースがほとんどです。オンラインツールの活用が進んでいない取引先からは、わたしのためだけに新しいツールを導入するのは面倒だと、率直な意見を伝えられたこともあります。自分の希望を通した働き方を選ぶということは、組織や社会が求めない働き方を取ると言い換えられるのかもしれません。

一方、二拠点生活をおもしろがり、歓迎してくれる取引先もありました。サテライトオフィス導入を検討している企業からは、業務スケジュールや交通費のログを参考のために共有してほしいと打診されたことも。働き方そのものが価値になることもあるのだと知りました。

結果から言えば、引っ越しを機に減った仕事はほとんどありません。今まで通りのパフォーマンスを約束することや、個人としての信頼関係を構築することが、二拠点生活後の仕事の継続に一番役立ったと感じます。

関わる全員に十分な説明をするまで、また想像以上の時間がかかってしまいました。この時点で予定していた引っ越しのタイミングを逃してしまい、契約の都合上、さらに半年間東京に滞在することに。

予想外の滞在費の捻出とスケジュール調整が必要になり、精神的な負荷を感じました。これから二拠点生活を始める方は、予算や準備期間を多めに見積もっておいたほうが良いと思います。

二拠点生活を効率化するツール活用

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意外と見落としがちだけれど重要なのが、自己管理のためのツールを二拠点生活用にカスタマイズすることです。

例えば家計簿ソフトを利用している方は、拠点ごとに予算をグルーピングしておくと使いやすいです。拠点が違えば、出費の種類や価格帯が大幅に異なります。ローカル感覚で東京生活を送ると、たいへんなコストがかかることを実感しました。

また、スケジューリングも工夫が必要です。拠点間の移動を加味した予定調整は、条件が限られます。わたしの場合、飛行機移動が可能な時間帯と、それに伴う仕事の予定を入れられる時間帯をあらかじめGoogleカレンダーに反映しています。

TODO管理アプリも、仕事とプライベートの二軸だけでなく、拠点の軸を加えて細分化しました。東京でしか買えないもの、北海道であれば対応できること……あらゆる生活設計に拠点の概念が増えます。

また、各拠点に置いてある物品のログも残しておくと便利です。わたしはよく忘れ物をしてしまうので、ノートパソコンやスマートフォンのバッテリー、コンタクトレンズなどの生活必需品は二拠点それぞれに用意し、東京ではシェアオフィスのロッカーに置いてあります。メモアプリにログを残して持ち運び重複と忘れ物を防ぎました。

この準備を二拠点生活開始前に済ませておくと、新生活を始めてからの混乱や失敗が軽減されます。家に何か忘れたという些細なミスも、拠点が二つあると大きな問題に発展するので、特に物品管理は重要です。

そしてトラブル対策の準備を進めていくと、二拠点生活の具体性が高まっていきます。実現可能か不安だった気持ちを、具体的な方法で解決していくプロセスになるでしょう。

準備期間=覚悟と向き合う最後のタイミング

ここまで準備期間を振り返りましたが、いざ始まった二拠点生活では予想外の失敗が続きました。あらゆる観点から準備してもトラブルが起こるのですから、完璧な二拠点生活なんて不可能なのかもしれません。

二拠点生活の準備期間は、覚悟と向き合う日々とも言い換えられます。具体的に考えれば考えるほど、不安はふくらむものです。ここで「やっぱり拠点は二つ要らないかも」と思うならば、やめておくこともできます。

いざ二拠点生活を始めると、それぞれの拠点で人々との関わり合いや生活が育まれていきますから、なかなか後戻りすることはできません。だからこそ、自分の気持ちと向き合う期間として準備を捉え、予想がつかない新生活に飛び込むための心の準備運動をしてみましょう。そうすれば、二拠点生活を始めるための助走がつけやすくなるはずです。

文=宿木雪樹
編集=五十嵐大+TAPE

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